転職活動ではエージェントを利用することが一般的になっていますが、採用で有利になるケースもあれば、不利になるケースもあるので、使い分けが必要です。
この記事では、企業側で転職エージェントを活用していた事業部責任者の経験から、採用可否を決める決裁者の視点で、不利になるケースを解説していきます。
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
この記事の結論:
転職エージェントは選考で不利になることがある
転職エージェントは、転職終盤となると「連絡代行」以上の付加価値がほぼなく、採用報酬の分だけ不利になるので、本命企業は直接応募することをお勧めします。
ただ、転職序盤であれば、準備全般で役立つので(例:初歩的な選考対策や情報収集、志望度が低い企業を面接練習として受ける等)、ぜひ活用するべきです。
| 転職エージェント | 直接応募 |
|---|---|
| 序盤の準備に便利 ◯非公開求人の紹介 ◯書類添削や選考対策で最低限の準備ができる ◯志望度が低い企業も受けやすい | 選考は有利になる ◯柔軟に応募、交渉可能 ◯採用コストが下がるので、採用されやすい |
| 選考は不利になる △採用コストの分だけ採用されにくくなる △エージェント次第で全てが左右されるリスク | 序盤の準備が大変 △自力で進めるので転職初心者には難しい △志望度が低い企業を受けにくい |
| →応募前の準備や、面接練習として利用したい | →意向度が高い本命企業は直接応募をおすすめ |
転職エージェント経由だと直接応募と比べて不利になることがある理由
エージェント経由だと「採用報酬がかかる」のと「外部の選考フィルターが増える」ことを背景に、不利になるケースがあるので、理由と事例を解説していきます。
転職エージェントで不利になる理由①
同じ評価の直接応募者がいたとき不利になる
企業側にとって、エージェント経由で採用すると「年収の30%に当たる報酬」を支払うことになるので、直接応募と比べると、不利になることがあります。
全く同じ評価の候補者が2人いて、1人しか採用できないとしたら、どちらを採用しますか?

正直、時間が経つと一人ひとりの面接内容は忘れるので、同じ評価の候補者が複数いた場合、経営意識が強い事業部責任者は「採用報酬」を一つの違いとして、はっきりと意識してしまいます。
予算が潤沢な事業部でない限り、数百万円というのは大きな金額です。期待値が同じ候補者から一人を選ぶなら、十分な決め手となります。
少なくとも、自社ページで求人募集を細かく出している企業は、直接応募したほうが有利になります。採用コストを下げることに力を入れているということなので。
ただ、例外として、企業側の採用予算が潤沢にあったり、そもそも採用されやすい業界や企業なら、それほど影響がないこともありえます。
転職エージェントで不利になる理由②
採用報酬の分だけ挑戦的判断をしにくくなる
面接をしていると、人柄やカルチャーフィットはしているものの、経験や知識不足で、短期的に即戦力となるかが怪しく、採用判断で悩むシーンはよくあります。
このとき、直接応募で相当な熱量があれば「現状のままだと正直厳しく、入社した後に大変だと思う」と本人に伝えたうえで「それでも覚悟があるなら、一緒に働いてみたいので、挑戦する」という、より長期目線でのポテンシャルから、採用可否を決めることがあります。

しかし、エージェント経由だと「人事部に百万円払わせてまで挑戦するものではないか…、もっと良い人来るかもしれないしな…」と脳裏に浮かび、心理的な抵抗感から判断が理性的になります。
実際「直接応募だったら挑戦できたかも」という話題は、人事や管理職同士でよくあがるテーマです。ベンチャーや中小企業ほど、この傾向は強くなります。
転職エージェントで不利になる理由③
経歴次第では足切りされる可能性が上がる
エージェント経由で応募すると「企業側に推薦できるか」を審査されますが、フィルターが増えているので、一般的に転職市場で不利になりやすい経歴(例:短期離職、転職回数が多い)だと、足切りされやすくなります。

参考:足切りポイント
- 事業部が求める学歴や経歴か
- 円滑なコミュニケーションが取れるか
- 仕事に真面目に取り組む誠実性があるか
- 職務経験としての最低条件は満たしているか
また、企業人事よりも、エージェント社内審査が厳しいケースもあります。例えば、人事だと「今週は余裕があるので、緩めに通そう」や「経歴は足りないが、光る経験がありそうだから面接しよう」という救済がありえますが、エージェントだとしっかり足切りされます。
ただ、あくまで足切りなので、ほとんどの方は不利になりません。むしろ選考工数削減のために、エージェント通過済みの応募が優先され、人事面接が不要となることもあります。(特に、エージェント側のフィルター精度が高い場合)
転職エージェントで不利になる理由④
エージェントの対応が遅れると不利になる
エージェント側の対応品質が低く、対応が遅れる(あるいは漏れる)ことによって、見えないところで選考が不利になっているケースがあります。

エージェントの過失で数日後に連絡されても、担当者の保身、あるいは気が遣えないことから「まるでいま返信が来たかのような連絡」をされてしまい、損な評価に繋がる可能性があります。
転職エージェントで不利になる理由⑤
審査基準が非公開なので理不尽が起こり得る
ほとんどないと思いますが、極端な事例として、不誠実な担当者はいくらでもいるので、知らずに不利益を被っている可能性を、否定し切ることはできません。
なぜなら、求職者と直接面談をした各アドバイザーが独自で選考するので、その基準や過程には全く透明性がないからです。外部監査もなく、自由に落とせます。
全ての連絡を裏で個別仲介するので、すでに内定をとった企業に承諾させるために、他企業に応募しても推薦しなかったり、裏で勝手に辞退したりということが『構造としては可能』になっています。

例えば「すでに内定を取った企業様に比べて、雰囲気が合っていないと思った」でも、適当な理由をつけて推薦しない選択ができます。
実際、エージェントの目線だと、たくさん応募されても工数が増えるだけで、生産性が下がります。
さらに、内定辞退されると「求職者のグリップ力が低い」と思われて企業からの評価が下がるので、内定が出たら別企業は受けずに承諾して欲しい、が本音です。
より多くの企業を受けたいなら、転職エージェントは1社に絞らず、併用してください。
それでも転職エージェントはメリットが大きいので使うべき理由
転職エージェントは「本命企業への応募」という点においては、直接応募と比べて不利になることがありますが、それでも使うべき理由を解説していきます。
- 転職エージェントだけの非公開求人がある
- 転職全般のサポートが受けられる
- 志望度が低い企業でも練習として受けやすい
転職エージェントを使うべき理由・メリット①
転職エージェントだけの非公開求人がある
企業ホームページや求人サイトには掲載されない、転職エージェントだけの非公開求人があるので、機会を取りこぼさないためにもエージェントは利用すべきです。
中途採用は退職者の穴を埋めるピンポイントの採用であることが多く、採用しても1〜2名で、募集期間も短くなることから、すぐに集客できる転職エージェントだけで募集を出すことがあります。
また、管理職や高年収な求人だと、他の社員が見える企業採用サイトには出せないので、非公開で募集を出されることが多いというのがあります。
企業側目線として、少人数の採用をするなら、転職エージェントが最も適しています。企業ホームページ経由で応募してもらえる確率は高くないので、短期間ならわざわざ更新しないこともあります。
転職エージェントを使うべき理由・メリット②
転職全般のサポートが受けられる
転職エージェントを利用することで、最低限必要な準備をすることができます。自分一人では見つけられない企業も紹介してくれるので、可能性が広がります。
- 転職活動の進め方
- スケジュール感や流れ等
- キャリアパスとしての事例共有
- 中長期的なキャリア検討・経歴の棚卸し
- 基本的な選考準備
- 履歴書や職務経歴書の添削
- どこでも聞かれる面接質問への回答練習
- 企業の紹介
- 経歴に合いそうな企業求人の紹介
- 募集が始まったばかりの新着求人の案内
- 条件が良い傾向にある非公開求人の紹介
転職エージェントを使うべき理由・メリット③
志望度が低い企業でも練習として受けやすい
転職エージェント経由なら、志望度が低くても「紹介されて興味を持ったので話を聞いてみたい」という、軽い気持ちで応募しやすく、仮に選考が進んでもエージェントが辞退連絡をするので、面接練習になります。
もちろん転職エージェント経由でも、選考が進むにつれて志望度を高める必要はありますが、1次選考(対人事)の段階では、軽い気持ちで臨んでも大丈夫です。
自分から練習企業を探すのは大変なので、紹介されて「まあ受けてみるか」と思ったところから受けていくと楽です。自然と面接慣れします。
転職エージェントと直接応募を使い分ける方法
転職活動の進め方としておすすめなのは、まずは転職エージェントでサポートを受けながら転職活動そのものに慣れていき、本命企業だけは直接応募することです。
特に、面接は『慣れ』が重要なので、転職エージェントに紹介された企業を受けて、練習していきましょう。
序盤(転職活動の準備)
エージェントに相談して、経歴の棚卸しや職務経歴書の添削、面接対策をしてもらってください。転職の準備を整えていきましょう。
中盤(実戦型の面接練習)
面接は慣れと対策が全てです。エージェントに推薦された求人に応募して実践形式で鍛えましょう。選考で落ちてもフィードバックがもらえます。
終盤(本命企業は直接応募)
面接に慣れてきたら、本命企業に直接応募しましょう。採用報酬がない分だけ有利です。
転職序盤におすすめできる転職エージェントを詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

転職エージェントでよくある勘違い
ここでは、転職エージェントが不利になるか否かというテーマでよく勘違いされる質問に回答していきます。
- 採用報酬は気にしない企業が多い?
- フィルター目的でエージェントを利用する?
- 採用費用はフィルタリング代である?
- エージェント通過した候補者が優先される?
- エージェントの推薦で採用されやすくなる?
人事や転職エージェント側の経験しかない方だと、勘違いしているケースが多いので注意してください。
よくある勘違い①
採用報酬は気にしない企業が多い?
いいえ。採用報酬を払う人事部だと、売上の概念が存在しないコストセンターなので、気にならないこともありますが、日々業績と向き合っている事業部側は気にします。(採用報酬を払うのが人事部でも気にします。)
そして、採用可否を決めるのは、人事部ではなく事業部側なので、影響は少なからずあります。
平均勤続年数が長く、予算が潤沢にある大企業なら影響は少ないですが、転職エージェントを利用する企業の多くは、平均勤続年数が長くはなく、予算に限りがあるので、採用報酬が気にならないわけがありません。
よくある勘違い②
フィルター目的でエージェントを利用する?
企業次第です。エージェントを使う理由の「応募を捌ききれないからフィルターを入れたい」というのは、ほんの一部の大手人気企業に限定されます。
昨今は、売り手市場で採用競争が激化しているので「待っているだけではアプローチできない優秀層を確保したい」という集客目的がほとんどです。(だからこそスカウト型転職サイトが流行っています。)
- ほとんどの場合
- 応募が足りないので求職者を集めたい
- 待っているだけでは来ない優秀層を集めたい
- グリップしてくれて、内定承諾させやすい
- 一部少数派の場合
- 応募が多すぎるので絞りたい
- エージェントが自社出身で、フィルターが機能しており、人事代行として依頼できる
優秀層を集客するために、エージェントに高額な採用報酬を払うので、優秀層以外がエージェント経由で応募したら落ちやすくなります。
よくある勘違い③
採用費用はフィルタリング代である?
いいえ。採用可否を決める事業部側からしたら、最低限の足切りすらされていないことが多いので、フィルタリングに価値を感じたことはありません。
エージェントが足切りするのは、学歴や職務経験、短期離職の有無、転職回数などですが、どれも職務経歴書を10秒眺めればわかります。むしろ、経歴が違うどころか、職務経歴書の日本語が崩壊していても推薦されてくるので、フィルタリングには期待できません。
よくある勘違い④
エージェント通過した候補者を優先する?
いいえ。どちらもすぐ処理されますが、あえて優先度をつけるなら、採用費用のない直接応募を選考します。あとは、連絡が早い方が優先されます。
また、エージェント担当者がその企業出身者でない限り、フィルタリングは書類でわかる最低限しか機能しないので、優先する理由がありません。
よくある勘違い⑤
エージェントの推薦で採用されやすくなる?
いいえ。エージェントからの推薦に意味があるのは、人事による書類選考や足切り面接だけです。書類選考でよく落ちる方ならまだしも、採用判断を下すのは事業部側なので関係ありません。
特定人物をプッシュされたとしても、事業部責任者からすると意味がありません。事業部や仕事のことは、人事よりもエージェントよりも詳しいので、自分の部下となる人間は、自分の目で見て、自分で決めます。
推薦文をどれだけ熱く書こうが「百聞は一見にしかず」で参考しない(ほぼ読まない)ので、その企業出身でない限り、エージェントにできることはありません。
補足:エージェントの推薦は精度に限界がある
転職エージェントが企業側に人材紹介する流れとしては、月一程度でミーティングして採用条件を聞きながら、送客するだけです。聞いただけの採用条件でフィルタリングをするので、精度には限りがあります。
仮に「この候補者は御社におすすめです!」と言われただけで有利になるとしたら、事業部長側に判断力がないと言わざるをえません。コネ出世でしょうか。
よくある勘違い⑥
エージェントが企業に強く推薦してくれる?
いいえ。紹介時に「最低限の推薦文」が数行書かれている程度で、実はそれ以上の推薦はほとんどされません。
この時の推薦文も「貴社の条件に該当していると判断したので選考をお願いします」程度なので、事業部側は参考にするしない以前に、ほとんど読みません。
採用可否を決める事業部責任者は、エージェントと直接やりとりする機会がほとんどありません。関わるのは、社内人事を交えての月一採用進捗会議で、集客の質にフィードバックをする程度です。
選考での関わり方も「人事が社内カレンダーに入れた面接予定を見て、時間になったら参加し、評価を下す」だけです。
また、エージェント側も、RA(企業担当)とCA(求職者担当)で分かれることが多く、RAは求職者と面談すらしていないので、企業側にプッシュできません。

