本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
引き寄せの法則とは
引き寄せの法則とは、「自分の思っているものごとが、自然と現実になる(引き寄せる)」という経験則のことです。
科学的に実証されてはいないものの、自分の気持ちを改善することで、ものごとをうまく進めるようになったり、良い成果につながったり、といった「ポジティブシンキング(積極思考)」の観点から、主に自己啓発の領域で支持されています。
引き寄せの法則とは:
提唱者はロンダ・バーン
提唱者はロンダ・バーン(Rhonda Byrne)というオランダのテレビ作家/プロデューサー。彼女が1987年に自身の書籍である「ザ・シークレット」で発表したことから広まりました。本書はこれまでに40ヶ国語以上の言語に翻訳され、1,900万部以上販売されるロングセラーです。
ロンダは、信じることで願いを達成できるというポジティブシンキングを信念としており、引き寄せの法則は「思考が現実になる」という思考を、自己啓発として提唱したものです。
引き寄せの法則とは:
科学的ではないので否定意見が多い
ロンダが根拠として挙げた科学概念が擬似的なものであると否定されている(つまり科学的には実証されていない)ことから、否定する意見があります。
一方で、すでに心理学において実証済みの、類似した心理効果が複数存在していることから、支持する意見も存在しているのも事実です。次章で紹介していきます。
引き寄せの法則に類似した心理効果
引き寄せの法則には、類似した心理学の理論や効果がいくつかあり、実はこれらが人の心や言動に影響を及ぼしているという説もあります。
ただ、類似したものとしてあげられる心理学理論は出典が不明なものも多くあり、今回は提唱者があきらかなものに絞って紹介します。
- プラシーボ効果
- カクテルパーティ効果
- 確証バイアス
引き寄せの法則に類似した心理効果#1
プラシーボ効果
プラシーボ効果とは、偽物の薬を「これは効果がある」といわれ、偽物だと知らさられずに服用していると、本来は効果がなくても改善することがあるという現象です。
ハーバード大学麻酔教授であったヘンリー・ビーチャー(Henry Knowles Beecher)が1955年に研究報告を行い、現在まで広く知れ渡っています。自分が病気になった際、引き寄せの法則で「絶対に治る」と自分に言い聞かせることで、このプラシーボ効果が起こり、回復に至るというケースが該当します。
引き寄せの法則に類似した心理効果#2
カクテルパーティー効果
カクテルパーティー効果とは、パーティー会場のようにたくさんの人が雑談している騒がしい空間の中でも、自分が興味の向けている会話や単語は、自然と聞き取ることができるという心理効果です。
- ざわつく部屋でも、自分の名前が呼ばれるとはっきりとわかる
- 大勢の人が集まった飲み会でも、自分が話したい相手の声は比較的聞き取りやすい
- 元々長く吹奏楽の経験がある人がオーケストラを聴いていると、自分の担当していた楽器の音がよく聴き取れる
このカクテルパーティー効果は、人によっては効果が弱いこともありますが、効果自体は立証されています。
だからこそスポーツでは「絶対勝つ」という意識を持つことで、無意識に「勝つための情報」を拾いやすくなったり、試合中の状況判断が早くなるといった、ポジティブな影響が働くとされているのです。
引き寄せの法則に類似した心理効果#3
確証バイアス
確証バイアスとは、自分の仮説や信念を検証しようとするような場合に、自分を支持する情報ばかりを集め、反対意見を無視・軽視する傾向、認知バイアスです。
つまり、引き寄せの法則で「自分は幸運の持ち主だ」と思い込むことで、どんな些細なことであっても「自分は運がいいからだ」と理由づけるようになります。逆に不都合なできごとには目が向きません。
引き寄せの法則に類似した心理効果#4
ことわざに類似したものは多い
実は日本のことわざに、引き寄せの法則と似たものがいくつか存在します。
- 笑う門には福来る
- 類は友を呼ぶ
- 噂をすれば影がさす
- 人を呪わば穴二つ
有名なことわざなので解説は割愛しますが、これらも何かの言動によって結果が引き起こされるという点で、引き寄せの法則に類似しています。
余談ですが、1970年ごろに日本でも流行した「マーフィーの法則(起こる可能性のあるものは、絶対に起こる、失敗する可能性のあるものは失敗するという経験則)」にも似ていますね。
引き寄せの法則の活用事例
願うだけで叶うというほど都合の良いものではありませんが、「達成したい」「手に入れたい」と強く望むからこその“副次的効果”あるいは“ポジティブシンキング”という意味で、肯定的に用いられることがあります。
引き寄せの法則の活用事例#1
スポーツの試合で勝ちたい
先述しましたが「自分は勝てる」と思い込むことによって、勝利に繋がることが往々にしてあります。
- 監督の的確な指示がよく耳に入る
- 周囲の負けるという予想の声があっても諦めなくなる
- 直前に飲んだサプリメントの効果が出てパワーアップ
これらのように、勝敗に大きな影響は与えないまでも、ポジティブで都合の良い思い込みによって、粘り強いパフォーマンスや積極的に挑む姿勢が強化され、勝利へと結びつくことがあるのです。
引き寄せの法則の活用事例#2
好きな相手との恋を成就させたい
この事例はややグレーかもしれませんが、意中の相手を射止める時に「絶対にこの人は私を好きになる」といったように余裕を持つことで、成就する可能性があります。
- 自信と余裕を持てるので魅力的になる
- ポジティブな心理状態が表情や肌ツヤに現れる
- 相手のしぐさや言動を自分に好意があるように捉えられる
思い込みが度をすぎて事件を起こさないか心配ですが、結果としてその人自身の外見的、内面的な魅力が上がり、恋の成就に一歩前進する可能性も否定はできません。
引き寄せの法則の活用事例#3
ビジネスで目標を達成したい
ビジネスで達成したい目標を掲げる(例:営業で月に目標売上XX万円達成する)ことによって、日々の意識や行動量が変化して、達成に近づくかもしれません。
- 知識や技術の習得に、意欲的になる
- 失敗に落ち込む暇なく次に挑戦できる
- 目標意識から今やるべきことがぶれない
実際、「営業職」のようにやることが明確で行動量がものをいう職務では、目標意識を高く持っている社員ほど、目標を達成しやすい傾向にあります。
引き寄せの法則を日常で使うための5つの実践ステップ
引き寄せの法則を実生活で活かすためには、願望を思うだけでなく「叶う前提で行動できる自分」へ整えていくことが大切です。
そこで、今日から始められる5つの実践ステップを紹介します。
- STEP1:願いを「否定形なし」で肯定的で具体的な言葉にする
- STEP2:叶った場面をイメージトレーニングで繰り返し思い描く
- STEP3:「叶った自分」として振る舞う小さな行動を決める
- STEP4:アファメーションと感謝する習慣で「前提」を書き換える
- STEP5:「不足」にフォーカスしない思考のメンテナンス
引き寄せの法則を日常で使うための実践STEP1
願いを「否定形なし」で肯定的で具体的な言葉にする
引き寄せの法則を実践する最初のステップは、願いを否定形ではなく肯定的な表現で言語化することです。
「仕事で失敗したくない」「恋人に振られたくない」といった願望は、一見プラスの願いに見えても“失敗”や“不安”といったネガティブな状態に意識が向きやすく、望まない結果を引き寄せやすくなると言われます。
そこで、叶えたい未来を「すでに実現している自分」を主語にして表現するのが効果的です。
- ビジネスに関する具体例
「不安なく働きたい」→ 「自信を持って働けている」「毎日安心して仕事に取り組めている」 - 恋愛に関する具体例
「支え合えるパートナーがほしい」→ 「愛情を与え合い、尊重しながら幸せに過ごしている」 - お金に関する具体例
「お金に困りたくない」 → 「必要な収入を得て、豊かさを感じながら生活できている」
引き寄せの法則を日常で使うための実践STEP2
叶った場面をイメージトレーニングで繰り返し思い描く
理想を肯定的に言語化した後は、願いが叶った場面を繰り返しイメージすることが重要です。
人は強く意識した情報や感情に沿って行動しやすく、成功した瞬間の感覚を先に体験するほど、現実をその方向へ合わせようとする傾向があります。
実現した未来の状況・感情・空気感まで細かく思い描くことで、潜在意識と行動が一致し、理想に近づきやすくなります。
- ビジネスに関する具体例
→朝の出勤時に、「職場で自信を持って働き成果を出している」自分の姿を鮮明に描く - 恋愛に関する具体例
デート後に「大切にされている安心感」「満たされた気持ち」を味わう自分を想像する - お金に関する具体例
支払いをする場面で「お金に余裕がある状態」と「豊かさを感じている気持ち」を先取りして感じる
引き寄せの法則を日常で使うための実践STEP3
「叶った自分」として振る舞う小さな行動を決める
理想の未来を思い描いたら、次は「すでに叶っている自分ならどう行動するか」を基準に、小さな行動を選択していきます。
人は行動が変わると自己イメージが変わり、さらに行動が変わる“良い循環”が生まれます。逆に、願いを思っているだけで行動が変わらなければ、現実は動きにくいままです。
未来の自分を先取りして、服装・姿勢・言葉遣い・時間の使い方など、今からできる振る舞いに落とし込むことで、理想の状態に自然と近づいていきます。
- ビジネスシーンに関する具体例
→「自信を持って働けている自分」なら、今日の会議では堂々と意見を1回伝える - 恋愛に関する具体例
→「尊重し合える恋人がいる自分」なら、相手の話を遮らず丁寧に受け止める姿勢で過ごす - お金に関する具体例
→「収入に余裕がある自分」なら、家計の管理を後回しにせず“豊かさを守る行動”として家計簿を付ける
引き寄せの法則を日常で使うための実践STEP4
アファメーションと感謝する習慣で「叶う前提」を定着させる
行動を変え始めたら、気持ちや思考の土台を整える段階に進みます。
願いが叶う前提のセルフイメージを保つために効果的なのが、肯定的な言葉を自分に向けて宣言する「アファメーション」と、日常の中にある感謝できる出来事を意識的に見つける習慣です。
この2つが積み重なると「自分にはできる」「すでに豊かさがある」という感覚が潜在意識に定着し、行動量や挑戦意欲が自然と高まりやすくなります。
- ビジネスシーンに関する具体例
→朝の身支度をしながら「私は仕事で成果を出せる力がある」と声に出す・心の中で唱える - 恋愛に関する具体例
→パートナーや身近な人からもらった小さな優しさや嬉しい言葉を書き留めて、感謝の感情を味わう - お金に関する具体例
→支払いをするたびに「お金が循環している」「豊かさを受け取れている」と感じながら行動する
アファメーションとは
アファメーションとは、自分に向けて肯定的な言葉を意図的に繰り返し伝えることで、自己イメージや思考のクセをポジティブな方向へ整える方法です。
「私はできる」「愛されている」「成功できる力がある」など、叶えたい未来をすでに実現している前提で言葉にすることで、潜在意識に働きかけ、自信・行動力・選択の質を高めていく目的があります。
引き寄せの法則を日常で使うための実践STEP5
「不足」にフォーカスしない思考のメンテナンスを続ける
引き寄せの法則を継続するうえで、もっとも重要なのが「不足」ではなく「すでにあるもの」に意識を向ける習慣です。
「まだ足りない」「自分はまだできていない」と感じるほど、思考と感情が欠乏に縛られ、行動も慎重・消極的になりやすくなります。
反対に、すでに得ているもの・進んだ部分に気づけるほど、自己肯定感と行動のエネルギーが高まりやすく、望む状態を引き寄せる“心の土台”が揺るぎないものになります。
- ビジネスに関する具体例
→仕事でできなかった部分より「以前より成長した点」「改善できた点」を先に探す - 恋愛に関する具体例
→パートナーとのすれ違いより「大切にされている瞬間」「嬉しかった言葉」を思い出す - お金に関する具体例
→使ったお金に不安を向けるのではなく「収入が入った瞬間」や「必要なものを買えた豊かさ」を意識する
引き寄せの法則に関する注意点
引き寄せの法則は、強く願うがために「行動すること」から達成に近づくことはありますが、ただ願うだけでは叶いません。盲信には注意しましょう。
引き寄せの法則に関する注意点#1
科学的でないので他人への伝え方に注意しよう
引き寄せの法則は、科学的根拠のないスピリチュアルな考え方です。性質としては占いや宗教に近いので、盲信するのはやめましょう。特に、他人に伝えるときは注意が必要です。
もちろんポジティブシンキングの一貫で「願うといいことあるって言うしね」と明るく触れるには問題ありません。ただ「願うだけで何もしなくても叶うんだよ!」のように熱量高く振舞ってしまうと、日本人の多くからは避けられるようになります。
目標を持って「行動すること」に意味があります。行動を伴わない目標には意味がありません。叶っても運です。
引き寄せの法則に関する注意点#2
現実とズレた妄信が成長を阻害する
思い込みの方向性によっては、自分のプライドを守るためだけの「認知の歪み」となり、事実や他人の意見を素直に受け入れることができず、成長の機会を損なう可能性があります。
例えば「自分は仕事で絶対に成功する人間だ」と思い込むことで、上司からの否定的な指摘を軽んじたり、自身に都合の悪い事実から目を伏せたり、などです。
さらに場合によっては「ここは自分のいるべきところではない」「もっと自分の才能を認めてくれるところがあるはずだ」と仕事を辞めてしまうことも想像に難くはありません。
