キャリア事業を営むセオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献を確認したうえで作成しています。医学的診断を代替するものではありません。
引き寄せの法則とは
引き寄せの法則とは、強く考えたことと同じ出来事を現実に呼び込める、という考え方です。
「欲しかった仕事の話が舞い込んだ」「会いたかった人から連絡が来た」。そんな偶然が続くと、考えていたことが現実になったように感じることがあります。
- 考えただけで採用・合格・出会いなどが起こるとは、これまでの研究からはいえない
- 目標を意識すると、情報への気づき方や準備、続け方が変わることはある
- 心理学の研究を、量子力学や「波動」による願望実現の証明には使えない
この言葉は100年以上前からあり、W・W・アトキンソンの1906年の書籍にも登場します。2006年には、ロンダ・バーンの映画と書籍『ザ・シークレット』で広く知られるようになりました。
近年は、引き寄せを信じる人ほど、考え方や行動にどのような違いがあるかを調べた研究も出ています(Dixonら、2025)。ただし、思考そのものが外で起きる出来事を生むことを確かめた実験ではありません。
出典:The Secret公式経歴/WorldCat書誌/Google Books書誌/Dixon et al. (2025)
引き寄せたと感じる仕組み
「引き寄せた」と感じる背景には、情報への気づき方、出来事の受け取り方、その後の行動の変化があります。
目標に関係する情報へ注意が向く
転職を考え始めると、求人サイトを開く回数が増えたり、社内公募の案内に目が留まったりします。関心が高まると、目標に関係する情報を優先して見るようになるためです。
この働きは「トップダウン注意」と呼ばれます。今の目標に合わせて、見る情報の優先順位が変わることです。
注意に関する研究でも、目標に合う情報が優先して処理されることが示されています。
願いに合う出来事ほど覚えやすい
願ったあとによい連絡が来ると、その一致は強く記憶に残ります。一方、何も起きなかった日や期待と違った結果は、同じ重さで数えないことがあります。
これは「確証バイアス」の影響でも説明できます。自分の考えに合う情報を集めやすく、反対の情報を見落としやすい傾向のことです。
合った例と外れた例を同じ基準で数えると、印象だけに左右されにくくなります。
期待が準備や継続を変えることがある
「できそうだ」と思うことで、応募書類を整えたり、学習時間を確保したりする場合があります。結果に近づけているのは、願いそのものではなく、増えた準備や行動です。
研究では、前向きな期待と、よい結果だけを思い描く空想とでは、その後の行動や結果への結びつきが異なることが示されています。
出典:Paneri & Gregoriou (2017)/Nickerson (1998)/Oettingen & Mayer (2002)
引き寄せの法則の具体例
仕事・学習・人間関係の3場面で、願いと行動の役割を分けてみましょう。
具体例#1
仕事で希望する機会に気づいた
企画職へ移りたい人が、希望する仕事と必要な経験を書き出しました。社内公募を見つけたときには、自分の経験と募集条件を照らし合わせ、応募の準備を始めます。

企画職へ移りたい。まず募集条件を見て、自分の実績をどう伝えるか整理しよう。
目標がはっきりしたことで、関連情報に気づき、応募の準備まで進められました。
具体例#2
資格取得の計画を立てた
資格を取りたい人が、受験日から逆算して学ぶ範囲を分けました。平日の朝に問題を解き、間違えた分野を記録して翌週の配分を変えます。

今週やる範囲と時間を決めてみよう。まずは平日の朝から始めよう。
目標を「いつ何をするか」という計画へ変えると、学習を続けやすくなります。
具体例#3
会話のきっかけを増やした
知人と親しくなりたい人が、共通の話題に気づき、短い会話を自分から始めました。

共通の話題から声をかけてみよう。相手の反応を見ながら、無理のない距離を保ちたい。
増やせるのは会話のきっかけまでで、相手がどう感じるかは相手次第です。
- 目標:
何を望むかがはっきりすると、関係する情報に気づきやすくなる - 行動:
気づいた情報を、応募・学習・会話などの行動へ移す - 結果:
採否や合否、相手の判断は自分だけでは決められない
引き寄せの法則に関連する心理学概念
心理学には、目標を持ったあとの気づき、判断、計画を説明する概念があります。
- 自己成就予言:
最初の予測が行動や周囲の反応を変え、予測に沿う結果につながる過程です。思考だけで出来事を起こす説明ではありません。 - 楽観バイアス:
悪い出来事が自分には起こりにくいと見積もる傾向です。希望を持つことと、リスクを小さく見ることは別です。 - 心的対比:
望む将来と、そこへ進む妨げになる現実を並べて考える方法です。よいイメージだけで終わらせません。 - 実行意図:
「いつ・どこで・何をするか」を先に決める計画です。願いを始めやすい行動へ変えます。
出典:Merton (1948)/Weinstein (1980)/Oettingen et al. (2001)/Gollwitzer (1999)
引き寄せの法則の知識を活かす方法
役立てるなら、願いを「自分が次にできること」へ置き換えます。
- 目標を具体的にする:
「よい仕事」ではなく、希望する仕事や条件を書き出す - 妨げを見つける:
経験不足、時間不足、不安など、今つまずいている点を確かめる - 始める場面を決める:
「平日の朝に問題を解く」のように、いつ何をするか決める - 記録して見直す:
できた行動と得られた結果を分け、次に変える点を選ぶ
目標設定や記録は、成功を保証する方法ではなく、行動を整えるための道具です。
予定どおりに進まないときは「信じ方が足りない」と責めず、目標、方法、期限を見直してください。
医療・お金・人間関係では頼りすぎない
健康、損失を伴う契約、相手の権利に関わる判断では、願いの強さより事実や専門家の判断、本人の同意を優先してください。
- 医療:
よい思考を診断や治療の代わりにせず、必要な受診を遅らせない。症状が続く場合は医療機関へ相談する - お金:
「信じれば増える」で投資や契約を決めず、損失、手数料、解約条件を確認する。理解できない契約は避ける - 人間関係:
交際や復縁は相手の意思と同意が前提。返事を迫らず、断りや距離を置く反応を尊重する
病気や金銭被害、人間関係がうまくいかない理由を、本人の考え方だけに求めてはいけません。必要な支援と事実確認につなげることが大切です。
出典:Oettingen et al. (2001)/Gollwitzer (1999)/Locke & Latham (2002)/Harkin et al. (2016)
安全情報:厚生労働省eJIM/金融庁「うまい話にご用心」
