本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
アンチ・クライマックス法とは
アンチ・クライマックス法とは、スピーチや文章の流れにおいて、最も伝えたい結論を「最初」に持ってくる手法のことです。
例えば「結論から言うと、納期が1日遅れます。理由は…」と要点から伝える話し方がアンチ・クライマックス法にあたります。反対に、結論を最後まで持っていく話し方は「クライマックス法」と呼ばれます。
なお、「アンチ(anti-)」は「反対の」を表す接頭語で、「クライマックス(climax)」は一番盛り上がる「頂点」を意味する英単語です。
関連研究:ハロルド・スポンバーグ(Harold Sponberg)
アンチ・クライマックス法とクライマックス法の比較研究としては、ハロルド・スポンバーグ(Harold Sponberg)が1946年に学術誌「Speech Monographs」で発表した論文が知られています。
この論文では、議論を含むスピーチにおいて、結論を先に示す順序と、結論を最後に示す順序の効果が比較されています。
つまり、同じような主張でも「結論を最初に出すか、最後に出すか」によって、聞き手への伝わり方が変わるかを検討した研究です。(Sponberg, H. (1946).)
「アンチ・クライマックス法」のメリット
アンチ・クライマックス法を使って話し手や書き手が一番伝えたい要点を冒頭に持ってくることによって、内容を簡潔かつ迅速に、相手へと伝えることができます。
またこれは、聞き手や読み手からすると何に関する話題かを最初に把握することができるため、まどろっこしさを感じにくくなり、話の要点を追いやすくなります。
実際に、ビジネスシーンにおいてはよく「結論から話すように」と言われていますが、結論から話す構成は、アンチ・クライマックス法の考え方に近いものです。
アンチ・クライマックス法の具体例
アンチ・クライマックス法は、最初に結論を伝え、そのあとに理由や補足を説明する構成です。たとえば、次のように使います。

結論から言うと、納期が1日遅れます。
理由は、確認作業で追加対応が必要になったためです。現在は修正作業を進めており、明日の午前中には提出できる見込みです。
このように、先に結論を示してから理由や今後の対応を伝えると、相手が状況を早く把握しやすくなります。
「アンチ・クライマックス法」が向いているシーン
アンチ・クライマックス法は、以下の場面や人に向いているとされています。
では各例について解説していきます。
①長話で相手の興味を削ぎたくない商談
ビジネスにおいては「時間効率」がとにかく重視されるため、クライマックス法で結論までの長い話をつらつらと続けていると、相手の興味を削いでしまう可能性があります。
したがって、会話では「今回は〇〇をご提案するために伺いました」、メールでは「△△の件についてご連絡を差し上げました」などと、話の主旨を最初に持ってくるアンチ・クライマックス法のほうが適切です。
②ビジネスコミュニケーション

社内のホウレンソウを始めとしたビジネスコミュニケーションでは、アンチ・クライマックス法を用いて、結論から話した方が良いでしょう。
例えば、業務に支障が出た場面で、経緯から長々と説明して要点を後回しにしてしまうと、上司から「君は何を言いたいんだ、まずそれから聞かせてくれ」と指摘を受けることが考えられます。
ですので、「先ほど、○○のトラブルが起きてしまいました」「△△がわからないので相談をさせてください」などと、経緯からではなく、まず要点や結論を伝えるようにしましょう。
③結論を早く知りたい相手

結論を早く知りたい相手の場合、長い前置きに負担を感じることがあります。下手をすると「だから結局、何が言いたいの!」と苛立たせてしまう可能性もあるでしょう。
そのため、こちらもまずは結論を話して、相手が聞いてくれそうな態度であれば話を進めるようにしたほうがよいでしょう。
④相手のタイプを見極めて使い分ける
「男性は早く結論を知りたがる」「女性は話の過程を楽しみたがる」という説もありますが、個人差が大きく一概には言えません。
性別で決めつけるよりも、相手が結論を先に知りたがるタイプかどうかを見極めて、アンチ・クライマックス法とクライマックス法を使い分けるのが安全です。
例えば、アンチ・クライマックス法で話してくる相手には、同じくアンチ・クライマックス法で返すと意思疎通がスムーズです。逆に過程を楽しむ相手には、クライマックス法に寄せたほうが好まれることもあるでしょう。
「アンチ・クライマックス法」と「クライマックス法」の違い
クライマックス法は、Sponbergの研究で比較対象として取り上げられた話法で、アンチ・クライマックス法とは逆に、結論を最後に述べる伝え方です。
クライマックス法では、結論に向けて期待感を作り、聞き手の関心を保ちやすいとされています。
- アンチ・クライマックス法
最初に結論を伝え、そのあとに理由や補足を説明する方法。 - クライマックス法
理由や背景を先に説明し、最後に結論を伝える方法。 - 使い分けの軸
早く要点を伝えたい場面ではアンチ・クライマックス法、じっくり聞いてもらえる場面ではクライマックス法が向いています。

「アンチ・クライマックス法」と「クライマックス法」の活用方法
クライマックス法やアンチ・クライマックス法は、会話や文章の構成を考えるうえで幅広く応用しやすい話法です。
ではそれぞれ見ていきましょう。
ビジネスではアンチ・クライマックス法が効果的
ビジネスでの商談や会議、社内外へのメール送信、上司へのホウレンソウにおいては、結論から話すアンチ・クライマックス法が向いている場面が多くあります。
商談や会議は時間が限られているうえ、長時間の打ち合わせを避けたい企業も増えています。要点を先に伝えて反応を見ながら詳細を伝える話の組み立て方が好ましいでしょう。
さらに、メールに代わってチャットツールの導入も多くなっており、長文よりも要点を整理した短い共有が読みやすい場面が多いため、アンチ・クライマックス法が役立ちます。
既知の取引先との商談ならクライマックス法も効果的

なお例外として「クライマックス法」が好まれる場面もあります。例えば、相手が内容に興味津々な様子のときは、もったいぶって結論を最後に持っていくと期待値が高まり、クロージングへつなげやすくなるでしょう。
また、既知の取引先で世間話も多くするようであれば、リラックスしながら商談に入れるため、クライマックス法が好まれることもあります。
さらに、ずっとアンチ・クライマックス法で商談を続けていた相手に、アプローチ法を変えてクライマックス法を試すと、話に斬新さが生まれて相手の興味を引きやすくもなります。
日常生活で会話をするならクライマックス法

仲の良い友人や家族と話すような普段の会話においては、アンチ・クライマックス法ではなく、クライマックス法のほうがおすすめです。アンチ・クライマックス法は、普段の会話ではユーモアやエッセンスに欠ける話法かもしれません。
お笑い芸人のように話を膨らませて結論(「オチ」)を面白おかしく伝えるときや、怖い話・びっくりする話などは、盛り上がる部分を最後に持ってくるクライマックス法のほうが効果的です。
強いて言えば、相手が結論を早く知りたいタイプだったり、同じアンチ・クライマックス法で話すような人だったりしたときには、クライマックス法を避けるように使い分けましょう。
