本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
まずは概要から:
可用性ヒューリスティックとは
可用性ヒューリスティックは、判断や意思決定をする際に、利用可能な情報やすぐに思い出せる事例をもとに判断する傾向、認知バイアスです。(別名:可用性バイアス)
言い換えると「いまあるもので解決・処理しようとする傾向」のことで、料理で例えるなら「冷蔵庫にある食品」や「すぐ思い出せるレシピ」から、その日の献立を決めるイメージです。他にも例をあげてみます。
- なにかしらの商品選び
人気ブランドや記憶に浮かぶ商品を選びやすくなります。それこそ以前使ったことのあるメーカーの製品や、評判が良い商品などです。 - どういったお店を選ぶか
あえて新しく探したりせず、すでに知っているお店を選びやすくなります。チェーン店やコンビニなどはよく利用するところを選び方が多いのではないでしょうか。
このように、何かしらの意思決定をする時、すぐに思い出せる事例や記憶をもとに判断する傾向が「可用性ヒューリスティック」です。
メリットとして「情報の入手と処理は早い」というものがありますが、デメリットとして「それ以上の最適解を見つにくく、判断を間違えやすくなる」という点があります。
補足:認知バイアスとは
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって、誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

可用性ヒューリスティックの具体例
さらに具体例を紹介していきます。
- 仕事/ビジネスでの具体例
①就活で選考を受ける企業の選択
②ツールや代理店の選択
③稼げる副業の選択 - 人間関係/日常生活での具体例
④休日遊びに誘う交友関係
⑤商品やレストランの選択
可用性ヒューリスティックの具体例①
就活で選考を受ける企業の選択
TVCMでよく名前を聞く「大手有名企業」の場合、就職後の条件や具体的な仕事内容を、他社と比較すらせず「とりあえず選考に進んでしまう」という方も多いですね。
可用性ヒューリスティックの具体例②
ツールや代理店の選択
企業のプロジェクトで、ツールを購入したり、代理店を利用したりするとき、聞き覚えのある企業やサービス名だと、優先度を上げて検討されやすいですね。評判の良し悪しは別で、パッと思いついたところを利用したいと思う方が多いのではないでしょうか。
可用性ヒューリスティックの具体例③
稼げる副業の選択
「副業で稼ぎたい!」と思った時に、SNSで頻繁に目にしていた「ブログで◯◯万円!」という情報商材屋のフレーズが刷り込まれて、他の選択肢を吟味せずにブログを始める、などもそうですね。
可用性ヒューリスティックの具体例④
休日遊びに誘う交友関係
「今週末暇だから飲みにいきたいな」と思った時に、パッと思い出せて、気軽に誘ってもきてくれた記憶のある友人を誘いやすいですよね。
ここで「新しい出会い」や「普段会わない知人」を優先して誘おうとするのは、少数派ではないでしょうか。
可用性ヒューリスティックの具体例⑤
商品やレストランの選択
パッと記憶に浮かぶ商品・レストランを選びやすいですよね。それこそ以前使ったことのあるメーカーの製品や、行ったことのあるチェーン店です。
認知機能(MBTI)でみる可用性ヒューリスティックの影響度
認知機能ベースで見ると、Si(内向的感覚)が主機能として判断基準に置かれるタイプは、可用性ヒューリスティックにかかりやすい傾向にあります。
可用性ヒューリスティックとは、思い出しやすい事例・直近で接した情報を、そのまま頻度や重要度の判断材料にしてしまう認知バイアスです。このバイアスの中核にあるのは、「記憶に浮かびやすい=よく起きている/重要」という短絡です。そのため、Si主機能が判断を主導する場合、このバイアスが構造的に発生しやすくなります。
Si(内向的感覚):想起容易性の過信
- 判断基準が「過去に見た」「聞いた」「経験した」に置かれる
- 想起しやすい事例を、代表的・頻発しているものとして扱いやすい
- 「よく思い出せる=現実でも多い」という誤認が生まれやすい
- ISTJ(管理者)
直近の事例や印象に基づいて頻度判断を行い、分布全体を見落としやすい - ISFJ(擁護者)
身近な経験や聞き覚えのある話を重視し、例外的事象を過大評価しやすい
※あくまで判断プロセスの傾向差です。
直近刺激による補強(Se的補強)
Siによって想起された事例が、Seによって「今ここで強く感じる現実」として補強されます。
Se(外向的感覚):直近・鮮度情報の強調
- 判断基準が「最近見た」「今話題になっている」に置かれる
- ニュース・SNS・体験直後の情報を、実態以上に重要視しやすい
- 「最近よく見る=実際にも多い」という短期的拡張が起きやすい
特に、ニュース報道・SNSトレンド・体験談が連続する環境では、想起容易(Si)+鮮度強調(Se)が同時に働き、可用性ヒューリスティックが強化されやすくなります。
可用性ヒューリスティックの影響を受けにくいMBTIタイプ
逆に、可用性ヒューリスティックにかかりにくいのは、判断基準がNi(内向的直観)やTe(外向的思考)に固定されているタイプです。
- Ni(内向的直観):個別事例ではなく、背後にある全体構造や長期傾向を基準に判断する
- Te(外向的思考):数値・統計・母数を参照し、想起しやすさと頻度を切り分ける
これらが主機能となっている場合、「思い出しやすさ」と「実際の発生頻度」を分離して捉えやすく、可用性ヒューリスティックに陥りにくい傾向があります。
- INTJ(建築家)※Ni主機能
長期トレンドや全体像を基準にし、直近事例に引きずられにくい - INFJ(提唱者)※Ni主機能
個別エピソードよりも構造的背景を重視し、頻度誤認を起こしにくい - ENTJ(指揮官)※Te主機能
数値データを基準に判断し、記憶の鮮度を根拠にしにくい - ESTJ(幹部)※Te主機能
実績や統計を優先し、印象ベースの頻度判断を抑制しやすい
誤解しやすい点なので補足すると、可用性ヒューリスティックは「記憶力が良いから起きる」のではありません。想起しやすさを頻度判断の根拠に昇格させた瞬間に発生します。
また、Ni/Teタイプであっても、データが欠如した状況ではこのバイアスは起きます。判断基準が何であれ、「思い出しやすい事例で全体を推定した時点」で、可用性ヒューリスティックは発生します。
認知バイアスを緩和するポイント
認知バイアスの原因は「経験や直感からくる思い込み」にあるので、対処すれば、一定は軽減できます。※人間である以上、全てを防ぐのは不可能です。
- 認知バイアスへの理解を深める
- 認知バイアス診断で思考の癖を知る
- 批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスを緩和するポイント①
認知バイアスへの理解を深める
まず、認知バイアスの存在を知らなければ、防ぎようがありません。あなたが人間である限り『なにかしらのバイアスが少なからず働いている』という認識を持つところから始めましょう。
例えば、データ分析からアクションを検討する場合においては、下記のポイントを意識して、合理的に読み解く必要があるので、注意をしたいところです。
- 確証バイアス
自身の仮説を支持する都合良い情報ばかり集めていないか - 生存バイアス
サンプリング対象に失敗事例は含まれているか - サンプリングバイアス
サンプル対象が特定の属性に偏っていないか - 錯誤相関
データ同士の相関性から間違えた因果関係を見出していないか
ちなみに「自分は大丈夫」「今回のケースは大丈夫」と思うのであれば、それもバイアスです。(楽観バイアスや正常性バイアスなど)。
認知バイアスを緩和するポイント②
認知バイアス診断で思考の癖を知る
次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。簡易的なものであれば、無料アプリの「ミイダス」で診断可能です。
▼ミイダスで診断してみよう

ミイダスはもともと、転職市場価値を診断できるアプリですが、「バイアス診断ゲーム」をはじめとした心理学系の診断がいくつかあります。数分の診断で結果がわかるので、興味があれば試してみてください。
認知バイアスを緩和するポイント③
批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスに陥るのを防ぐために「なにごとも疑ってかかる」「自分と異なる意見を取り入れる」ことが重要です。 例えば以下のようにですね。
- 何が事実で、何が解釈か
- 別の観点から考えると、解釈は変わるか
- どのような反対意見があるか
このように、さまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくはなります。いわゆるクリティカルシンキング(批判的思考)ですね。
第三者の意見を取り入れるのもおすすめです。利害関係がなく、都合が悪いことも率直に伝えてくれる相手にしましょう。自身と違った境遇・価値観を持つ方であればあるほど、視野が広がります。
