本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
正常性バイアスとは
正常性バイアス(normalcy bias)とは、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする認知バイアスのことです。(別名:正常化の偏見)
- 自然災害の過小評価
地震や洪水、浸水が起きても大丈夫だと思い、避難警報が出ていても避難をしないで、家で変わらずに過ごす - 株価暴落の過小評価
特定企業の株が将来価値があると信じている投資家は、その株の価値を上げる情報を集め、下げる情報を無視することがあります - 健康問題の過小評価
喫煙者が肺がんになるリスクを過小評価したり、食生活や睡眠習慣が乱れても問題がないと思う。健康診断で引っかかっても気にしない - 勉強や仕事の締め切り
例:明日テストで全く勉強してないが大丈夫
例:仕事の納期まで時間ないけど問題ない
これらの具体例からわかるように、正常性バイアスは、人間がリスクそのもの過小評価し、適切な対策を講じる能力を阻害する可能性があります。
補足:認知バイアスとは
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって、誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

正常性バイアスの具体例
特に大きく影響する場面が災害時です。例えば、自然災害時に「警報が出ていても避難しない人」が一定数存在することが指摘されています。
これはまさに正常性バイアスの結果で、自分にとって都合の悪い「避難しないと危険である」という情報を無視したり、「避難するほどではない」と災害を過小評価したり、などが挙げられます。
- 東日本大震災(2011年)
- 御嶽山噴火(2014年)
- コロナウイルス(2020年)
正常性バイアスの具体例#1
東日本大震災(2011年)

日本において集団に正常性バイアスが働いたとされるもっとも大きな事例は、2011年に発生した東日本大震災こと東北地方太平洋沖地震です。
地震発生直後のビックデータから人々の行動を解析したところ、ある地域では地震直後にほとんど動きがなく、津波を実際に目で目撃してからようやく避難行動に移っており、避難行動に遅れが生じていたことが後の研究から明らかになっています。
正常性バイアスの具体例#2
御嶽山噴火(2014年)
2014年9月27日、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山にて、突然の水蒸気爆発が発生しました。これは戦後最悪の火山噴火災害となりましたが、噴火後に一部の人たちは下山せず、山頂付近で行動していたとのことです。
その理由として噴火に気付かなかったり、過去に訪れた際に何も無かったために、正常性バイアスが働いて「今回もなんともないだろう」という心理が関与していたと言われています。
正常性バイアスの具体例#3
コロナウイルス(2020年)
コロナウイルス(COVID-19)においても、初動時に正常性バイアスが影響したとされています。
「新型コロナウイルス」と聞いてもその深刻さを実感しにくく、人々がリスクの大きさを適切に判断できなかった事例が多く見られました。特に武漢などで感染が広がっている段階では、多くの国や個人が「自国や自分には関係ない」「そこまで広がらないだろう」と楽観的に見ていたと言われています。
認知機能(MBTI)でみる正常性バイアスの影響度
認知機能ベースで見ると、Si(内向的感覚)が主機能として判断基準に置かれるタイプは、正常性バイアスに最もかかりやすい傾向にあります。
正常性バイアスとは、「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫」という前提に基づき、都合の悪い情報を無視・過小評価してしまう認知バイアスです。このバイアスの中核にあるのは、過去の安定パターンを現在の判断基準として固定してしまうことです。そのため、Si主機能が判断を主導する場合、このバイアスが構造的に発生しやすくなります。
Si(内向的感覚):過去パターンの正規化
- 判断基準が「過去の経験・慣れた状況・蓄積されたデータ」に置かれる
- 「前回もこうだったから今回も大丈夫」という前例参照が自動的に起きやすい
- 例外的・前例のない状況へのアラートが遅延しやすい
- ISTJ(管理者)
過去の実績・慣例を基準にし、前例のないリスクを軽視しやすい - ISFJ(擁護者)
安定した環境に適応してきた経験から、変化の深刻さを過小評価しやすい
※あくまで判断プロセスの傾向差です。
習慣化による正当化(Te的補強)
また、Te(外向的思考)が関与する場合、正常性バイアスが「効率的な判断として合理化」される形で補強されることがあります。
Te(外向的思考):慣例の効率化
- 判断基準が「コスト・効率・実績データ」に置かれる
- 過去に有効だった判断フローを最適解として固定しやすい
- 「例外処理はコスト」として、前例にない警告を排除しやすい
特に、Si主機能タイプが組織・業務・日常生活の意思決定を担う場面では、前例固定(Si)+効率正当化(Te)が同時に働き、正常性バイアスが強化されやすくなります。
正常性バイアスの影響を受けにくいMBTIタイプ
逆に、正常性バイアスにかかりにくいのは、判断基準がNe(外向的直観)やNi(内向的直観)に固定されているタイプです。
- Ne(外向的直観):「もしこうなったら」という未来の可能性を広く想定する
- Ni(内向的直観):「この状況の本質は何か」を深く掘り下げ、パターン外れを察知する
これらが主機能となっている場合、「前回もこうだった」よりも「今回はどう違うか」を起点に判断しやすく、前例への固定が起きにくい傾向があります。
- ENFP(広報運動家)※Ne主機能
多様な可能性を想定しやすく、前例にない事態に敏感に反応できる - ENTP(討論者)※Ne主機能
例外・反証を積極的に検討し、「今回も大丈夫」という前提を崩しやすい - INTJ(建築家)※Ni主機能
状況の本質を構造的に把握し、パターンの異常を早期に察知しやすい - INFJ(提唱者)※Ni主機能
流れや変化の意味を深く読み取り、表面的な安定に安心しにくい
誤解しやすい点なので補足すると、正常性バイアスは「楽観的な性格だから起きる」のではありません。過去の安定パターンを「現在の基準」として固定した瞬間に発生します。
また、Ne/Niタイプでも、慣れた環境の中で前例参照が続くと正常性バイアスは起きます。判断基準が何であれ、「今回の状況を前例と照合することをやめた時点」で、このバイアスは発生します。
正常性バイアスの影響度診断
正常性バイアスは「自分には関係ない」「大丈夫なはず」という思い込みで、リスクのサインを見逃してしまう心理です。自分は冷静だと思っていても、無意識のうちに働いていることがあります。
まずは簡単な診断で、あなたの影響度をチェックしてみましょう。
次の質問に 「当てはまる=1点」「当てはまらない=0点」 で答えてください。
- 警報や注意報が出ても、自分のいる場所は大丈夫だと感じる
- 「今まで問題なかったから今回も大丈夫」と考えがちだ
- リスクを指摘されても「大げさだ」「自分は違う」と感じることが多い
- 体調の変化や異変があっても、しばらく様子を見てしまう
- 悪いシナリオを考えると不安になるため、意図的に考えないようにしている
- 問題が起きても”たまたまのこと”と解釈して深刻に受け止めない
- 大きな変化があっても、時間が経てば元に戻るはずだと考える
- トラブルの兆候があっても、行動を変えるほどではないと思う
- リスク情報を見ても、自分には当てはまらないと感じがちだ
【判定の目安】
- 3〜5点:注意が必要(無意識に都合よく解釈している可能性あり)
- 6点以上:要注意(重要なサインを見逃しているリスクが高い)
正常性バイアスの対策
正常性バイアスへの対策は、「最悪のシナリオ」を常に考え、できる限り想定しておくことです。
たとえば自然災害であれば、起きてからの行動を、起きていない平時に考えておくことが大切です。具体的には「最悪何が起きてしまうのか」を常に想定し、情報収集や状況確認を行い、「最悪のシナリオを回避できる準備をしておくこと」がとても重要です。
また、正常性バイアスの強さには個人差があり、特に「率先避難者」と呼ばれる人たちが自ら積極的に動き、周囲を誘導することで全体の避難率を上げる効果があります。こういった方が「一人でも逃げる」という判断を下せた場合には、特に後続の避難率に影響しやすいとされています。
このように、正常性バイアスは、様々な面において判断や行動に影響してしまうバイアスです。特に緊急時には冷静に考えたり行動したりすることがそもそも難しくなる状況であり、正常性バイアスに陥らないこと自体が、一般人にはほぼ不可能です。そのため、正常性バイアスがかかっていることを加味した上で自分自身が率先避難者となるなどの心がけも重要になってくるでしょう。
認知バイアスを緩和するポイント
認知バイアスの原因は「経験や直感からくる思い込み」にあるので、対処すれば、一定は軽減できます。※人間である以上、全てを防ぐのは不可能です。
- 認知バイアスへの理解を深める
- 認知バイアス診断で思考の癖を知る
- 批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスを緩和するポイント①
認知バイアスへの理解を深める
まず、認知バイアスの存在を知らなければ、防ぎようがありません。あなたが人間である限り『なにかしらのバイアスが少なからず働いている』という認識を持つところから始めましょう。
例えば、データ分析からアクションを検討する場合においては、下記のポイントを意識して、合理的に読み解く必要があるので、注意をしたいところです。
- 確証バイアス
自身の仮説を支持する都合良い情報ばかり集めていないか - 生存バイアス
サンプリング対象に失敗事例は含まれているか - サンプリングバイアス
サンプル対象が特定の属性に偏っていないか - 錯誤相関
データ同士の相関性から間違えた因果関係を見出していないか
ちなみに「自分は大丈夫」「今回のケースは大丈夫」と思うのであれば、それもバイアスです。(楽観バイアスや正常性バイアスなど)。
認知バイアスを緩和するポイント②
認知バイアス診断で思考の癖を知る
次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。簡易的なものであれば、無料アプリの「ミイダス」で診断可能です。
▼ミイダスで診断してみよう

ミイダスはもともと、転職市場価値を診断できるアプリですが、「バイアス診断ゲーム」をはじめとした心理学系の診断がいくつかあります。数分の診断で結果がわかるので、興味があれば試してみてください。
認知バイアスを緩和するポイント③
批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスに陥るのを防ぐために「なにごとも疑ってかかる」「自分と異なる意見を取り入れる」ことが重要です。 例えば以下のようにですね。
- 何が事実で、何が解釈か
- 別の観点から考えると、解釈は変わるか
- どのような反対意見があるか
このように、さまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくはなります。いわゆるクリティカルシンキング(批判的思考)ですね。
第三者の意見を取り入れるのもおすすめです。利害関係がなく、都合が悪いことも率直に伝えてくれる相手にしましょう。自身と違った境遇・価値観を持つ方であればあるほど、視野が広がります。
