バウンダリーレス・キャリアとは?意味・具体例・関連概念をわかりやすく解説

バウンダリーレス・キャリア

バウンダリーレス・キャリアとは、会社・職種・業界などの境界に閉じず、複数の場をまたいで形成されるキャリアを指す考え方です。

たとえば、今の会社で働きながら社外の勉強会に出る、別職種へ異動する、副業や地域活動で経験を広げる場面が当てはまります。

目次
編集 セオリーズ編集部

キャリア事業を営むセオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献を確認したうえで作成しています。医学的診断を代替するものではありません。

バウンダリーレス・キャリアとは

バウンダリーレス・キャリアは、1つの会社の中で昇進していく道だけを前提にしないキャリア観です。

研究上は、Michael B. Arthur と Denise M. Rousseau が編集した1996年の書籍 The Boundaryless Career で体系化されました。

ポイント
  • 組織内の昇進だけをキャリアの中心に置かない
  • 社外の専門性・人脈・市場評価がキャリアを支える
  • 転職の有無より、境界を越えて選択肢を持てるかを重視する

出典:WFRN「Boundaryless Career」/Arthur & Rousseau編『The Boundaryless Career』(1996)(2026年7月20日確認)

バウンダリーレス・キャリアの仕組み

バウンダリーレス・キャリアは、物理的な移動と心理的な移動の組み合わせで理解すると整理しやすくなります。

物理的移動

物理的移動とは、会社・職種・業界・地域など、実際の所属や働く場所を変えることです。たとえば、メーカーの営業職からIT企業のカスタマーサクセスへ移る場合が該当します。

ただし、物理的移動が多いほどよいという意味ではありません。移動先で何を学び、どの専門性を持ち運べるかが重要です。

心理的移動

心理的移動とは、現在の会社だけにキャリアの可能性を閉じず、外部にも選択肢があると認識することです。社外勉強会に参加したり、職能コミュニティで情報交換したりする行動が支えになります。

この視点を持つと、今の会社に残る場合でもキャリアの見え方が変わります。社内の役割を固定的に受け取るだけでなく、外部基準で自分の経験を見直せるためです。

外部ネットワーク

外部ネットワークとは、現在の勤務先の外にある人間関係や情報源です。社外の同職種コミュニティ、業界横断の勉強会、前職の同僚とのつながりなどが含まれます。

バウンダリーレス・キャリアでは、社内評価だけでなく、社外から見た専門性や信頼もキャリアを支えます。境界を越える力は、所属を変える前から育てられる点が重要です。

出典:Sullivan & Arthur (2006)(2026年7月20日確認)

バウンダリーレス・キャリアの具体例

バウンダリーレス・キャリアは、転職だけでなく、社内異動や社外活動にも現れます。

具体例#1
社内異動で専門性を広げる

人事部で採用を担当していた人が、社内公募で事業企画へ移るケースです。会社は同じでも、職能の境界を越えて経験を広げています。

この例では転職はしていません。それでも、採用で得た人材市場の知識を事業計画に活かせるため、組織内にいながらバウンダリーレスな動きが生まれています。

具体例#2
専門職として会社をまたぐ

デザイナーやエンジニアが、複数の会社で経験を積みながら専門性を高めるケースです。評価の軸は、社内の肩書だけでなく、ポートフォリオや社外での実績にも広がります。

この場合、境界を越える対象は会社です。個人が持ち運べるスキルや実績があるほど、次の選択肢を作りやすくなります。

具体例#3
副業や越境活動で視野を広げる

本業では営業をしながら、休日にNPOの広報や地域プロジェクトへ参加するケースです。所属企業の外で別の役割を持つことで、仕事の見方が変わります。

この例では、すぐに転職する必要はありません。社外で得た視点や人脈が、本業の提案力や将来の選択肢につながる点がバウンダリーレス・キャリアらしい部分です。

バウンダリーレス・キャリアに関連する概念

バウンダリーレス・キャリアは、他のキャリア理論と重なる部分があります。近い概念を分けると、何に注目する理論かが見えやすくなります。

関連概念
  • プロティアン・キャリア:個人の価値観と自己主導性を重視するキャリア観です。バウンダリーレス・キャリアが「境界を越える移動や関係性」に焦点を置くのに対し、プロティアン・キャリアは「自分の価値基準でキャリアを方向づけること」に重点があります。
  • キャリア・アダプタビリティ:変化に対応しながらキャリア課題に向き合う心理的資源を指します。バウンダリーレス・キャリアを実際に進めるとき、環境変化へ対応する力として関係します。
  • エンプロイアビリティ:働く機会を得たり、別の仕事へ移ったりするための知識・スキル・つながりなどを指します。雇用の保証ではなく、労働市場で選択肢を持つための概念です。

出典:Briscoe & Hall (2006)(2026年7月20日確認)

バウンダリーレス・キャリアを活かす方法

バウンダリーレス・キャリアを活かすには、すぐに転職するよりも、境界を越えられる準備を日常的に作ることが大切です。

活かす方法
  • 持ち運べる経験を書き出す:
    社内だけで通じる業務名ではなく、他社や他職種でも説明できる経験やスキルに言い換えてください。
  • 社外の評価軸に触れる:
    守秘義務や勤務先の規則に触れない範囲で、勉強会、職能コミュニティ、公開ポートフォリオなどから外部の見方を確認してください。
  • 小さな越境から始める:
    副業、社内公募、部署横断プロジェクトなど、勤務先の規則や生活上の制約を確かめ、現在の仕事を続けながら試せる機会を探しましょう。
  • 移動しない選択も残す:
    バウンダリーレス・キャリアは転職の推奨ではありません。外に選択肢を持ったうえで、今の組織に残る判断も含まれます。
  • 職場や学校と選択肢を確認する:
    本人は希望と難しい条件を伝え、職場や学校側は社内公募や部署・学科をまたぐ役割、越境学習の時間、相談先などを一緒に確認してください。

境界を越えられるかは、個人の意欲や能力だけで決まりません。雇用環境、家庭事情、健康状態、地域の求人、職場や学校の制度に左右され、転職や社外活動が雇用を保証するわけでもありません。

この理論を、本人の能力・適性を判定したり、移動できない責任を本人に負わせたりするために使わないでください。今の組織に残る選択も含め、本人の希望と利用できる支援を一緒に確認することが大切です。

本記事はキャリア理論の一般的な解説です。個別の進路・転職判断は、状況や制約を踏まえて検討してください。


運営者情報

当サイトはセオリーズ株式会社が運営しています。

会社名セオリーズ株式会社
公式HP https://corp.theories.co.jp/
本社所在地〒106-0032
東京都港区六本木6丁目10番1号
六本木ヒルズ森タワー16階
法人番号 8010001246220

当メディアでは、各サービスの公開情報・公式サイト等をもとに記事を作成しています。掲載情報についてお気づきの点がございましたら、こちらよりご連絡ください。

目次