バウンダリーレス・キャリアとは?意味・具体例・関連概念をわかりやすく解説

バウンダリーレス・キャリアとは、会社・職種・業界などの境界に閉じず、複数の場をまたいで形成されるキャリアを指す考え方です。転職回数の多さそのものではなく、外部ネットワークや専門性、本人の選択によってキャリアの幅が広がる点に特徴があります。

目次
編集 セオリーズ編集部

本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。

バウンダリーレス・キャリアとは

バウンダリーレス・キャリアとは、組織内の昇進だけでなく、組織・職種・地域などの境界を越えて進むキャリアです。

この概念は、Michael B. Arthur と Denise M. Rousseau が編集した1996年の書籍 The Boundaryless Career で体系化されました。従来型の「一つの会社の中で段階的に昇進するキャリア」と対比されます。

ポイント
  • 組織内の昇進だけをキャリアの中心に置かない
  • 社外の専門性・人脈・市場評価がキャリアを支える
  • 転職の有無より、境界を越えて選択肢を持てるかを重視する

出典:Work and Family Researchers Network, “Boundaryless Career” / Arthur, M.B. & Rousseau, D.M. (1996). The Boundaryless Career: A New Employment Principle for a New Organizational Era. https://wfrn.org/glossary/boundaryless-career/

バウンダリーレス・キャリアの仕組み

バウンダリーレス・キャリアは、物理的な移動と心理的な移動の組み合わせで理解すると整理しやすくなります。

仕組み#1
物理的移動

物理的移動とは、会社・職種・業界・地域など、実際の所属や働く場所を変えることです。たとえば、メーカーの営業職からIT企業のカスタマーサクセスへ移る場合が該当します。

ただし、物理的移動が多いほどよいという意味ではありません。移動先で何を学び、どの専門性を持ち運べるかが重要です。

仕組み#2
心理的移動

心理的移動とは、現在の会社だけにキャリアの可能性を閉じず、外部にも選択肢があると認識することです。社外勉強会に参加したり、職能コミュニティで情報交換したりする行動が支えになります。

この視点を持つと、今の会社に残る場合でもキャリアの見え方が変わります。社内の役割を固定的に受け取るだけでなく、外部基準で自分の経験を見直せるためです。

仕組み#3
外部ネットワーク

外部ネットワークとは、現在の勤務先の外にある人間関係や情報源です。社外の同職種コミュニティ、業界横断の勉強会、前職の同僚とのつながりなどが含まれます。

バウンダリーレス・キャリアでは、社内評価だけでなく、社外から見た専門性や信頼もキャリアを支えます。境界を越える力は、所属を変える前から育てられる点が重要です。

出典:Sullivan, S. E., & Arthur, M. B. (2006). “The evolution of the boundaryless career concept: Examining physical and psychological mobility.” Journal of Vocational Behavior, 69(1), 19-29. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001879105001053

バウンダリーレス・キャリアの具体例

具体例#1
社内異動で専門性を広げる

人事部で採用を担当していた人が、社内公募で事業企画へ移るケースです。会社は同じでも、職能の境界を越えて経験を広げています。

この例では転職はしていません。それでも、採用で得た人材市場の知識を事業計画に活かせるため、組織内にいながらバウンダリーレスな動きが生まれています。

具体例#2
専門職として会社をまたぐ

デザイナーやエンジニアが、複数の会社で経験を積みながら専門性を高めるケースです。評価の軸は、社内の肩書だけでなく、ポートフォリオや社外での実績にも広がります。

この場合、境界を越える対象は会社です。個人が持ち運べるスキルや実績があるほど、次の選択肢を作りやすくなります。

具体例#3
副業や越境活動で視野を広げる

本業では営業をしながら、休日にNPOの広報や地域プロジェクトへ参加するケースです。所属企業の外で別の役割を持つことで、仕事の見方が変わります。

この例では、すぐに転職する必要はありません。社外で得た視点や人脈が、本業の提案力や将来の選択肢につながる点がバウンダリーレス・キャリアらしい部分です。

バウンダリーレス・キャリアに関連する概念

バウンダリーレス・キャリアは、他のキャリア理論と重なる部分があります。ここでは混同しやすい概念を整理します。

  • プロティアン・キャリア
    個人の価値観と自己主導性を重視するキャリア観です。バウンダリーレス・キャリアが「境界を越える移動や関係性」に焦点を置くのに対し、プロティアン・キャリアは「自分の価値基準でキャリアを方向づけること」に重点があります。
  • キャリア・アダプタビリティ
    変化に対応しながらキャリア課題に向き合う心理的資源を指します。バウンダリーレス・キャリアを実際に進めるとき、環境変化へ対応する力として関係します。
  • エンプロイアビリティ
    雇用され続ける力、または労働市場で選択肢を持てる力を指します。社外でも通用する専門性や信頼を高める点で、バウンダリーレス・キャリアと接点があります。

出典:Briscoe, J. P., & Hall, D. T. (2006). “The interplay of boundaryless and protean careers.” Journal of Vocational Behavior, 69(1), 4-18. https://eric.ed.gov/?id=EJ741366

バウンダリーレス・キャリアを活かす方法

バウンダリーレス・キャリアを活かすには、すぐに転職するよりも、境界を越えられる準備を日常的に作ることが大切です。

活かす方法
  • 持ち運べる経験を書き出す:
    社内だけで通じる業務名ではなく、他社や他職種でも説明できるスキルに言い換えます。
  • 社外の評価軸に触れる:
    勉強会、職能コミュニティ、公開ポートフォリオなどで、自分の経験が外部からどう見えるかを確認します。
  • 小さな越境から始める:
    副業、社内公募、部署横断プロジェクトなど、現在の仕事を壊さずに境界を越える機会を作ります。
  • 移動しない選択も残す:
    バウンダリーレス・キャリアは転職の推奨ではありません。外に選択肢を持ったうえで、今の組織に残る判断も含まれます。

大切なのは、会社に依存しないことではなく、会社だけに可能性を閉じないことです。境界の外にも学びや関係性を持つほど、今いる場所での働き方も選びやすくなります。


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