PM理論とは、リーダーの働きを「成果を出す力」と「チームを保つ力」の2つで見る理論です。
たとえば、納期を守るために役割や期限を示すだけでは、相談しづらい空気が残ることがあります。反対に、雰囲気がよくても目標や判断基準が曖昧だと、成果につながりにくくなります。
PはPerformance、MはMaintenanceを表します。PM理論では、リーダーを性格で決めつけず、いまの関わり方がどちらに偏っているかを点検します。
キャリア事業を営むセオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献を確認したうえで作成しています。医学的診断を代替するものではありません。
PM理論とは
PM理論とは、集団の目標達成を進めるP機能と、集団の協力関係を保つM機能の2軸で、リーダー行動を整理する理論です。
社会心理学者の三隅二不二が提唱した、日本発のリーダーシップ理論です。
- P機能は、目標、計画、指示、進捗確認など、成果へ向けて集団を動かす働きです
- M機能は、関係調整、励まし、相談しやすさ、対立の緩和など、協力を続ける働きです
- PM理論は、成果か人間関係かの二択ではなく、両方のバランスを見ます
特徴は、リーダーを「厳しい」「優しい」だけで評価しない点です。成果を求める行動と、協力できる状態をつくる行動を分けると、チームに足りない関わり方を見つけやすくなります。
出典: Misumi & Peterson (1985), CiNii Research
PM理論の4つの型
PM理論では、P機能とM機能の強弱を組み合わせて、リーダー行動を4つの型で見ます。これは人を固定するラベルではなく、いまの関わり方を点検するための見方です。
- PM型
P機能もM機能も高い型です。目標を示しながら、相談や協力が続く状態も整えます。 - Pm型
P機能が高く、M機能が低い型です。成果への圧力は強い一方で、疲弊や沈黙が起きやすくなります。 - pM型
P機能が低く、M機能が高い型です。雰囲気は保ちやすい一方で、目標や判断基準が曖昧になりやすくなります。 - pm型
P機能もM機能も低い型です。方向づけも関係調整も弱く、チームが動きにくい状態です。
出典: Misumi & Peterson (1985), ERIC EJ323594
PM理論の具体例
PM理論は、職場で起きる「成果は出ているのに疲弊する」「仲はよいのに前に進まない」といった状態を整理しやすい理論です。
具体例#1
納期が迫るプロジェクトを進める
納期が迫っているプロジェクトでは、作業の優先順位、担当範囲、判断基準を明確にするP機能が必要です。「各自で頑張って」とだけ伝えると、進捗の遅れや重複作業が見えにくくなります。
一方で、P機能だけを強めすぎると、メンバーは相談しづらくなります。短い確認の場を設け、困りごとを早く出せる状態をつくるM機能も必要です。
具体例#2
雰囲気はよいが成果が出ない
メンバー同士の関係はよく、会議も穏やかなのに、売上や改善目標が達成されない場面です。この場合、M機能は働いていても、P機能が不足している可能性があります。
関係性を保ちながら、目標、期限、責任範囲、評価基準を明確にすることが必要です。PM理論で見ると、雰囲気のよさを残しつつ、成果に向けた行動を補う課題として整理できます。
具体例#3
成果は出ているが疲弊が増える
短期的な成果は出ているものの、メンバーの疲弊、対立、離職意向が増えている場面です。この場合、P機能は強い一方で、M機能が不足している可能性があります。
単に目標を下げるのではなく、業務量の偏り、相談機会、心理的安全性、協力関係を見直すことが必要です。成果の出し方と、継続して働ける状態を分けて確認することが大切です。
PM理論の関連概念
PM理論は、リーダーシップを行動の機能から見る理論です。近い概念と比べると、成果、関係維持、状況調整、変化促進のどこに焦点があるかを整理しやすくなります。
- SL理論:メンバーの成熟度や状況に合わせて、指示・支援・委任の仕方を変える理論です。PM理論は、リーダー行動をP機能とM機能の2軸で点検します。
- 変革型リーダーシップ:ビジョンや意味づけを通じて、メンバーの意欲や変化行動を高めるリーダーシップです。PM理論は、より基本的な目標達成と集団維持の機能に注目します。
- 交換型リーダーシップ:目標、報酬、評価、例外管理を通じて行動を調整するリーダーシップです。PM理論のP機能とは重なる部分がありますが、M機能も同時に扱う点が異なります。
- 心理的安全性:対人関係上のリスクをとっても大丈夫だと感じられるチームの状態です。PM理論では、M機能を支える要素の一つとして理解できます。
PM理論を活かす方法
PM理論を活かすには、リーダーを一つのタイプに決めつけず、いまの行動がPとMのどちらに偏っているかを具体的に見ることが大切です。
- P機能を行動で見る:
目標、期限、役割、判断基準、進捗確認が明確になっているかを点検してください。 - M機能を雰囲気だけで見ない:
仲がよいかだけでなく、相談しやすいか、対立を扱えるか、助け合いが起きているかを確認してください。 - 不足している側を小さく補う:
Pが弱いなら会議の目的を明確にし、Mが弱いなら困りごとの共有時間を作るなど、行動単位で補ってください。 - 短期成果と継続性を分ける:
成果が出ているかだけでなく、その成果の出し方がチームの疲弊や沈黙を生んでいないかを確認してください。 - チーム全体の機能として扱う:
リーダー個人だけに責任を寄せず、会議設計、役割分担、相談ルートなど、チームの仕組みとしてPとMを整えましょう。
PM理論は、理想のリーダー像を一つに固定するための理論ではありません。成果を出す力と、チームが協力し続ける力の両方を点検するための枠組みとして使うと理解しやすくなります。
本記事は組織心理・組織行動の一般的な解説です。個別の人事評価、労務対応、ハラスメント対応の判断は、社内規程や専門家の助言も踏まえて検討してください。
