本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
HSS型HSPとは
HSS型HSPとは、繊細さ(HSP)と刺激を求める傾向(HSS)を併せ持つタイプの人を指す心理学の概念です。傷つきやすい一方で、新しい経験やスリルを積極的に求めるという、一見相反する特性が同じ人の中に共存している点に特徴があります。
- HSP(Highly Sensitive Person):
周囲の刺激や他者の感情を深く感じ取りやすい、とても繊細な人。心理学者エレイン・N・アーロン博士が1996年の著書で提唱した概念です。 - HSS(High Sensation Seeking):
新奇性やスリルを積極的に求める傾向。心理学者マーヴィン・ザッカーマン博士が1964年に「感覚刺激希求尺度(Sensation-Seeking Scale)」を開発したことに源流を持つ概念です。
HSS型HSPは、HSPの繊細さとHSSの刺激希求の両方の傾向が強いタイプを指します。アーロン博士自身も著書やサイトのなかで「繊細でありながら刺激も求める人」のタイプに触れており、HSPの中にも一定割合でこのタイプがいるとされています。
- 人と話すのは好きだけど、疲れてしまう
- 新しい刺激を求めるが、すぐに飽きてしまう
- 大胆に行動するが、小さいことを気にして凹んでしまう
- 社交的で外交的に見えるが、内心では自信が持ちにくい
対照的な特性が共存しているため、HSS型HSPの人は自分の気質を自覚しにくかったり、周囲からも理解されにくかったりする傾向があるといわれます。
出典:Aron, E. N. (1996). The Highly Sensitive Person. Broadway Books./Zuckerman, M., et al. (1964). “Development of a sensation-seeking scale”. Journal of Consulting Psychology, 28(6), 477–482./Elaine N. Aron 公式サイト “The Highly Sensitive Person Who Is Also a High Sensation Seeker”(hsperson.com)
HSS型HSPの特徴
HSS型HSPは、繊細な感受性と刺激を求める行動力が同居しているため、次のような特徴を持つと語られることが多いタイプです。
- 自分自身の内的世界を大切にしている
- 新しい刺激や体験を積極的に求めて行動する
- 刺激を求める反面、疲れやすく傷つきやすい
- 外の世界への興味と、内面への気づきを両方持ち合わせる
代表的な2つの特徴について、もう少し詳しく見ていきます。
HSS型HSPの特徴#1
敏感なのに刺激を求めがち
HSS型HSPは、変化や新奇なものを好み、そのための多少のリスクは受け入れる傾向があります。同じ作業を繰り返すことはあまり得意ではなく、目新しい経験や刺激に惹かれやすいタイプです。
一方で、感受性が高いため刺激そのものに圧倒されやすく、求めて飛び込んだはずの環境で疲れ切ってしまうこともあります。周囲の変化や他者の感情にも細やかに気づくため、結果として思慮深い振る舞いをとれる場面も少なくありません。
こうした「求める/疲れる」の振れ幅の大きさが、HSS型HSPの特徴のひとつです。
HSS型HSPの特徴#2
二面性に戸惑いやすい
HSS型HSPは、自分の中にある二面性に戸惑いやすい傾向があります。新しい情報や発見を求めて自分から動く一方で、そのなかで傷ついたり、強く落ち込んだりすることも珍しくありません。
対人場面では比較的落ち着いてふるまえるため、内心の揺れを見せずに人前に出ることもできます。その結果、内面と外面のギャップが大きくなり、周囲との温度差を一人で抱え込んでしまうことがあるといわれます。
外から見た姿と実際の感覚のズレに、自分自身で違和感を覚えやすいのが、HSS型HSPのもう一つの特徴です。
HSS型HSPの具体例
HSS型HSPの二面性は、日常のさまざまな場面で表れます。ここでは、仕事・対人関係・休日(趣味)の3つの場面に分けて、典型的な具体例を紹介します。
具体例#1
仕事でのケース
新規プロジェクトの立ち上げや社内提案に自分から手を挙げる一方で、関係者の表情や口調を細かく読み取りすぎて、会議のあとにどっと疲れてしまう。こうしたパターンはHSS型HSPによく見られる仕事上の例です。
転職や異動にも前向きで新しい環境に飛び込めますが、上司や同僚の何気ない一言を数日引きずることがあります。「自分から刺激を取りに行く行動力(HSS側)」と「その場で受け取った情報量に圧倒される感受性(HSP側)」が同じ一連の仕事のなかで同居している点が、このタイプらしさです。
具体例#2
対人関係でのケース
初対面の人との集まりや大人数の飲み会に参加することは好きで、その場では楽しく話せます。しかし翌日は疲労感が強く、一人で静かに過ごす時間を取らないと気分が回復しない――というのもHSS型HSPによくあるケースです。
会話では臆さず自分の意見を言える反面、相手のそっけない反応や言葉のニュアンスを長く気にしてしまうこともあります。「新しい人に会いたい欲(HSS側)」と「相手の反応を深く処理してしまう感受性(HSP側)」が同じ関係のなかで同時に働いている点が、このタイプらしい特徴です。
具体例#3
休日・趣味でのケース
旅行や休日の過ごし方にも二面性が現れます。国内外の旅先で新しい体験を詰め込んだ弾丸スケジュールを組むのが好きな一方、予期せぬトラブルや人混みに出くわすと一気に消耗して、ホテルでの休息時間が長くなる、というパターンです。
新しい趣味や習い事にもすぐ飛びつく反面、周囲の上達者と自分を比べて落ち込みやすく、数か月で離れてしまうことも珍しくありません。「初めての刺激を取りに行く行動(HSS側)」と「些細な比較や環境刺激に深く反応する感受性(HSP側)」が同じ休日の中で表裏一体になっているのが、HSS型HSPならではの姿です。
非HSS型HSPとの共通点と違い
HSS型であっても、HSPとしての繊細さを持つ点は変わりません。一般的なHSP(非HSS型HSP)とも、次のような共通点があります。
- 物事を深く処理して考える傾向がある
- 音・光・においなど、外部の刺激に敏感
- 細かな違いやニュアンスに気づきやすい
- 感情反応や他者への共感が強く出やすい
- 受け取る情報が多いため、情報処理に疲れやすい
- 映画や文学などの作品に深く感情移入する
このようにHSS型HSPは、HSP特有の繊細さを併せ持っているため、傷つきやすさがある一方で、想像力や共感力の高さといった強みも持ち合わせているといわれます。
違いは「刺激を求めるか否か」
HSS型HSPと、一般的なHSP(非HSS型HSP)との違いは「新たな刺激を求めるかどうか」にあり、行動面では次のような差が見られます。
- 一般的なHSP(非HSS型HSP)
-
- 静かで安定した生活を好みやすい
- 内向的で、好奇心は控えめとされることが多い
- 人との関わりも広げすぎない傾向があるとされる
- HSS型HSP
-
- 変化や刺激のある生活を好みやすい
- 外交的で、好奇心が強いとされる
- 社交的で、人との関わりも広げやすいとされる
こうした傾向から、HSS型HSPの人は自分がHSPに属すると気づきにくかったり、社交的に見える分だけ周囲から繊細さを理解されにくかったりすることがあるといわれます。
なお、HSP/HSSは医学的な診断名ではなく、自己理解のために用いられる気質の枠組みです。自分で当てはまる特性を確認するときは、曖昧な記述を過度に「自分のことだ」と感じてしまうバーナム効果のような認知の偏りにも注意が必要です。
日常生活に支障が出るほど気分の落ち込みや疲労が続く場合は、自己判断で抱え込まず、精神科や心療内科などの専門機関に相談することをおすすめします。
