学習性無力感とは?具体例をわかりやすく解説

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編集 セオリーズ編集部

本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。

学習性無力感とは

学習性無力感とは、逃避や回避ができない状況下で嫌悪刺激(痛みや恐怖、ストレス)を経験し続けることで、状況を変えられる場面でも「何をしても意味がない」と感じ、抵抗や試行をしなくなる現象です。

不快感や不安感から逃げられない環境下で長い間ストレスを経験することで「何をしても意味がない」と感じやすくなり、自発的な努力が起こりにくくなるのです。

学習性無力感は、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンとスティーブン・マイヤーらによる1967年の研究を通じて広く知られるようになった概念です。

学習性無力感の具体例

日常生活における学習性無力感の具体例です。

学業についていけない

学校で授業やテストの内容が理解できず、それによって赤点や補習が続いても「どうせわからないから」と勉強を投げ出すようになってしまう。

仕事で頑張ってもうまくいかない

どんなに仕事を頑張ってもささいなミスで上司に厳しく叱られることから「やる気を出しても意味がない」と手を抜くようになってしまう。

スポーツで練習してもレギュラーに入れない

野球部やサッカー部などの部活で、周りの選手が優秀すぎてどんなに努力をしても追いつけそうにないと、練習をしなくなってしまいます。

社会参加の低下や政治への無力感など、社会現象を説明する一要因として学習性無力感が論じられることもあります。ただし、背景には個人・家庭・学校・職場・社会制度などさまざまな要因が関わるため、学習性無力感だけで説明できるものではありません。

挫折経験のあとに「何をやってもうまくいかない」と感じ、行動が起こりにくくなるケースも、学習性無力感として説明される場合があります。

学習性無力感の実証実験

セリグマンとマイヤーらは、犬を「条件が異なる空間」に分けて電気ショックを与えるという実験を行いました。

まず、それぞれの群の条件は下記の通りです。

  1.  頭でパネルを押すとショックが止まる条件
  2.  反応してもショックを止められない条件
  3.  ショックを受けない統制条件

そして、それぞれの群の犬にショックを与えると、下記のようになりました。

STEP1.ショックを与えたあとの犬の行動
  • パネルを押すとショックが止まる条件の犬
    →パネルを押すとショックが止まることを学習し、ショックが流れるたびにパネルを押すようになる。
  • 反応してもショックを止められない条件の犬
    →次第に回避行動をしなくなり、無抵抗のままショックを受け続けるようになる。

その後、犬たちをシャトルボックスと呼ばれる別の装置に移し、低い障害物を越えればショックを止められる/避けられる条件で逃避行動を確認しました。

STEP2.シャトルボックスに移したあとの犬の行動
  • パネルを押すとショックが止まる条件にいた犬
    →障害物を越えてショックを避ける逃避行動を学習する。
  • 反応してもショックを止められない条件にいた犬
    →障害物を越える試みをほとんど行わず、ショックを受け続けるケースが多くみられた。

このように、ショックを止められない条件を経験した犬の多くは、状況が変わってもショックを避ける行動を学習しにくくなりました。当時は、「何をしても結果が変わらない」という予期が形成され、逃避行動が起こりにくくなると解釈されました。

近年のレビューでは、「制御不能を学習する」というより、「自分の行動で結果を変えられる感覚(制御可能性)」が経験できなかった結果として無気力が生じる、という方向で再解釈されています。

後の研究では、ラットやマウス、人を対象にした類似研究でも、制御できない刺激を経験したあとに逃避行動や課題遂行が低下する例が報告されています。なお、学習性無力感は心理学の現象を表す概念であり、医学的な診断名ではありません。

学習性無力感に陥ることを避けるために【企業管理職向け】

ビジネスシーンでも、従業員が「何をしても評価や結果が変わらない」と感じる状況が続くと、意欲低下や行動量の低下につながる可能性があります。

学習性無力感を避ける関わり方
  1. 部下が自力で達成できる仕事を割り振る
  2. 努力や成果は評価して、成長に期待する
  3. 現実離れした高すぎる目標を押し付けない

学習性無力感を避ける関わり方#1
部下が自力で達成できる仕事を割り振る

部下の職務能力を正しく見極めて、自力で達成することができる仕事を与えることが重要です。十分な研修や指導なしに仕事を投げてはいけません。

本人の経験や能力に対して過度に難しい仕事を支援なしに任せると、修正や失敗が続き、「自分は仕事ができない」と感じて意欲が下がる可能性があります。

学習性無力感を避ける関わり方#2
努力や成果は評価して、成長に期待する

仕事の楽しさだけで意欲を維持できるとは限りません。多くの場合で、上司との信頼関係があり、評価を受け、成長に期待してもらえることでやる気が上がるものです。

部下の努力や成果に対して上司が反応を見せない状況が続くと、部下の意欲が徐々に下がる可能性があるため、注意しましょう。

学習性無力感を避ける関わり方#3
現実離れした高すぎる目標を押し付けない

職場で起こりやすい例として、理不尽に高すぎる目標をチームや部下に押し付けると、目標として機能しにくくなります。心理的な疲弊につながる可能性が高いため避けましょう。

  • どうせ目標達成しないからやる意味ない
  • 評価を下げて、昇格させないためだよね

「高い目標を掲げて本気で向きあって欲しい」という気持ちはわかりますが、給与水準や裁量に見合わない高すぎる理想を従業員に押し付けるのは避けましょう。


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