「発達障害のある人を採用してしまった…」と後悔する気持ちは自然なものです。ただ、障害名だけで状況を説明すると、必要な配慮も公平な評価も粗くなります。
この記事では、人事と現場管理職が、感情論ではなく手順・記録・判断基準で立て直すための初動、仕事やコミュニケーションにおける配慮と向き合い方を解説していきます。
- 解雇は現実的ではない
日本では法的にほぼ解雇ができないと思ってください。まずは業務調整をおこない、今の環境で適応できないかを確かめましょう。 - 起きている事実を確認するべき
ミス・遅延・対人摩擦・体調を、いつ・どこで・何が起きたかを確認し、本人に「どの作業で止まりやすいか」を聞きましょう。 - 現場だけで抱えず、社内外で連携すること
上司一人で判断せず、人事・産業保健・支援機関と役割を分けて対応を検討しましょう。
上記の内容は、発達障害の有無関係なく、現場でワークしない全ての社員に共通して言えることです。「発達障害があるから」と単純化せずに、部下が組織にもたらしている利益と、今後の期待値で公平に評価をしてください。
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
発達障害を採用してしまったと後悔したときにまずやるべきこと
まず、正規雇用で「解雇」は現実的ではありません。もちろん業務遂行能力が著しく低かったり、何ヶ月に渡っても業務怠慢が改善しなければ、懲戒解雇を進めることもできますが、法的措置を取られるとほぼ負けます。
そのため、自己都合で退職してもらうまでは「合理的配慮」をおこないながら、適切にコミュニケーションをとりつつ、問題の火種をなくしくことをお勧めします。
- 「障害だから」ではなく、業務事実に翻訳する
- 本人に「どの作業で止まるか」を聞く
- 現場だけで抱え込まずに、社内外と連携する
採用を後悔したときにまずやるべきこと#1
「障害だから」ではなく、業務事実に翻訳する
朝礼で進捗を聞いても「大丈夫です」としか返らず、締切当日になって手がついていないと分かる——こうした場面で「発達障害だから仕方ない」と片づけると、打つ手が見えなくなります。
まず、起きた出来事を業務の言葉に置き換えます。「報連相が弱い」ではなく「着手の判断で止まり、相談が締切直前になる」と書けば、確認のタイミングを前倒しで決めるという対策につながります。
避けたいのは、本人のいない場で「ああいう人だから」と評価を固定することです。事実ではなく印象が記録に残ると、後の配慮も評価も根拠を失います。
採用を後悔したときにまずやるべきこと#2
本人に「どの作業で止まるか」を聞く
合理的配慮は、本人の希望をすべて受け入れる手続きではありません。働くうえで何に困っているかを聞き、会社の業務要件と照らして調整する作業です。
面談では、漠然と困りごとを尋ねるより、作業の段階を区切って聞くと支障が見えやすくなります。
「何か困っていることはある?」
「どの作業で手が止まりやすい?指示を受けるとき・作業中・報告のとき、どこが一番つらい?」
「困っていますか」だけだと「大丈夫です」で終わりがちです。場面を区切って聞くと、本人も答えやすくなります。一方で、体調や診断の詳細に踏み込みすぎないようにします。聞きたいのは医学的な背景ではなく、業務上の支障だからです。
採用を後悔したときにまずやるべきこと#3
現場だけで抱え込まない
直属の上司ひとりが、配慮・指導・評価・相談対応をすべて抱えると、判断が混ざり、上司自身も疲弊します。「自分のマネジメント力の問題だ」と抱え込むほど、対応は遅れます。
早い段階で人事に状況を共有し、必要に応じて産業医・保健師・就労支援機関にも相談します。誰がどこまで判断するかを最初に決めておくと、現場の負担が偏りません。
その場の口約束で配慮を決めてしまうのは避けます。後で「言った・言わない」になり、本人も会社も不利になります。決めたことは記録に残すのが原則です。
出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供」(2026年5月確認)。
発達障害がある部下への業務上の配慮
会社は、塾でも学校でもないので「管理職がどこまで部下に合わせるべきか」という論点はありますが、まずは下記のような業務上での配慮をしてみてください。
- 短期的に業務内容を調整する
- 指示は簡潔かつ明瞭に言語化する
- 正しく伝わっているかの確認は丁寧に行う
- 依頼は“本人の納得感”を重視する
- マルチタスクは避け、定期的に進捗確認する
発達障害がある部下への業務上の配慮①
短期的に業務内容を調整する
部下の特性を「障害」として機能させないために、適応できる/適応できないを把握して、業務内容を調整してください。これは発達障害に限らず、マネジメントにおいて最重要です。
どんなに努力をしても適応できない仕事を任せてしまうと、管理職側のコスト(コミュニケーションや巻き取り業務)が跳ね上がるだけなので、独自で完遂できる仕事を割り振りましょう。
例えば、身長160cmでは、どんなに努力してもバスケのダンクシュートはできません。どんなに激しい練習をさせても、ジャンプのコツを教えても無意味です。身長が大事なスポーツ全般が向いていないので、別のスポーツをさせるべきです。
発達障害がある部下への業務上の配慮②
指示は簡潔かつ明瞭に言語化する
業務指示は簡潔かつ明瞭に言語化していくようにしましょう。発達障害(特にASD傾向がある)の方の場合、曖昧なコミュニケーションは苦手です。特に、多くの方が、耳から入る情報の処理に弱い傾向にあるので、口頭での説明はほとんど通じていないと思ってください。
場合によっては前提認識部分で大きなズレが生じてしまうので「面倒だから」と言語化を怠らず、テキストベースのコミュニケーションを第一言語にしましょう。
- 納期は分単位で指定
- 「はやめに」「余裕あるときで」は禁止
- 最終のアウトプットイメージを共有
- 具体的な作業手順を整理して伝える
このように、後から読み返せばわかるように言語化しておくことが重要です。
発達障害がある部下への業務上の配慮③
正しく伝わっているかの確認は管理職が行う
部下に初めて依頼する仕事の場合は、「本当に正しく伝わっているのか」の確認を、管理職自らが率先して行ってください。
具体的には、下記ステップで確認しましょう。
- ポイントを箇条書きで整理しておく
- ポイントをなぞりながら口頭で説明する
- その場で、説明した内容を復唱させる
- その場で、試しに一つやらせてみる
- 1時間後に進捗状況を確認する
このように“正しく伝わっているか”の確認は管理職側でやりましょう。特に、初めての仕事では「わからないなら聞きにきて」と当人に委ねてはいけません。
- ここは言わなくてもわかるだろう
- しっかりと伝えたので理解してくれているはず
という思い込みをしてはいけません。
後から“コミュニケーションで齟齬があったこと”が発覚したら、理解度の確認を怠った自身のミスと思って、合わせてみてください。
発達障害がある部下への業務上の配慮④
依頼は“本人の納得感”を重視する
仕事の依頼をするときは「本人が目的や内容に納得しているかどうか」が重要です。
ほとんどの人間はそうですが、発達障害の傾向がある場合だと、より、納得感が集中力に与える影響が大きい傾向にはあるので、意味づけを意識しましょう。
- 何のためにやる仕事か
- なぜ、あなたに任せるのか
- この仕事で、世界はどうよくなるのか
- この仕事で、何を得ることができるか
人が仕事を始める理由の大部分は“お金を得るため”ですが、それだけでモチベーションは続きません。人間は、自分が心から納得する“大義名分”に酔いたいと思う生き物なので、夢を見せてあげてください。
発達障害がある部下への業務上の配慮⑤
マルチタスクは避け、定期的に進捗確認する
そもそも人間は、複数の事柄を同時並行させること(マルチタスク)が苦手で、特に発達障害だとその傾向が強いので、なるべくシングルタスクで目の前のことに集中させてあげましょう。
その上で、毎朝「前日の進捗確認」と「当日の仕事の進め方を相談する」ための時間を設定しておくことをおすすめします。(ちなみに、夕方に設定すると、その時間が気になって仕事の手が止まるので注意です。)
発達障害がある部下との関わり方・スタンス
次は、業務上の配慮だけではなく、関わり方やスタンス面でのポイントを解説していきます。
- 特別扱いをせず公平であり続ける
- 個性を考慮して、活躍できる環境を作る
- 自分の発言と態度を、冷静に客観視する
- 未来に向けた建設的な話をする
- 心理的安全性が保たれた関係性にする
- 一定の距離感を維持して深入りしない
いずれも管理職としての一般論ではありますが、発達障害の傾向があると、実務上の影響が濃く出やすいので、改善を試みる価値はあります。
発達障害がある部下との関わり方・スタンス①
特別扱いせず公平であり続ける
発達障害があろうがなかろうが「理由のない特別扱いはせず、組織として公平であること」が管理職として重要です。特に、なにかしらの障害がある方は「迷惑をかけていて申し訳ない」と自分を卑下しやすいので、フラットに接する意識を持つように心がけてください。
そもそも人間だれしも得意不得意はあるので、発達障害だとしても「特定の脳機能の活用が苦手なだけ」に過ぎません。そのため「発達障害だから△△する」という差別的な単純化をせずに「単に◯◯が苦手だから、△△という対策をする」という考え方が重要です。
発達障害がある部下との関わり方・スタンス②
個性を考慮して、活躍できる環境を作る
また、部下のスキルや性格特性を考慮したうえで、当人が活躍できる環境を用意することも重要です。
特に、発達障害の傾向を自覚している方は、これまでの生きづらさから「何が得意で、何が苦手か」を言語化できていることが多いので、擦り合わせましょう。
- 仕事を通じて得たいもの
- モチベーションに繋がること
- ストレス・課題に感じていること
- 苦手や得意としていること
人的資源の活用という意味では、管理職としての大きなやりがいになるかもしれません。発達傾向は関係なく、全メンバーとすり合わせることをおすすめします。
発達障害がある部下との関わり方・スタンス③
自分の発言と態度を、冷静に客観視する
管理職はときに「感情を殺して部下に向き合うこと」が重要です。部下の自己中心的な発言に、感情的になる気持ちは痛いほどわかりますが、常に冷静に会話しましょう。
日々、上司部下の板挟みや数字目標のストレスで大変かと思いますが、それでもあなたの自己満足で叱ったり、責めたりしてはいけません。なぜなら、あなたのたった数分の接し方次第で、部下の数時間〜数日のパフォーマンスが大きく変わるからです。
発達障害がある部下との関わり方・スタンス④
未来に向けた建設的な話をする
発達障害だろうが関係なく、職場の問題には全て「どうしたらよくなるだろうか」と建設的なスタンスで解決にあたることが重要です。
これまでの行動や失敗を責めたり、叱ったりしても意味がありません。なぜなら、人は皆違う価値観を持っているので、解釈の余地がある争いに、あなたが思う正解を押し付けても、当人は納得できないからです。
- 攻撃(責めること)はしない
- 建設的かつ前向きな意味のある話をする
面接を通過して採用されている以上、一定の知能水準、社会性、適応能力はあるはずなので、言語化して伝えていけば、改善する可能性はあります。
発達障害がある部下との関わり方・スタンス⑤
心理的安全性が保たれた関係性にする
次に、心理的安全性の向上を目的に、定期的に「担当業務の話以外」を中心とした1on1での場を設けることでガス抜き、信頼構築していくことをお勧めします。
発達障害の傾向がある方は、日々の困難からストレスを感じやすく、うつ病や適応障害をはじめとした精神疾患にもなりやすいので、気を配ってください。
- 体調やメンタルの健康確認
- 本人の能力開発やキャリアサポート
- 本人がしたい話(プライベートや不満等)
- 本人が聞きたい話(仕事やあなたのこと)
1on1の注意点
注意点として、本人の負担とならない意識してください。まるで会議のように事前準備をさせたり、実施を定例化して息苦しくしないようにしましょう。
また、信頼構築が目的であり、部下の状況把握・コントロールが目的ではないので、余計な詮索はせず、カジュアルな温度感で接してください。
発達障害がある部下との関わり方・スタンス⑥
一定の距離感を維持して深入りしない
なにかしらの発達障害の傾向があると、他者とのコミュニケーションに癖があるので、業務上必要とされる以上には、距離感を近づけないことをお勧めします。
プライベートと仕事は切り分けて、一定の距離感を維持しましょう。ほんの一部の事例を紹介します。
事例1:衝動的な発言や連絡
ADHDで多動・衝動性の傾向が強い場合、感情のまま吐き出された連絡が頻繁にくるかもしれません。
しかし、突発的なもので、本人にとって大事な連絡は多くはなく、すぐ忘れることが多いので、全てを相手にはせず、重要なことだけ返信するのもおすすめです。
事例2:礼節のない対応、罪悪感の欠如
ASDで自閉傾向が高い場合、主観でしか物事を考えられないので、他者への敬意を払った行動ができず、礼節のない態度を取ることがあります。
感覚としては、ゲームの主人公が、NPCを相手にするように接してくるイメージです。「怒っていそうだから謝る」というコマンドを実行できますが、自分が思うように行動しただけなので、罪悪感はありません。
採用過程や基準を改める
発達障害は関係なく、そもそも組織に合わない人材を採用しないように、採用体制を整えましょう。
- あなたが採用していない場合
前任者から管理職を引き継いだ場合は仕方ありませんが、自分が預かる人材は、自分で責任を持って採用できるようにしてください。 - あなたが採用していた場合
採用基準におけるスキル比重が高いのかもしれません。大抵の仕事は数ヶ月もやれば適応するので「人柄が組織に合うか」の方が重要です。管理職としての採用に慣れていないのであれば、これを機に活かしていきましょう。
そもそも一定の人生経験があれば、相手が自分と合うかや、コミュニケーションや認知に社会性の観点で歪みがないかを見極める精度はあがっているはずです。
ASD・ADHD・LDの特性と職場での配慮
ここからは管理職として知っておきたい発達障害の基本知識について解説していきます。特性名は診断の代わりではなく、職場で起きている支障を理解する補助線として使いましょう。
- ASD:曖昧さと急な変更を減らす
- ADHD:抜け漏れを仕組みで補う
- LD:情報の渡し方を変える
発達障害の種類①
ASD(自閉症スペクトラム障害)
ASDは、暗黙の了解や抽象的な依頼、予定の急な変更が負担になりやすい傾向があります。「適当にいい感じで」といった指示で手が止まるのは、サボりではなく、判断材料が足りないためです。
他にも「自分の主観でしか物事を捉えられない」「空気を読むことができない」「常識が通じない」と言われてしまうことがあります。
- コミュニケーションが苦手
例:曖昧な表現を理解できない、相手の意図の推測が苦手
例:空気が読めない、意図を察することができない - 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
例:何かを決めたら切り替えに時間がかかることがある
例:予定変更や例外対応が負担になりやすく、手順やルールのズレが気になりやすい - 一部の感覚が過敏または鈍麻
例:光(視覚)を強く感じやすい
例:温度(触覚)を強く感じやすい
このように、ASDの方は、曖昧さを汲んで理解することができなかったり(空気が読めない)、さらに“何か”に強いこだわりを持っていたりすることが特徴です。
ASDの特性のある方に必要な合理的配慮
予定や手順を明確にし、変更があるときは理由と次の段取りをセットで伝えます。「空気を読んで」と求めるより、期待する動きを言葉にしたほうが、本人も動けます。
- コミュニケーションが苦手
→明瞭なコミュニケーション
・指示は明瞭に言語化(文章で伝える)
・曖昧な表現はせずに、はっきりと伝える
例1. あれ、これ、といった指示代名詞は使わない
例2. 納期は1分1秒単位で伝え、幅を持たせない - 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
→当人が持つこだわりに合わせること
・一度決めたことを変えず、計画通りに進行させる
・複数のことを同時に頼まない(シングルタスク中心) - 一部の感覚が過敏
→当人の過敏な感覚に配慮する
・席配置の調整(窓際を避ける)/ブラインド角度の調整(視覚)
・耳栓やイヤホンの使用(聴覚)
・冷暖房の温度を一定値に変更(触覚)
上記はあくまで一例ですが、当人が苦手としていることをヒアリングした上で、ストレスなく働くために必要な“合理的配慮”の内容を検討してください。
ASD特性のある方に向いている仕事と向いていない仕事
- 向いていない仕事
- マルチタスクな仕事
- 顧客コミュニケーションがある仕事
- 変化が激しく柔軟な対応が必要な仕事
- ルールやノウハウが体系化されていない仕事
- 向いている仕事
- 一人でコツコツとできる仕事
- ルールやマニュアルが明瞭な職種
- 変化が少なく柔軟性が求められない仕事
ただ、得意不得意は人それぞれなので、全員に該当するわけではありません。当人ができること、興味があることに向き合うのが重要なので、あくまで参考程度にしてください。
発達障害の種類②
ADHD(注意欠陥・多動性障害)
ADHD(注意欠如・多動症)の特性があると、注意の持続や段取りに支障が出て、抜け漏れが起きやすいことがあります。本人の努力不足と捉えるより、仕組みで補うほうが安定します。
ここ数年でよく名前を聞くようになりましたが、職場・上司側がADHDの特徴を理解して適切な距離を保てば、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
特徴は「不注意」「多動-衝動性」の2つです。
- 不注意
例:集中力がなく、気が散りやすい
例:細部への注意が抜けやすい、整理・段取りが苦手、忘れ物・紛失が多い - 多動-衝動性
例:感情コントロールしづらく落ち着きがない、順番待ちが苦手
例:衝動性が強く言い方がきつくなる、割り込む等が起きやすい
このように、集中力が持続しない“不注意”と、感情のブレーキが効かず落ち着きがない“多動-衝動性”の特徴を持つのがADHDです。
ADHD特性のある方に必要な合理的配慮
「不注意」は、注意が散ってしまう要因を減らせば軽減されます。一方で「多動-衝動性」は相手がいることでトラブルに発展するので「一定の距離を保つこと」が重要です。
- 不注意
→仕事に集中できる環境を整える
例1. 机についたて設置して視線を遮る
例2. 耳栓やヘッドホンで外部音を遮断する
→ミスが起きにくい設計(チェックリスト、テンプレなど)
追加で別担当によるダブルチェックを徹底する - 多動-衝動性
→動いてよい時間を設ける等
例1.短い休憩を設ける
例2.立ち歩きOKの運用
→会議はアジェンダを事前共有
発言をルール化し挙手制や順番制にする
→注意やフィードバックは1対1で具体的に伝える
上記はあくまで一例ですが、当人が苦手としていることをヒアリングした上で、ストレスなく働くために必要な“合理的配慮”の内容を検討してください。
ADHD特性のある方に向いている仕事と向いていない仕事
ADHD特性のある方は「変化・裁量・即時フィードバックがある仕事」に向きやすく、「単調・長期集中・細部管理・待機が多い仕事」は消耗しやすい傾向があります。
- 向いていない仕事
- マルチタスクな仕事
- ミスが許されない仕事
- 単純作業を繰り返す仕事
- チームプレイが求められる仕事
- 短期間で成果を確認できない仕事
- 向いている仕事
- 変化がある
- 自分の興味や創造性を追求できる
- やった施策の効果が短期間で実感できる
ただ、「ADHDだからこの仕事がいい」という捉え方は主語が大きすぎるので注意してください。例えるなら「男性だから力仕事が向いている」くらいのものなので、参考程度にとどめましょう。
発達障害の種類③
LD(限局性学習障害)
LD(限局性学習症)は、読む・書く・計算するなど特定の領域に困難が出る状態です。全体の知的発達に遅れがあるわけではないため、情報の渡し方を変えるだけで力を発揮できることがあります。
- 読字障害(ディスレクシア)
文字の“読解”に困難が生じる - 書字障害(ディスグラフィア)
文字を“書くこと”に困難が生じる - 算数障害(ディスカリキュリア)
“計算をすること”に困難が生じる
マニュアルの音声化、図解、口頭説明の併用、計算ツールの利用など、入力と出力の方法を本人に合わせて調整します。「文章での指示が読み取りにくい」なら、図や口頭を組み合わせます。
本人が苦手を申し出やすいよう、ツールの利用を「特例」ではなく通常の選択肢として案内します。隠して苦労させるより、最初から使える状態にしておくほうが効率的です。
出典:厚生労働省「発達障害のある方と共に働く上でのポイントと障害特性」。本章は同ページの職場配慮例を参考にしています。
配慮しても改善しないときの選択肢
配慮しても改善しない場合は、配置転換・改善計画・評価手続きの順に検討しましょう。
配置転換
いまの部署で合わなくても、職務や環境が変わると力を発揮できることがあります。単に楽な仕事へ移すのではなく、得意な作業・苦手な刺激・必要な支援を整理したうえで、配置転換を検討しましょう。
改善計画
改善を求めるときは、期間を区切ります。「全部直す」ではなく、「朝会前に進捗を1行で送る」のように観察できる行動に絞り、1〜2週間単位で見ます。達成できたら次の目標に進みます。
最終段階
退職勧奨や解雇は最終段階の選択肢です。検討する場合も、本人の同意・手続き・記録・就業規則との整合が問われます。
現場の判断だけで進めず、人事・労務担当、必要に応じて専門家と確認してください。自己都合退職へ追い込むような進め方はトラブルの原因になります。
出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」。解雇には客観的合理性と社会通念上の相当性が問われます。
採用プロセスに戻して再発防止する
採用後のミスマッチは、現場対応だけでなく、採用プロセスに戻して防ぐことをおすすめします。次の採用で同じことを繰り返さないために、求人と選考と受け入れの段階を見直しましょう。
- 求人票や面接での再発防止ポイント
職務内容・忙しさ・対人接触の頻度・変更の多さを具体的に伝えます。「未経験歓迎」だけで、実際は急な仕様変更が多い職場だと、入社後にミスマッチが起きます。 - 選考での再発防止ポイント
業務遂行に必要な範囲で配慮事項を確認します。障害名を深掘りするのではなく、「どんな環境だと力を出しやすいか」「苦手な条件は何か」を業務の言葉で聞きます。 - 受け入れ時の再発防止ポイント
受け入れ部署には、本人の同意を得た範囲で配慮事項と相談ルートを共有します。「何かあれば上司へ」で終わらせず、相談先・判断者・記録方法まで決めておくと、現場が迷いません。
よくある質問
最後に、発達障害のある社員の採用後に困ったときの、よくある疑問を整理します。
発達障害があることを理由に配置転換できますか?
障害名だけを理由にするのではなく、職務との不一致・本人の希望・配慮の実施状況を確認したうえで検討します。配置転換は、本人の能力発揮と職場運営の両方を見て判断するのが現実的です。決定の経緯は記録に残します。
本人が配慮を希望しない場合はどうしますか?
希望がない場合でも、業務上の支障があれば、事実確認と通常の業務指導はできます。ただし障害や体調に踏み込みすぎず、「業務で困っていること」から対話を始めます。配慮を押しつけるのではなく、選択肢として示しておく形が現実的です。
現場の負担が大きいときは誰に相談すべきですか?
まず人事に共有し、面談記録・配慮内容・評価方針をそろえます。産業保健スタッフや就労支援機関が関われる場合は、本人の同意を前提に連携します。上司ひとりで抱えないことが、現場を守る前提になります。
