障害者雇用で解雇を考える前に確認すべき合理的配慮と記録

障害者雇用で解雇を検討する前に見る軸は、業務上の事実、合理的配慮の対話、改善機会、労務手続きの4つです。

障害を理由とした差別的な解雇は禁止されており、合理的配慮の検討なしに進めることは避けなければなりません。一方で、業務上の事実と適正な手続きに基づく判断は、一律に禁止されるわけではありません。

この記事では、企業の人事担当者・現場責任者向けに、解雇を考える前の確認順序、記録の残し方、外部相談先を整理します。

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編集 セオリーズ編集部

本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。

障害者雇用で解雇を考える前の基本方針

障害者雇用で解雇を考える前の確認フロー

基本方針は、解雇ありきではなく、職務上の問題と配慮不足の可能性を分けて確認することです。

厚生労働省は、解雇には客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が求められると説明しています。

出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」(2026年5月28日確認)

最初に確認する観点
  • 問題となる行動を、日時、業務、影響で記録しているか
  • 合理的配慮や業務調整を本人と話し合ったか
  • 改善期間、確認項目、面談日を明示しているか
  • 就業規則、契約、届出、解雇予告を労務側で確認したか

この順序を飛ばすと、障害を理由にした扱い、配慮不足、説明不足と受け取られるリスクが高まります。

判断前にそろえる記録

判断前チェック
  • 事実
    業務上の事実と影響を評価語から分ける
  • 配慮
    合理的配慮の検討経緯を残す
  • 改善機会
    期間、基準、支援内容を明確にする
  • 専門確認
    退職勧奨、雇止め、解雇を分けて確認する

記録は、本人を追い込むためではなく、何が起き、会社が何を検討し、どこまで改善したかを確認するために残します。

記録する項目残す内容
業務上の事実日時、頻度、担当業務、周囲や顧客への影響
本人面談困っている工程、本人の説明、配慮希望、共有範囲
会社側の対応指示方法、業務量、勤務条件、相談体制の見直し
改善期間確認期間、評価項目、次回面談日、結果
労務確認就業規則、契約形態、解雇予告、届出要否

記録#1
業務上の事実

「勤務態度が悪い」「仕事ができない」だけでは、確認すべき問題が見えません。

月次処理の締切遅れ、無断欠勤、報告漏れ、規律違反など、観察できる事実へ置き換えます。

事実へ置き換えると、本人へ説明する内容と会社が検討すべき配慮が見えます。日時、業務、影響、会社の対応を同じ形式で残してください。

記録#2
合理的配慮の検討経緯

合理的配慮は、障害のある労働者が能力を発揮するうえで支障となる事情を改善するための調整です。

厚生労働省の合理的配慮指針では、事業主は本人との話し合いを踏まえて措置を検討することが示されています。

出典:厚生労働省「合理的配慮指針」(2026年5月28日確認)

記録#3
改善機会と判断基準

「次は気をつけてください」だけでは、何をどの期間で見るのかが残りません。

確認期間、見る項目、会社が行う配慮、本人に求める行動、次回面談日を一つの記録にまとめます。

改善機会は、本人を追い込むためではなく、基準と支援を明確にするために置きます。期間、見る項目、会社側の配慮、次回面談日をセットにしましょう。

記録#4
配置転換や職務変更の検討

現在の職務継続が難しい場合でも、別職務、業務量、支援者、勤務条件の見直し余地を確認してください。

合理的配慮指針でも、職務継続が難しい場合には、個々の職場状況に応じた他の配慮を検討する必要が示されています。

  • 検討しただけで終わらせず、候補業務、必要な配慮、難しい理由を記録します。個別事情が大きいため、最終判断は専門家にも確認してください。

企業側の対応フロー

対応は、事実整理、本人面談、配慮の見直し、改善期間、労務確認の順で進めます。

進め方の流れ
  • 問題となる事実を、日時、頻度、業務影響で整理する
  • 本人面談で、支障となっている事情と配慮希望を聞く
  • 業務内容、手順、勤務条件、支援体制を見直す
  • 改善期間と確認項目を決め、結果を追記する
  • 解雇に進む前に、人事・労務・外部専門家へ確認する

手順#1
面談前に事実と評価を分ける

面談前に、問題を「いつ、どの業務で、何が起き、どんな影響があったか」に直します。

たとえば「請求処理で3回締切を過ぎ、別担当が再確認した」のように、確認できる形へ落とします。

評価語を残す場合も、根拠となる事実を別に書きます。面談では、何が起きたか、どの業務水準が未達か、会社が何を試すかを分けて伝えましょう。

手順#2
本人面談で支障と希望を聞く

聞き方は、「なぜできないのか」ではなく、「どの工程で止まるか」「何があると進めやすいか」にします。

本人が具体的な措置を申し出にくい場合は、支障となっている事情を一緒に整理しましょう。

面談は通告の場ではなく、支障と配慮を確認する場として設計します。本人の希望、会社が調整できる範囲、難しい範囲を記録してください。

手順#3
配慮と業務水準を同時に決める

配慮は、成果基準をなくすことではありません。働き続けるための調整と、守る業務水準をセットで決めます。

指示を文面に残す、チェックリストを使う、相談時間を固定するなど、会社側の対応も記録します。

配慮だけ、業務水準だけを切り離すと説明が不安定になります。支援内容、維持する基準、見直し日を同じ文書にまとめましょう。

手順#4
改善期間を置いて結果を見る

改善期間は、業務内容に合わせて設定します。短すぎると、配慮の効果を確認しにくくなります。

「2週間で勤怠連絡の有無を見る」「1か月で納期遵守と相談頻度を見る」のように、項目を絞ります。

改善期間中は、会社が行う支援と本人に求める行動を同じ頻度で確認します。結果を見る項目を絞り、次の判断を急がない形にします。

法的・労務上の注意点

注意点は、障害を理由に対象者を選ばないこと、合理的配慮の相談を不利益に扱わないことです。

個別の適否は、就業規則、雇用契約、勤務実態、面談経緯で変わります。実施前に専門家へ確認してください。

注意点#1
障害そのものを理由にしない

障害者雇用促進法では、賃金、配置、教育訓練などで、障害者であることを理由とする差別的取扱いが禁じられています。

解雇検討でも、障害名や雇用枠ではなく、業務上の事実、配慮後の結果、改善状況に基づいて整理しましょう。

出典:厚生労働省「事業主の方へ」(2026年5月28日確認)

注意点#2
合理的配慮の相談を不利益に扱わない

合理的配慮指針では、相談をしたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしない旨の周知が示されています。

面談記録は、不利益に扱うためではなく、支障、配慮、業務水準を確認するための資料として扱います。

  • 相談した事実と、業務上の問題は分けて記録します。本人が相談しやすい状態を保ちつつ、勤怠、成果、改善状況は別の資料として整理してください。

注意点#3
退職勧奨、雇止め、解雇を分ける

退職勧奨、雇止め、解雇は、意味も手続きも異なります。言葉を混ぜると、説明と記録が不安定になります。

本人の自由意思による退職、有期契約の更新判断、会社からの一方的な契約終了は分けて整理しましょう。

  • 用語を混ぜると、本人への説明や社内判断がぶれます。どの手続きに当たるのか、本人の自由意思が保たれているか、専門家へ確認しましょう。

注意点#4
解雇予告と理由証明を確認する

厚生労働省は、解雇には少なくとも30日前の予告が必要で、予告しない場合は解雇予告手当が必要だと説明しています。

また、労働者が解雇理由証明書を請求した場合、会社は証明書を交付する必要があります。

出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」(2026年5月28日確認)

注意点#5
ハローワークへの届出要否を確認する

厚生労働省は、障害者を解雇しようとする事業主は、速やかにハローワークへ届け出る必要があると案内しています。

実際の要否や提出先は、管轄ハローワーク、人事労務担当、社労士などに確認してください。

出典:厚生労働省「事業主の方へ」(2026年5月28日確認)

場面別の確認例

勤怠、業務ミス、職場トラブルでは、問題の見え方が異なります。解雇判断の前に確認する材料も変わります。

具体例#1
勤怠不安定や無断欠勤が続く

「休みが多い」だけでなく、欠勤日、連絡の有無、業務への影響を整理しましょう。

本人面談では、体調変動、通院、連絡手段、始業前の判断の難しさを確認してください。

対応として、連絡先の一本化、連絡時刻の明確化、短時間勤務や休憩の見直しを検討しましょう。

具体例#2
作業ミスが続き、納期に影響している

「能力不足」とまとめず、どの工程で、何件、どの程度の影響が出たかを確認してください。

チェックリスト、作業量、優先順位、ダブルチェック、指示の形式を見直しましょう。

改善期間中は、ミス件数だけでなく、相談の早さや確認手順の実行状況も見ましょう。

具体例#3
職場ルール違反や対人トラブルが続く

安全やハラスメントに関わる場合は、本人への配慮と周囲の安全確保を分けて考えます。

事実確認では、発言内容、日時、相手、周囲への影響、注意後の変化を記録します。

対応として、会議ルールの明確化、相談先の固定、外部支援の同席、配置の見直しを検討しましょう。

支援機関や相談先の使い方

社内だけで判断しきれない場合は、早い段階で外部支援や専門家に相談します。

相談先使う場面
ジョブコーチ職場適応や業務手順の支援を現場で受けたい場合
ハローワーク解雇届、求人、再就職支援、障害者雇用の相談を確認したい場合
総合労働相談コーナー解雇、雇止め、配置転換などの労働問題を相談したい場合
社労士・弁護士就業規則、契約、解雇理由、証明書の妥当性を確認したい場合

本人が利用している支援機関と連携する場合は、本人の同意、共有する情報、相談目的を記録します。

ジョブコーチ支援は、職場適応に課題がある場合に職場へ出向いて専門的支援を行う制度です。

出典:厚生労働省「職場適応援助者支援事業について」(2026年5月28日確認)

  • 解雇を検討する前の注意、勤怠、トラブル対応は、個別テーマでも確認しておくと判断を整理しやすくなります。

よくある質問

障害者雇用では解雇できないのですか?

手続きの要件や個別事情によって異なります。業務上の事実、合理的配慮の検討、改善機会、手続きの妥当性が確認されているかが重要で、障害そのものを理由とした不利益取扱いは禁止されています。

合理的配慮をしても改善しない場合はどうしますか?

配慮内容、本人の反応、改善期間、結果を記録します。そのうえで配置転換や職務変更も検討し、雇用契約上の判断に進む場合は専門家へ確認してください。

退職勧奨として話せば問題ありませんか?

退職勧奨は、本人の自由な意思決定を妨げない形で行う必要があります。事実上の退職強要と受け止められないよう、発言内容、回数、同席者、検討時間を慎重に管理します。

本人へどこまで説明すべきですか?

問題となる事実、会社が求める業務水準、検討した配慮、改善機会、今後の手続きを説明します。感情的な通告ではなく、書面や面談記録を用意してください。

社内だけで判断してよいですか?

解雇、雇止め、退職勧奨は個別事情の影響が大きい領域です。社内記録を整理したうえで、必要に応じて社労士や弁護士などへ確認してください。

まとめ

障害者雇用で解雇を考える前に、会社は解雇の結論ではなく、事実、合理的配慮、改善機会、記録を確認してください。

障害名や雇用枠ではなく、業務上の根拠に基づいて整理し、本人の事情と会社側の配慮を面談で確認してください。

判断が難しい場合は、社内だけで抱え込まず、ハローワーク、総合労働相談コーナー、社労士・弁護士などへ早めに相談しましょう。


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