発達障害のある方の採用では、診断名から向き不向きを決めるのではなく、求人設計、面接、内定後の合意メモ、入社初期面談、特性別の配慮候補、定着支援の6フェーズで整理することが大切です。
「ASDだから事務が向いている」「ADHDだから営業はやめておく」のような診断名ベースの判定は、同じ診断でも困りごとや得意が一人ひとり違うため、採用判断としても配属判断としても適切ではありません。
この記事では、企業の人事担当者・現場責任者向けに、発達障害のある方の採用で押さえたい注意点を、診断名ではなく業務行動・合理的配慮・記録の観点から整理します。
- 求人設計
作業内容・頻度・成果物・環境条件を行動レベルで分解する - 面接
診断名より、業務場面で必要な工夫と配慮の手がかりを聞く - 内定後
実施する配慮、難しい配慮、見直し日を合意メモに残す - 入社初期
初日・1週間後・1か月後の面談予定を先に決める - 特性別配慮
ASD・ADHDなどで決めつけず、本人と業務に合わせて調整する - 定着支援
人事・現場・外部支援の役割を分け、振り返りを記録する
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
求人設計|業務行動と配慮で採用基準を整理する
採用前に揃えるべき前提は、発達障害の種類別マニュアルではなく、「自社の職務要件を業務行動の粒度で分解できているか」「募集から内定後までで差別禁止と合理的配慮の論点を踏まえているか」の2点です。
前提が曖昧なまま募集を出すと、入社後に「業務設計のずれ」と「配慮の認識違い」が同時に表面化します。
- 採用基準は、抽象表現ではなく業務行動レベルに分解する
- 募集・面接段階から、差別禁止と合理的配慮の考え方を踏まえる
- 求人票には、配慮例と相談手順を分けて書く
出典:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害とは」、厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」
求人設計#1
採用基準を業務行動レベルに分解する
「コミュニケーション力が高い人」「主体性のある人」といった抽象表現だけで採用基準を立てると、現場も応募者も判断軸を持てません。
同じ「コミュニケーション」でも、電話一次対応、定例会議でのファシリ、社内チャットでの状況共有、来客時の応接では求められる行動が違うからです。
応募者が「自分に合うか」を判断する材料も曖昧になり、入社後に「想定と違う業務をしている」と互いに感じる原因になります。
- 作業内容
データ入力/請求書チェック/メール一次対応/会議議事録など、実際に行う動作で書く - 頻度
毎日/週1回/月末3日間/繁忙期のみ、と週・月単位の発生間隔まで書く - 成果物
何をどの状態まで仕上げれば「完了」とみなすかを定義する - 環境条件
席の位置/電話量/同時並行する業務/会議出席頻度を明示する
避けたいのは、求人票では曖昧な能力要件だけを書いておき、面接の場で「想定業務を毎回口頭で説明する」運用です。
応募者の事前準備が成立せず、面接記録も残らないため、入社後に「面接で説明した/していない」の食い違いが起きやすくなります。求人票・面接記録・初日業務説明資料は、同じ業務行動リストを土台に作成します。
出典:厚生労働省「事業主の皆様へ 採用選考の具体的な方法」
求人設計#2
募集・面接段階から差別禁止と合理的配慮を意識する
雇用分野では、募集・採用を含む局面で障害を理由にした不利な取扱いが禁止されており、合理的配慮の提供義務も採用後だけでなく応募から選考の過程に及びます。
実務でつまずきやすいのは、「採用後に配慮を考えればよい」と扱ってしまい、面接案内・試験・説明会の段階で配慮相談の窓口が用意されていないケースです。
応募者は「相談していいのか分からない」状態に置かれ、無理して臨んだ結果、本来の力を発揮できないまま不採用になることがあります。
- 応募フォームや案内メールに、面接方法や試験で相談したい配慮を事前に連絡できる旨を書く
- 採用担当の1名を窓口にし、本人同意の範囲で選考担当者にも対応内容を共有する
- 相談例として、面接時間の延長、質問の事前送付、オンライン併用、筆記の代替手段などを示す
- 返答時は「実施できること」「代替案」「難しい理由」を分けて、本人に書面で伝える
避けたい対応は、応募時に提出された配慮希望を「特別扱いはできません」とだけ返すこと、現場の用意ができない配慮を理由なく了承して当日対応できず本人を困らせることです。
返答は「実施できること/代替案/実施が難しい理由」をセットで本人に伝え、合意できた内容を選考担当者間で共有します。
出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」、「事業主のみなさまへ 雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」
求人設計#3
求人票には配慮例と相談手順を書き分ける
求人票に「配慮あり」とだけ書くと、応募者ごとに想像する内容が大きくぶれます。
「席の場所を変えてもらえる」と理解する人もいれば、「業務量を半分にしてもらえる」と理解する人もいるため、応募段階・面接段階で期待値の食い違いが起きやすくなります。
配慮例を出すこと自体は「すべての希望に応える」という約束ではないので、出さないより出したほうが両者の判断を助けます。
- 実施できる配慮の例
業務指示はチャットと口頭の併用/視覚的なマニュアル提供/週次15分の進捗面談 - 相談したうえで決めること
席の位置/会議参加頻度/休憩タイミング/繁忙期業務の範囲 - 相談手順
応募時または面接日の1週間前までに、採用担当(窓口名・連絡先)まで配慮希望をご連絡ください
避けたい書き方は、「すべてご相談ください」とだけ書いて受け皿の人と窓口を決めていないこと、逆に「配慮なし」と断り書きして相談自体を閉じてしまうことです。
前者は連絡があったときに採用担当が抱え込み、後者は法的な配慮義務を踏まえても適切とは言えません。「窓口名・連絡経路・回答するまでの目安日数」を書いておくと、本人も会社側も次に何をすべきか分かります。
面接で何をどう聞くか
面接は、合否判断の場であると同時に、内定後の業務設計と配慮検討に使う情報を得る場でもあります。
診断名や治療内容を詳しく聞くより、「業務場面でどの工夫があれば力を出しやすいか」を引き出すほうが、配慮の合意メモを作るときに役立ちます。
職務との関係・利用目的・共有範囲を伝えてから質問すると、応募者も答えやすくなります。
- 職務場面に紐づけて、必要な工夫や配慮の手がかりを聞く
- 健康情報や診断名は、目的と共有範囲を示したうえで必要最小限にする
- 面接記録は、内定後の配慮設計や現場共有に引き継ぐ
面接#1
職務場面に紐づけて配慮の手がかりを聞く
「困っていることはありますか」だけだと、応募者は「不採用になるかも」という懸念から「特にありません」と答えがちです。
実際に必要な情報は、入社後に任せたい業務の進め方に関係する範囲です。たとえば、集中しやすい環境、指示の受け取り方、複数業務が重なったときの優先順位の付け方などを確認します。
質問の目的を「内定後にどう環境を整えるかを一緒に決めるため」と先に伝えると、回答が具体的になりやすくなります。
- これまで進めやすかった指示の受け方は、口頭・文書・チャットのどれに近いですか?
- 集中しやすい作業環境と、集中しにくい作業環境があれば教えてください
- 複数の依頼が重なったとき、優先順位はどう確認できると進めやすいですか?
- 過去の職場で「これがあって助かった」配慮や工夫があれば伺えますか?
逆に避けたい質問は、「障害について自由に話してください」と丸投げすること、「うちは忙しいですが大丈夫ですか」と圧をかける形で本人に判断を迫ることです。
前者は何を答えればよいか分からず本人が困り、後者は本音の回答を引き出せません。質問はあくまで「業務場面の進め方」に絞り、本人が答えにくければ「無理に答えなくてよい」ことも明示します。
面接#2
健康情報・診断名は目的と共有範囲を示してから聞く
採用選考では、業務遂行に必要な範囲で本人の適性・能力に関係する情報を確認します。一方で、合理的・客観的な必要性がない健康情報や家庭事情を深掘りすることは避けます。
診断名や通院情報に触れる必要がある場合も、職務上の必要性、利用目的、共有範囲を本人に伝えたうえで、必要最小限にとどめることが大切です。
- NG例1:
診断名と通院内容を詳しく教えてください - 聞き換え
内定後に配慮を一緒に設計したいので、業務上で事前に共有しておきたい体調面や通院の予定があれば、共有してよい範囲で教えてください
- NG例2:
薬は飲んでいますか/副作用はありますか - 聞き換え
業務時間中に通院や服薬の時間が必要な場合は、勤務時間や休憩の取り方で相談できます。希望があればお聞かせください
避けたい運用は、面接で得た健康情報を本人同意なく現場全員に共有すること、合否判断と関係しない私生活情報まで質問することです。
聞いた情報は、利用目的(業務設計/配慮検討)、共有範囲(窓口担当・直属上長など本人が同意した範囲)、保管期間・廃棄方法までを本人に伝えたうえで記録します。
出典:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」
面接#3
面接記録を内定後の配慮設計に引き継ぐ
面接で得た情報を、採用担当者個人のメモに閉じ込めたまま内定通知に進むと、現場や直属上長は「採用前に何が話されたのか」を知らないまま受け入れることになります。
結果として、本人は「面接で話したのに伝わっていない」と感じ、現場は「聞いていない配慮を後から求められた」と感じる、というすれ違いが起きます。
面接記録は採用判断後ではなく、内定前後で配慮設計の入力情報として整理し直します。
- 本人が共有してよいと言った範囲(業務上の配慮内容/体調/通院など、項目ごとに同意有無を残す)
- 業務場面ごとの希望と過去の工夫(指示方法・環境・優先順位の付け方など)
- 会社として「実施できる/代替案を出す/難しい」と返した配慮の内容
- 次のアクション(合意メモ作成日、現場共有の対象者、入社初日までの準備項目)
避けたい運用は、診断名や通院情報を「念のため」現場に広く共有すること、本人が話さなかった内容を採用担当者が推測で補って記録することです。
共有は本人同意と業務上の必要範囲に絞り、合意していない情報は推測で補わず、本人と再確認してから記録します。
内定後から入社初期に整える運用
内定後から入社初日までは、面接で得た情報を「初日から使える運用」に置き換える期間です。この期間に曖昧なまま残った論点は、入社後に現場負担として表面化しやすくなります。
配慮内容の書面化、現場共有の範囲、入社初期面談の予定化の3つを先に決めると、初動の混乱を避けられます。
- 合意メモ
実施する配慮、難しい配慮、見直し日を残す - 現場共有
本人同意と業務上必要な範囲に絞る - 初期面談
初日・1週間後・1か月後・3か月後を予定化する
入社準備#1
配慮内容を「合意メモ」にして見直し前提で書く
内定後の合意は、口頭だけだと「言った/聞いていない」のすれ違いが起きやすく、入社後に配慮を見直す根拠も残りません。
一方で、合意メモを「変更不可の契約」のように扱うと、本人も会社も「最初に書いたとおりに頑張る」ことが目的化し、実態と合わない配慮を続けてしまいます。
合意メモは「初日から3か月の出発点」として書き、見直し日とセットで運用します。
- 担当予定業務と、最初の1か月で扱う範囲(量・難度を絞った立ち上げ計画)
- 指示・報告・相談の方法(ツール/頻度/文面と口頭の使い分け)
- 実施する配慮/現時点では難しい配慮/代替案として試すこと
- 見直し面談の時期(初日/1週間後/1か月後/3か月後)と相談先の担当者
- 本人同意のうえで現場に共有する範囲(誰に何を伝えるか)
避けたい書き方は、「配慮:適宜対応」「業務:通常業務全般」のように粒度が粗いままにすること、本人が口頭で同意していない内容を会社側だけで書き起こして渡すことです。
前者は入社後の判断材料にならず、後者は本人が「配慮を求めていない」と書かれた書面に署名する状態になりかねません。書面はドラフトを本人に共有し、修正のうえで両者保管します。
入社準備#2
現場共有は本人同意と業務上必要な範囲に限る
現場共有では、「誰に・何を・どう伝えるか」を本人の同意とセットで決めます。共有すべきなのは、診断名そのものではなく、業務上必要な配慮内容と連絡方法です。
たとえば「口頭指示だけでなくチャットにも残す」「会議資料は前日までに共有する」は、チーム全体の業務ルールとして共有でき、本人だけが特別扱いに見える形を避けられます。
- 直属上長・OJT担当
配慮内容と背景の概要、相談ルート、面談予定(本人同意の範囲) - 同じチーム
業務ルールとしての配慮(指示方法・会議運用・チャット運用など) - 他部署
通常業務に必要な範囲のみ(連絡経路・依頼方法の調整など) - 共有しない情報
診断名/通院内容/家庭事情など、本人が共有同意していない情報
避けたい共有は、朝礼や全体メールで診断名を伝えること、「特別扱いするので注意してください」という言い方で同僚側の警戒を煽ることです。
前者は本人同意なくセンシティブ情報が広がり、後者は同僚との関係性を最初から難しくします。共有は「業務をスムーズに進めるためのチームルールの追加」として淡々と伝えます。
入社準備#3
入社初期の面談を「問題が起きてから」ではなく予定で組む
入社初期は、問題が起きてから面談を組むのではなく、初日・1週間後・1か月後・3か月後のように確認タイミングを先に決めて予定化します。
問題が顕在化してから面談を設定すると、本人は「呼び出された」と感じて構えやすく、現場も「何を伝えるべきか」を整理しないまま臨むことになります。
事前予約された短い面談を重ねるほうが、困りごとを早期に拾え、合意メモの見直しも自然に進みます。
- 指示の受け方に無理がないか(口頭・文書・チャットの比率を再調整するか)
- 作業量・音・席・休憩などの環境負荷が高すぎないか
- 合意メモに書いた配慮が実際に運用できているか/代替案を試す必要があるか
- 相談先(上長・人事・産業保健・外部支援)が使えているか
避けたい運用は、「困ったら言ってください」とだけ伝えて面談を設定しないこと、面談はするが議題も記録もなく雑談で終わらせることです。
本人は「言うほどではない」と感じて困りごとを溜め込み、現場は「何が課題か分からない」まま負荷が積み上がります。面談は短くてよいので、議題(配慮の運用状況・困りごと・次に試すこと)と次回日程を毎回残します。
特性別に配慮の候補を整理する視点
特性別の整理は、配慮の候補を考えるためのチェックリストとして使います。診断名で採否を決めるための分類でも、本人の困りごとを決めつけるための型でもありません。
実際の配慮は、本人の経験・希望、職務内容、職場環境を合わせて調整します。
- ASDのある方
曖昧な指示や急な予定変更で負荷が高くなることがあります。
職場では、作業手順、判断基準、予定変更時の連絡ルールを明示し、感覚刺激が負担になる場合は席・音・照明・休憩場所の調整を検討します。 - ADHDのある方
複数業務の同時進行や割り込みの多い環境で負荷が高くなることがあります。
タスクの優先順位、締切、完了条件を見える化することが、配慮の入口になります。 - 限局性学習症のある方
読む・書く・計算する作業の一部に苦手さが出ることがあります。
文字サイズ、読み上げ、テンプレート、計算補助ツールなどを用意すると、本人の努力だけに頼らず成果物の品質を安定させやすくなります。
上記はあくまで配慮を考えるための候補です。実際には診断名だけで判断せず、本人と話し合いながら、業務側で調整できる点を確認していきます。
- 指示は口頭のみで完結しているか、文書・チャットで残せるか
- 判断基準・完了条件は本人が見える形で渡せているか
- 同時並行業務の優先順位はだれが、いつ伝えているか
- 環境(席・音・照明・休憩)は本人と話し合って調整余地があるか
- 読み書きや計算で負担が出やすい作業について、ツールで補助できる余地はあるか
避けたい使い方は、「ASDだから事務が向いている」「ADHDだから細かい作業は無理」と特性を本質化して職務適性を決めることです。
特性別の整理はあくまで仮説であり、実際の配慮は本人と合意してから運用します。ASD・ADHDそれぞれの面接や配慮設計を詳しく確認したい場合は、以下の記事も参考にしてください。
入社後の定着を支える社内外の支援
採用はゴールではなく、入社後に職務と配慮を調整し続ける入口です。人事・現場・産業保健・外部支援の役割を先に決めておくと、問題が起きたときに現場が孤立しません。
役割分担と外部支援の活用、そして「うまくいかないときに採用条件まで戻って見直す」視点をセットで持ちます。
- 人事・現場・産業保健・外部支援の役割分担を入社前に決める
- ジョブコーチや地域障害者職業センターは、立ち上げ期や見直し時に活用する
- ミスマッチが起きたときは、採用条件まで戻って順に振り返る
定着支援#1
入社前に関係者の役割分担を決めておく
役割分担をしないまま入社を迎えると、現場が善意で抱え込んだ結果、配慮内容も対応のばらつきも記録に残らず、属人化します。
入社前には、現場責任者、OJT担当、人事、産業保健、必要に応じた外部支援について、以下のような役割分担を明確にしておきましょう。
- 現場責任者
日々の業務指示/進捗確認/チーム内調整/日常の困りごと一次対応 - OJT担当
業務手順の伝達/質問への一次回答/週次の振り返り - 人事
合意メモ管理/配慮の労務判断/外部支援機関との接続/面談記録の保管 - 産業保健
体調と業務負荷の両面からの相談先/必要に応じた主治医情報の確認 - 外部支援
ジョブコーチ/地域障害者職業センター/支援機関(必要時に活用)
避けたい状態は、現場任せにして人事は「困ったら呼んで」と待ちの姿勢になること、逆に人事だけで配慮を決めて現場には結論だけ降ろすことです。
前者は現場が抱え込み、後者は現場の運用と乖離した配慮が決まります。役割分担は、入社前の合意メモと一緒に本人にも共有します。
定着支援#2
ジョブコーチや地域障害者職業センターを使う
自社の人事・現場・産業保健だけで配慮の運用が難しい場合、地域障害者職業センターやジョブコーチ支援を相談先にできます。
ジョブコーチ支援は、本人だけでなく事業主や職場の担当者にも支援方法を伝える仕組みです。そのため、入社直後の立ち上げ期、業務変更や配置転換時、配慮の見直しが必要なときなどに使えます。
永続的に頼るものではなく、職場内で支援が続く状態へ移行することを目指します。
- 採用前
職務設計・配慮内容の相談、職場見学・職務分析の依頼 - 入社直後
1〜3か月の立ち上げ期に、業務手順の調整と現場OJTの支援を依頼 - 業務変更時
配置転換・業務量変更などで配慮の組み直しが必要なとき - 定着フェーズ
本人・現場・人事だけで判断が難しい配慮の見直し相談
避けたい使い方は、「現場が手に負えなくなってから丸投げで依頼する」こと、外部支援者を本人にも紹介せず会社内部の判断材料としてだけ使うことです。
前者は本人と現場の関係性が崩れた後の介入になり調整余地が狭く、後者は本人が「自分の知らないところで決まっている」と感じます。利用するときは本人に目的と関わり方を説明し、合意のうえで依頼します。
出典:JEED「事業主の方へ」、JEED「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」
定着支援#3
ミスマッチが起きたら採用条件まで戻って順に見直す
入社後にミスマッチが顕在化した場合は、本人の努力不足や適性だけで整理せず、採用前に決めた条件まで戻って確認します。
求人票、面接説明、合意メモ、現場共有、指示方法、評価基準のどこでずれが起きているかを順に見直すと、会社側で調整できる論点を切り分けやすくなります。
会社側の論点を整理したうえで、本人と次に試す配慮や業務調整を合意します。
- 求人票・面接説明と実際の業務にずれがないか
- 合意メモに書いた配慮が現場で運用できているか
- 指示方法・評価基準が抽象的なままになっていないか
- 上長・人事・産業保健・外部支援などの相談導線が使えているか
避けたい運び方は、ミスマッチをきっかけに「やはり合わなかった」と短期で配置転換や退職方向へ進めること、本人だけに改善計画を求めることです。
判断に迷う場合は、社労士・弁護士など外部の専門家にも確認し、配慮履歴と試行結果を残したうえで段階を踏みましょう。具体的な振り返り手順は、以下の記事でも整理しています。
発達障害のある方の採用でよくある質問
- 発達障害のある方の採用では、診断名を面接で確認すべきですか?
-
診断名を細かく確認するより、業務遂行に必要な配慮や作業上の工夫を確認する方が実務的です。
確認が必要な場合も、利用目的、共有範囲、職務上の必要性を本人に伝えたうえで、必要最小限にとどめます。
- 発達障害のある方の求人票には、配慮例を書いてもよいですか?
-
配慮例を書くこと自体は、すべての希望に応じる約束ではありません。
「実施できる配慮」と「相談して決める配慮」を分けて書くと、応募者と企業の期待値を合わせやすくなります。
- 発達障害のある方の採用で、面接では何を聞くとよいですか?
-
診断名や治療内容を広く聞くより、担当予定の業務場面に沿って確認します。
指示の受け取り方、集中しやすい環境、複数業務が重なったときの優先順位の確認方法などを聞くと、配慮設計に活かしやすくなります。
- 発達障害のある方を採用するとき、現場にはどこまで共有すべきですか?
-
現場に共有する中心は、診断名ではなく、業務上必要な配慮、指示方法、相談ルートです。
本人同意の範囲で、誰に何を伝えるかを決め、通院内容や家庭事情など業務に不要な情報は広げないようにします。
- 発達障害のある方の採用後、定着支援はいつから始めるべきですか?
-
内定後から準備しておくのが理想です。
合意メモ、現場共有、初日・1週間後・1か月後の面談予定を決めておくと、入社後に困りごとや配慮のずれを早めに見直しやすくなります。
まとめ|診断名ではなく業務行動と配慮で採用を進めよう
発達障害のある方の採用は、診断名から向き不向きを決める作業ではありません。自社の職務要件と配慮の接点を、業務行動の粒度で整理することが大切です。
求人設計、面接、内定後の合意メモ、入社初期面談、特性別配慮、定着支援をつなぐと、本人と現場が「次に何をするか」を共有しやすくなります。
採用前に判断しきれない点は、見直し面談で更新できる運用にしておきましょう。必要に応じてジョブコーチや地域障害者職業センター、社労士・弁護士など外部の専門家にも相談しながら、入社後のミスマッチを防ぐ体制を整えることが重要です。
