本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
バックファイア効果とは
バックファイア効果とは、自分の信念や意見に反する情報を提示されたときに、反対意見を聞き入れず、考えをより強固にする傾向、認知バイアスのことです。
もともとバックファイア(backfire)は「裏目に出る」と言う意味の英語ですね。いくつか例をあげてみましょう。
- 政治や宗教的な信念
政策や宗教に対して、科学的に間違いである根拠を提示しても、一部の支持者は全く聞き入れず、むしろより支持を強めることがあります - ワクチンの科学的誤解
とあるワクチンに対して「科学的に安全である」という証拠が提示されてもなお、「危険である」という思想を強める層がいます
このように、自分の信じる事柄にたいして、反論や誤りの指摘があったとしても、素直に聞き入れることはなく、むしろ強く盲信してしまう傾向が、バックファイア効果です。
補足:認知バイアスとは
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって、誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

バックファイア効果とは#
バックファイア効果の起源・由来
「バックファイア効果」は、backfire(内燃機関や銃で”火が逆方向に噴く”現象)になぞらえ、説得や訂正が「狙いと逆の結果」を招くことを指す呼び名です。
初期研究として有名なのが、アメリカのブレンダン・ナイハンとジェイソン・ライフラーが行った2010年の研究です。(Brendan Nyhan & Jason Reifler.2010)
イラクの大量破壊兵器などの誤情報に対し訂正情報を示しても、政治的立場が強い一部の人では「間違いだ」と認めず、むしろ元の信念が強まるケースが報告されました。以後、訂正が逆効果になる現象名として広く定着しました。
バックファイア効果とは#
近年の研究では「例外的な現象」とされる
2019年以降の大規模検証では、バックファイア効果は「よく起きる一般法則」というより例外と整理されています。
アメリカのトーマス・J・ウッドとイーサン・ポーターは、「訂正(ファクト情報)を見せたら、人の誤解はどう動くか」を多数のテーマで横断的に検証しました。(Thomas J. Wood & Ethan Porter.2019)
その結果、平均的には訂正で誤信念が下がり、政治的立場が違っても改善が見られる一方、訂正で逆に誤信念が強まる”バックファイア”は例外的だと結論づけています。
バックファイア効果が起こる仕組み・背景
バックファイア効果は、相手が「間違いを指摘された」事実だけで起きるとは限りません。反発を強める言い方・立場が脅かされる状況・代替説明の欠如など、いくつかの要因が重なったときに発生しやすくなります。
- リアクタンス
自由(選択の余地)を奪われたと感じ、自分を守ろうと反発してしまう - アイデンティティ防衛
「自分の立場や価値観を守る」ことを優先して、正誤よりも自己防衛に走る - 誤情報持続効果
訂正だけで理由が分からないと、誤情報が記憶に残りやすくなる
起こりやすくなる要因#1
リアクタンス
リアクタンス(反発)は、「自由を奪われた」と感じたときに自分を守ろうと反発してしまう心理です。
「それは間違い」「こうすべき」と強く訂正されるほど、相手は支配された気分になり、自律性を取り戻そうとして元の信念をより強く保持しようとします。訂正が「正しい情報」ではなく「自由への侵害」として受け取られるため、逆効果になります。
- 仕事で上司から「その資料、数字が間違ってる。今すぐ直して」と言われる:
指摘が強すぎて反発し、修正より言い訳・反論に意識が向く - 異性から「その考え方おかしいよ。だからモテないんだよ」と言われる:
否定された気持ちが勝ち、歩み寄るより意地になって距離が開く - 周囲に「投資のやり方が間違ってる。黙ってこの銘柄を買って」と言われる:
押し付けに感じ、逆にリスクの高い選択を続けてしまう
起こりやすくなる要因#2
アイデンティティ防衛
アイデンティティ防衛は、「正しいかどうか」よりも「自分の立場や価値観を守る」ことを優先してしまう心理です。
信念やプライドが強いほど、訂正は”人格否定”に感じやすくなります。このとき、誤りを認めると「自分の価値が下がる」と感じるため、反論・無視で信念を守り、むしろそれを正当化する方向に力が働きます。
- 仕事で上司に「そのやり方は古い」ではなく「君は考えが甘い」と人格に触れられる:
有能な自分が否定された感覚になり、改善より自己正当化(言い訳・反論)が先に出る - 恋人に「その意見は違う」ではなく「あなたって結局そういう人だよね」と言われる:
“理解者でありたい自分”が傷つき、内容より”自分を守る反応”が強まる - 周囲に「その投資は危ない」ではなく「そんなのに手を出すなんて無知すぎる」と見下される:
“賢く選べる自分”が崩れるのを避けたくなり、間違いを認めず、むしろ選択を強化しやすい
起こりやすくなる要因#3
誤情報持続効果
誤情報持続効果は、間違いだと訂正されても「じゃあ本当は何が起きたの?」という説明が空白のままだと、脳が元の誤情報を”理由づけ”として使い続けてしまう現象です。
人は空白を嫌います。代替となる説明がなければ、間違いだと知っていても古い情報に頼らざるを得ないため、結果的に誤信念が維持・強化されやすくなります。
- 仕事で上司から「その失注理由は違う」と否定だけされ、代わりの原因が示されない:
結局、最初の思い込み(価格が高いから等)を前提に動いてしまう - 恋人に「もう怒ってないよ」と言われても、既読が遅い理由などの説明がない:
「冷めたのかも」という誤解が残り、確認や詮索を続けてしまう - 「その節約法は効果ない」と訂正されても、代替案を示してもらえない:
最初の情報を信じ続け、同じやり方にこだわってしまう
バックファイア効果の具体例
日常のさまざまな場面で起こりえます。いずれも「訂正されたのに、信念がかえって強まった」という点が共通しています。
- 健康・サプリメント:
「このサプリで体質が変わった」と信じている人に「医学的な根拠がない」とエビデンスを示しても、「自分には効いている。医学が追いついていないだけ」とかえって確信が深まり、周囲にも勧め始める - ネット上の誤情報:
拡散されたデマにファクトチェック記事を見せても、「ファクトチェック機関自体が信用できない。むしろ隠蔽の証拠だ」と解釈し、元の情報への信頼がさらに強まる - 子育て・教育方針:
「厳しいしつけが大事」という親に「逆効果という研究がある」と伝えると、「研究は一般論。この子には自分の方針が合っている」とかえって方針への確信が増し、より強く実践するようになる - 政治・社会的信条:
特定の政策を強く支持する人に反論データを示しても、「そのデータは偏っている」と見なし、元の支持がより固まる。政治的信条が強い文脈ほど起きやすい傾向がある
共通しているのは、「信念を否定すること=自分を否定すること」になっている点です。信念が自己像と結びついているほど、反証は情報として処理されず、防衛の引き金になります。
認知機能(MBTI)でみるバックファイア効果の影響度
認知機能ベースで見ると、Fi(内向的感情)が主機能として判断基準に置かれるタイプは、バックファイア効果に最もかかりやすい傾向にあります。
バックファイア効果とは、自分の信念や価値観に反する情報を提示されると、それを修正するどころか、かえって元の信念を強化してしまう認知バイアスです。このバイアスの中核にあるのは、信念が「正誤判断」ではなく「自己同一性」と結びついていることです。そのため、Fi主機能が判断を主導する場合、このバイアスが構造的に発生しやすくなります。
Fi(内向的感情):信念の自己同一化
- 判断基準が「自分として正しいか」「自分の価値に合うか」に置かれる
- 信念が自己像や価値観と強く結びつきやすい
- 反証が「情報」ではなく「自己否定」として知覚されやすい
- INFP(仲介者)
信念を内的価値として保持するため、否定情報に防衛的反応が生じやすい - ISFP(冒険家)
自分の感じ方を重視する分、外部からの反論を拒否的に処理しやすい
※あくまで判断プロセスの傾向差です。
内的物語による再構成(Ni的補強)
また、Ni(内向的直観)が関与する場合、バックファイア効果が内的ストーリーによって補強されることがあります。
Ni(内向的直観):信念防衛の物語化
- 判断基準が「自分の中で一貫した世界観」に置かれる
- 反証情報を、信念を守るための物語として再解釈しやすい
- 「この反論も想定内」「むしろ正しさの証拠」という転換が起きやすい
特に、Fi主機能タイプが信念・価値・正義性に関わる議題に直面すると、信念の自己同一化(Fi)+物語的再構成(Ni)が同時に働き、バックファイア効果が強化されやすくなります。
バックファイア効果の影響を受けにくいMBTIタイプ
逆に、バックファイア効果にかかりにくいのは、判断基準がTe(外向的思考)やSi(内向的感覚)に固定されているタイプです。
- Te(外向的思考):結果・データ・実証を基準に信念を更新する
- Si(内向的感覚):過去事例や実際の経緯を基に認識を修正する
これらが主機能となっている場合、「自分が正しいか」ではなく「事実としてどうか」「過去に何が起きたか」を優先しやすく、反証による信念修正が起きやすい傾向があります。
- ENTJ(指揮官)※Te主機能
データや成果に基づき判断を更新し、信念への固着が起きにくい - ESTJ(幹部)※Te主機能
反証を運用上の問題として処理し、感情的防衛に移行しにくい - ISTJ(管理者)※Si主機能
過去の実例を根拠に認識を修正し、物語的正当化を行いにくい - ISFJ(擁護者)※Si主機能
実体験や履歴を基準に判断を見直し、信念の過剰防衛を抑えやすい
誤解しやすい点なので補足すると、バックファイア効果は「頑固だから起きる」のではありません。信念が自己の一部として処理された瞬間に発生します。
また、Te/Siタイプでも、信念を評価軸に昇格させるとバックファイア効果は起きます。判断基準が何であれ、「信念を守ること」が目的化した時点で、このバイアスは発生します。
認知バイアスを緩和するポイント
認知バイアスの原因は「経験や直感からくる思い込み」にあるので、対処すれば、一定は軽減できます。※人間である以上、全てを防ぐのは不可能です。
- 認知バイアスへの理解を深める
- 認知バイアス診断で思考の癖を知る
- 批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスを緩和するポイント①
認知バイアスへの理解を深める
まず、認知バイアスの存在を知らなければ、防ぎようがありません。あなたが人間である限り『なにかしらのバイアスが少なからず働いている』という認識を持つところから始めましょう。
例えば、データ分析からアクションを検討する場合においては、下記のポイントを意識して、合理的に読み解く必要があるので、注意をしたいところです。
- 確証バイアス
自身の仮説を支持する都合良い情報ばかり集めていないか - 生存バイアス
サンプリング対象に失敗事例は含まれているか - サンプリングバイアス
サンプル対象が特定の属性に偏っていないか - 錯誤相関
データ同士の相関性から間違えた因果関係を見出していないか
ちなみに「自分は大丈夫」「今回のケースは大丈夫」と思うのであれば、それもバイアスです。(楽観バイアスや正常性バイアスなど)。
認知バイアスを緩和するポイント②
認知バイアス診断で思考の癖を知る
次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。簡易的なものであれば、無料アプリの「ミイダス」で診断可能です。
▼ミイダスで診断してみよう

ミイダスはもともと、転職市場価値を診断できるアプリですが、「バイアス診断ゲーム」をはじめとした心理学系の診断がいくつかあります。数分の診断で結果がわかるので、興味があれば試してみてください。
認知バイアスを緩和するポイント③
批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスに陥るのを防ぐために「なにごとも疑ってかかる」「自分と異なる意見を取り入れる」ことが重要です。 例えば以下のようにですね。
- 何が事実で、何が解釈か
- 別の観点から考えると、解釈は変わるか
- どのような反対意見があるか
このように、さまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくはなります。いわゆるクリティカルシンキング(批判的思考)ですね。
第三者の意見を取り入れるのもおすすめです。利害関係がなく、都合が悪いことも率直に伝えてくれる相手にしましょう。自身と違った境遇・価値観を持つ方であればあるほど、視野が広がります。
