本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
コンコルド効果(別名:サンクコスト効果)とは
コンコルド効果とは、これまで投資してきた「回収できていないコスト」を惜しむあまり、さらなる投資をやめることができない認知バイアスです。
特に有名な例だと、UFOキャッチャーで「あと少しで取れるから!」と、景品が取れるまでやり続けてしまうことですね。他には下記のものがあります。
- 当たるまでパチンコ台から退けない
- 口説きたい女性への貢ぎものを辞められない
- 高額な入会金を払ったので、利用していなくてもサブスクを解約できない
- 新製品の開発に多大な資金を投じたので、ヒットしなくても投資をやめられない
このように、将来の損失を回避するために、すぐ止めるべきだったとしても「ここでやめたら、もったいない!」と、過去の投資を惜しんでやめることができないのです。
別名「コンコルド錯誤」「コンコルドの誤り」「埋没費用効果」「サンクコストの誤謬(ごびゅう)」とも呼ばれ、日常的に陥りやすいことが知られています。
補足:認知バイアスとは
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって、誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

ここでは「コンコルド効果」という名前の由来と、この名前が定着した歴史的背景について説明します。
名前の由来は超音速旅客機「コンコルド」

コンコルド効果という名前は、かつてイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機「コンコルド」の商業的失敗に由来します。
1960年代、世界初の超音速旅客機として期待されたコンコルドでしたが、開発途中で多くの致命的な欠陥が判明しました。調査の結果、開発を継続しても利益は望めないことまでわかりました。
- 開発コストや維持費の高さ
- 燃費の悪さ(当時はオイルショック…)
- あまりにも高すぎる価格
- 収容可能人数の少なさ
- 設備投資の必要(長い滑走路)
しかし、イギリスとフランスは「すでに莫大な費用と時間を投じてしまったから」という理由で、開発を止めることができませんでした。
この「やめるにやめられない」状態を心理学的に表した言葉が、コンコルド効果です。
「サンクコスト効果」との違い
コンコルド効果は「サンクコスト効果」とも呼ばれますが、両者は同じ概念を指します。
「サンクコスト(sunk cost)」とは、日本語で「埋没費用」のことで、すでに支払ってしまって取り戻せないコストのことです。
コンコルド効果もサンクコスト効果も、「取り戻せないコストを理由に、合理的でない選択を続けてしまう心理」を指しています。
コンコルド効果の代表的な研究
ここでは、コンコルド効果の学術的な研究の起源と、現在の行動経済学・心理学における位置づけを紹介します。
アーキーズとブルーマー(1985年)の研究
コンコルド効果(サンクコスト効果)の研究として最も有名なのが、1985年にハル・アーキーズとキャサリン・ブルーマーが行った実験です。
この実験では、演劇のシーズンチケットを「正規料金で購入したグループ」「割引価格で購入したグループ」「無料でもらったグループ」に分け、それぞれの観劇回数を比較しました。
結果として、正規料金で購入したグループが最も多く観劇に足を運びました。
これは「高い金額を払ったから、元を取ろう」という心理が行動に影響したことを示しています。
この研究によって、サンクコストが将来の意思決定に非合理的な影響を与えることが実証されました。
行動経済学との関係
コンコルド効果は、行動経済学の分野でも重要な概念として位置づけられています。
ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提唱した「プロスペクト理論」でも、損失を回避しようとする人間の心理が説明されており、コンコルド効果の根底にあるメカニズムと深く関連しています。
人間は「同じ金額の利益」よりも「同じ金額の損失」を約2倍強く感じると言われており、この損失回避バイアスがコンコルド効果を生み出す主要因の一つです。
コンコルド効果が起きる原因・メカニズム
コンコルド効果が起きる背景には、いくつかの心理的メカニズムがあります。
損失回避バイアス
人間は「何かを得る喜び」よりも「何かを失う痛み」を強く感じます。
すでに投じたコストを「損失」として認識すると、「そのコストを無駄にしたくない」という回避欲求が、合理的な判断を妨げます。
一貫性の保持(認知的不協和の回避)
「ここまで続けてきたのだから、正しいはずだ」という思い込みが働き、方向転換が難しくなります。
過去の判断を「間違いだった」と認めることは、自己イメージへのダメージになるため、無意識に避けようとするのです。
現状維持バイアス
人間には「現状を変えることへの抵抗感」があります。
「やめる」という決断はリスクとして感じられ、「続ける」という現状維持の方が心理的に安心感を与えます。
コンコルド効果の具体例
コンコルド効果は、日常のさまざまな場面で現れます。
日常生活での例
- 面白くない映画でも、チケット代が惜しくて最後まで観続ける
- 合わないと感じているゲームでも、課金したお金が惜しくてやめられない
- 食べきれない量でも、「お金を払ったから」と無理に食べる
仕事・ビジネスでの例
- 成果が出ていないプロジェクトでも、「ここまで投資したから」と撤退できない
- うまくいっていない事業でも、「立ち上げに苦労したから」と続けてしまう
- 明らかに向いていない仕事でも、「資格取得に費やした時間」を惜しんでやめられない
人間関係での例
- うまくいっていない恋愛でも、「これだけ時間と気持ちを注いだから」と別れられない
- 自分を傷つける関係でも、「長年の付き合いだから」と切り出せない
- 合わないと感じているコミュニティでも、「参加費を払ったから」と抜けられない
コンコルド効果の診断チェックリスト
自分がコンコルド効果に陥っているかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。
コンコルド効果 診断チェックリスト
各設問に 「はい=1点/いいえ=0点 」で回答し、合計点を出してください。
- 「ここまでやったのだから」という理由で続けていることがある:
過去の投資(時間・お金・労力)がやめる理由になっていると感じる場合、コンコルド効果が働いている可能性があります。 - やめることへの「もったいない」という感覚が強い:
「今やめたら損」という気持ちが、合理的な判断よりも強く働いていないか確認してみましょう。 - 「もう少し続ければ改善するかも」と根拠なく思い続けている:
具体的な根拠がないまま「もうすぐ好転する」と感じているなら、サンクコストバイアスのサインかもしれません。 - 他者から「やめたほうがいい」と言われても、すんなり受け入れられない:
外部の客観的な意見を受け入れにくい場合、過去の投資への執着が判断を曇らせている可能性があります。 - 「今の状況から抜け出したらゼロになる」という感覚がある:
「やめたら全部無駄になる」という思考は、コンコルド効果の典型的なパターンです。
【判定の目安】
- 0〜1点:現時点ではコンコルド効果の傾向は低い
- 2〜3点:一部の場面でコンコルド効果が出ている可能性あり
- 4〜5点:コンコルド効果に強く影響されている可能性が高い
2点以上の場合は、「過去のコストではなく、未来の可能性」を基準に判断する意識を持つことをおすすめします。
コンコルド効果を克服する方法
コンコルド効果から抜け出すためには、以下のアプローチが有効です。
「ゼロベース思考」で考える
「今まで投資してきたことをいったん忘れて、今日初めてこの状況に立ったとしたら、同じ選択をするか?」と自問してみましょう。
これがゼロベース思考で、過去のコストへの執着を切り離して考えるための有効な方法です。
「やめる基準」を事前に決めておく
プロジェクトや取り組みを始める前に、「この状態になったらやめる」という基準を設定しておきましょう。
感情が入り込む前に設定した基準は、コンコルド効果が起きた際の客観的な判断材料になります。
第三者の意見を取り入れる
自分ではサンクコストに縛られているため、客観的な判断が難しくなっています。
過去の投資経緯を知らない第三者に状況を説明し、意見を求めることで、バイアスのない判断を得やすくなります。
「損失」ではなく「機会」として捉え直す
「やめることで失うもの」ではなく、「やめることで得られる新しい機会」に目を向けましょう。
