保守性バイアスとは?具体例をわかりやすく解説

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編集 セオリーズ編集部

本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。

保守性バイアスとは

保守性バイアスとは、新しい情報や証拠が示されても、これまでの考えや判断を十分に更新できず、既存の信念にとどまりやすくなる認知バイアスです。行動そのものよりも、考え方や評価の修正が遅れる点に特徴があります。

とくに、長年の経験や成功体験によって形成された信念ほど重視されやすく、新しい情報が加わっても判断の修正幅が小さくなりがちです。その結果、状況の変化を正しく反映できないまま意思決定を続けてしまうことがあります。

保守性バイアスの具体例
  • 職場での新技術導入
    画期的な新技術があっても、既存の業務フローや考え方を更新することができず、結果として会社の成長や革新が阻害されることがあります。
  • 医者による患者の病状判断
    既存の診断を行った場合、相反する新たな証拠が出てきても、既存の診断に固執して正当性を検証する、あるいは新たな証拠を無視しやすい可能性があります。
  • AIツールの普及
    chatGPTをはじめとした画期的なツールが開発されても、それらを使わずに既存のやり方に固執するのも、保守性バイアスの一種です。

このように、無意識のうちに認知の更新を妨げる傾向が保守性バイアスです。変化の激しい現代では、定期的に判断を見直す姿勢が重要といえるでしょう。

新しいか古いかという枠組みにとらわれず「良いか悪いか」「正しいか正しくないか」で判断するようにしたいですね。

補足:認知バイアスとは

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって、誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

認知バイアスの具体例

保守性バイアスとは:
現状維持バイアスとの違い

保守性バイアスは、日本語では「現状を変えない傾向」と「新しい情報が出ても考えを十分に更新しない傾向」の2つの意味で使われ、混同されがちです

前者は行動や選択の場面で現れやすく、後者は判断や推論の過程で生じます。どちらも“変化への抵抗”が共通点ですが、何に保守的か(行動か、認知か)が大きな違いです。

現状維持バイアスと保守性バイアスの違い
  • 現状維持バイアス(Status quo bias)
     →意思決定・選択行動の場面で、今の状態や既定の選択肢を過度に選びやすい
    • 新しい制度の方が合理的でも「今のやり方で問題ない」と変更を拒む
    • 携帯プランを見直した方が安くなるのに、面倒でそのままにする
  • 保守性バイアス【信念更新が遅い】(Conservatism in belief revision)
     →予測・評価する場面で、新情報を得ても考えの修正幅が小さい
    • データで否定されても、最初の仮説が正しいと思い続ける
    • 成績が改善しているのに「この人は能力が低い」という評価を変えない

英語圏の保守性バイアス「conservatism bias」は、主に信念更新の遅さを指します。

保守性バイアスとは:
保守性バイアスが起こる仕組み・背景(原因)

保守性バイアスは、人が判断を誤らないよう自分を守ろうとする心理から生じます。新しい情報を受け入れて考えを修正するには、不安や手間、失敗のリスクを伴います。

そのため、「既存の考えや過去の判断にとどまる方が心理的に楽だ」と感じやすく、結果として信念の更新が遅れてしまいます。これは個人の性格だけでなく、環境や組織構造にも影響されます。

保守性バイアスが起こる主な理由
  • 損失回避・不確実性回避(失うのが怖い)
     人は利益を得ることよりも、損失を避けることを強く意識します。そのため、新しい判断に伴う不確実性を過大に見積もり、既存の考えにとどまりやすくなります
  • 学習コスト/切り替えコスト(面倒・失敗が怖い)
     新しい情報を理解し、考え方を修正するには時間や労力が必要です。この心理的・実務的コストを避けようとすることで、判断の更新が遅れます
  • 過去の成功体験・専門性の罠(正しさを守りたくなる)
     これまでの成功や専門知識は自信につながる一方で、「自分の考えは正しいはずだ」という前提を強め、新しい情報を軽視しやすくなります
  • 組織要因(評価制度・前例主義・責任回避)
     組織では失敗の責任を避ける傾向が強く、前例や既存判断を踏襲する方が安全とされやすいため、保守的な判断が強化されます

これらの要因が重なるほど、判断の更新はさらに遅れます。個人だけでなく、組織全体での見直しも重要です。

保守性バイアスとは:
保守性バイアスの起源

保守性バイアスは、アメリカの研究で「考えの更新が遅れること」に注目した研究と、「現状を変えない選択をしやすいこと」に注目した研究という、2つの流れから発展してきました。

いずれも、人が新しい情報や選択肢を前にしても、これまでの判断や状態を簡単には変えられない心理を説明しています。具体的には、以下の研究が代表的です。

代表的な研究
  • 信念更新の保守性に関する研究
     ワード・エドワーズ(米国・1968年)は、「人は新しい情報を得ても、理論上妥当とされる水準ほどには考えを修正せず、既存の信念を重視し続ける傾向がある」ことを示しました。
    これが「保守性(Conservatism)」という概念の出発点です。(Ward Edwards.1968
  • 現状維持バイアスに関する研究
     ウィリアム・サミュエルソン/リチャード・ゼックハウザー(米国・1988年)は、意思決定の場面で「何もしない」「今のままを選ぶ」選択肢が過剰に選ばれることを実験で明らかにしました。
    現代の保守的行動研究の代表例です。(William Samuelson.1988

身近な場面で起きる保守性バイアスの具体例

保守性バイアスは、専門的な判断や重要な意思決定だけでなく、日常のささいな場面でも起こります。新しい情報が得られても、これまでの考えや評価を十分に更新できず、同じ判断を繰り返してしまうのが特徴です。

ここでは、影響が表れやすい3つの身近な場面に分けて具体例を見ていきます。

身近な場面で起きる保守性バイアス
  • 仕事の場面で起きる保守性バイアス
  • 恋愛で起きる保守性バイアス
  • お金・投資の判断で起きる保守性バイアス

身近な場面で起きる保守性バイアスの具体例#1
仕事の場面で起きる保守性バイアス

仕事の場面では、過去の経験やこれまでの成功事例を重視するあまり、新しい情報やデータが示されても判断を十分に更新できないことがあります。

これは、長年積み重ねてきた知識や実績が「正しいはずだ」という前提になりやすく、考え方を修正する心理的コストが高くなるためです。その結果、環境や条件が変わっていても、同じ判断や評価を続けてしまいます。

仕事の場面で起きる保守性バイアスの例
  • 新しい分析データが出ても、最初に立てた仮説を修正せず意思決定する
  • 業績が改善している部下に対し、過去の評価を引きずって低評価のままにする
  • 新ツールの有効性が示されても「従来のやり方の方が安心」と導入を避ける

仕事では「慎重さ」が必要な場面もありますが、定期的に前提や評価を見直さないと、判断のズレに気づきにくくなります。

身近な場面で起きる保守性バイアスの具体例#2
恋愛で起きる保守性バイアス

恋愛の場面では、相手に対して一度抱いた印象や過去の恋愛経験が基準となり、新しい出来事があっても考えを十分に更新できないことがあります。

これは、過去の判断を修正することに不安やエネルギーを伴うためです。その結果、相手の変化や関係性の進展を正しく評価できず、同じ見方を続けてしまいがちです。

恋愛で起きる保守性バイアスの例
  • 初対面で「合わない」と感じ、その後の好意的な行動を評価に反映できない
  • 以前の恋愛で傷ついた経験から、新しい相手にも同じ結果を想定してしまう
  • 相手の態度が変わっても、過去の印象を基準に距離を保ち続ける

恋愛では慎重さが自分を守ることもありますが、過去の印象に縛られすぎると、新たな可能性を見逃す原因にもなります。

身近な場面で起きる保守性バイアスの具体例#3
お金・投資の判断で起きる保守性バイアス

お金や投資の判断では、これまでの経験や最初に得た情報を強く信じ続け、新しいデータが出ても考えを十分に更新できないことがあります。

特に金銭が関わる場面では、判断を誤る不安や後悔を避けたい心理が働き、既存の考えにとどまりやすくなります。その結果、状況が変化していても判断基準を修正できなくなりがちです。

お金・投資の判断で起きる保守性バイアスの例
  • 投資環境が変わっても、最初に立てた見通しを修正せず保有を続ける
  • 新しい有利な選択肢が出ても「これまで通りが安全」と考え見直さない
  • 損失が出ているにもかかわらず、過去の判断を正当化して方針を変えない

慎重な判断は重要ですが、定期的に前提や情報を見直さないと、結果的に損失を広げることもあります。

認知機能(MBTI)でみる保守性バイアスの影響度

認知機能ベースで見ると、Si(内向的感覚)が主機能として判断基準に置かれるタイプは、保守性バイアスに最もかかりやすい傾向にあります。

保守性バイアスとは、新しい情報や環境変化があっても、既存の考え方・判断・行動をなかなか修正できず、従来の前提に固執してしまう認知バイアスです。このバイアスの中核にあるのは、過去に形成された基準を優先し、更新コストを過大に見積もってしまうことです。そのため、Si主機能が判断を主導する場合、このバイアスが構造的に発生しやすくなります。

Si(内向的感覚):前例基準の固定

  • 判断基準が「これまでどうだったか」「前例として成立しているか」に置かれる
  • 過去にうまくいった方法や慣習を安全な基準として保持しやすい
  • 新情報を“例外”として処理し、基準更新を先送りしやすい
Si主機能のMBTIタイプ
  • ISTJ(管理者)
    前例や実績を重視するため、判断基準の更新に慎重になりやすい
  • ISFJ(擁護者)
    安定した運用や既存手順を優先し、新しい選択肢の採用を後回しにしやすい

※あくまで判断プロセスの傾向差です。

正当化による固定化(Te的補強)

また、Te(外向的思考)が関与する場合、保守性バイアスが合理性の名目で補強されることがあります。

Te(外向的思考):運用合理性の防波堤

  • 判断基準が「現行ルールで回っているか」「成果は出ているか」に置かれる
  • 変更による不確実性より、現行制度の安定性を優先しやすい
  • 「問題なく機能している=変える必要はない」という結論に至りやすい

特に、Si主機能タイプが制度運用・評価・管理を担う立場に置かれると、前例基準(Si)+運用合理性(Te)が同時に働き、保守性バイアスが強化されやすくなります。

保守性バイアスの影響を受けにくいMBTIタイプ

逆に、保守性バイアスにかかりにくいのは、判断基準がNe(外向的直観)やTi(内向的思考)に固定されているタイプです。

  • Ne(外向的直観):新しい可能性や代替案を前提に思考する
  • Ti(内向的思考):既存前提を分解し、再定義できる

これらが主機能となっている場合、「今までどうだったか」よりも「他にどんな選択肢があるか」「前提は妥当か」を問い直しやすく、保守性バイアスに陥りにくい傾向があります。

Ne/Ti主機能のMBTIタイプ
  • ENFP(広報運動家)※Ne主機能
    既存の枠組みに疑問を持ちやすく、新しい選択肢を検討しやすい
  • ENTP(討論者)※Ne主機能
    前提条件を揺さぶり、別解を探索することに抵抗が少ない
  • INTP(論理学者)※Ti主機能
    既存ルールや慣習を構造的に分解し、必要なら再設計しやすい
  • ISTP(巨匠)※Ti主機能
    運用の非合理を冷静に切り出し、変更判断を行いやすい

誤解しやすい点なので補足すると、保守性バイアスは「変化が嫌いだから起きる」のではありません。過去基準を安全装置として優先してしまう判断構造によって発生します

また、Ne/Tiタイプでも、変更コストや実装条件を軽視すると別のバイアスに陥ります。判断基準が何であれ、「前提更新を意図的に止めた瞬間」に、このバイアスは発生します。

保守性バイアスの影響度診断

保守性バイアスは、自分では気づきにくいまま判断や評価に影響を与えます。新しい情報があっても考えを更新できているつもりでも、無意識のうちに過去の判断に引きずられていることも少なくありません

まずは簡単なチェックで、あなたがどの程度保守性バイアスの影響を受けているか確認してみましょう。

保守性バイアスの影響度診断(10問)

次の質問に 「はい=1点」「いいえ=0点」 で答えてください。

  • 新しいデータが出ても、最初の判断を変える必要性をあまり感じない
  • 一度立てた仮説や考えは、多少の反証があっても正しいと思い続ける
  • 過去にうまくいった方法は、環境が変わっても有効だと考えがちだ
  • 新しい選択肢より、慣れた判断基準の方が安心できる
  • 判断を修正するよりも、今の考えを補強する情報を探してしまう
  • これまでの経験や直感を、最新の情報より重視することが多い
  • 評価や見通しを見直すのは「間違いを認めること」だと感じやすい
  • 周囲の意見が変わっても、自分の考えは変えにくい
  • 新しい情報が出ても「状況は本質的には変わっていない」と考える
  • 後から見て判断が外れても、当時の考え方は妥当だったと思うことが多い
判定の目安
  • 0~3点|影響は小さい
    新しい情報を比較的柔軟に取り入れ、判断を更新できている状態です
  • 4~6点|注意
    無意識のうちに過去の考えに引っ張られやすい傾向があります。定期的な見直しを意識しましょう
  • 7点以上|要注意
    保守性バイアスの影響が強く、判断の更新が遅れやすい状態です。意識的に反証や別視点を取り入れる工夫が必要です

診断結果はあくまで目安です。点数が高くても問題ではなく、気づくことが第一歩になります。結果を参考に、自分の判断基準や前提を見直すきっかけにしてみてください。

認知バイアスを緩和するポイント

認知バイアスの原因は「経験や直感からくる思い込み」にあるので、対処すれば、一定は軽減できます。※人間である以上、全てを防ぐのは不可能です。

認知バイアスを緩和するポイント
  • 認知バイアスへの理解を深める
  • 認知バイアス診断で思考の癖を知る
  • 批判的に考え、第三者の意見を取り入れる

認知バイアスを緩和するポイント①
認知バイアスへの理解を深める

まず、認知バイアスの存在を知らなければ、防ぎようがありません。あなたが人間である限り『なにかしらのバイアスが少なからず働いている』という認識を持つところから始めましょう。

例えば、データ分析からアクションを検討する場合においては、下記のポイントを意識して、合理的に読み解く必要があるので、注意をしたいところです。

  • 確証バイアス
    自身の仮説を支持する都合良い情報ばかり集めていないか
  • 生存バイアス
    サンプリング対象に失敗事例は含まれているか
  • サンプリングバイアス
    サンプル対象が特定の属性に偏っていないか
  • 錯誤相関
    データ同士の相関性から間違えた因果関係を見出していないか

ちなみに「自分は大丈夫」「今回のケースは大丈夫」と思うのであれば、それもバイアスです。(楽観バイアスや正常性バイアスなど)。

ソクラテスの哲学「無知の知」にあるように、理解したつもりにならず、謙虚に向き合い、今後の学びに繋げていきましょう。

認知バイアスを緩和するポイント②
認知バイアス診断で思考の癖を知る

次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。簡易的なものであれば、無料アプリの「ミイダス」で診断可能です。

▼ミイダスで診断してみよう

引用:バイアス診断ゲーム(ミイダス)

ミイダスはもともと、転職市場価値を診断できるアプリですが、「バイアス診断ゲーム」をはじめとした心理学系の診断がいくつかあります。数分の診断で結果がわかるので、興味があれば試してみてください。

認知バイアスを緩和するポイント③
批判的に考え、第三者の意見を取り入れる

認知バイアスに陥るのを防ぐために「なにごとも疑ってかかる」「自分と異なる意見を取り入れる」ことが重要です。 例えば以下のようにですね。

  • 何が事実で、何が解釈か
  • 別の観点から考えると、解釈は変わるか
  • どのような反対意見があるか

このように、さまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくはなります。いわゆるクリティカルシンキング(批判的思考)ですね。

第三者の意見を取り入れるのもおすすめです。利害関係がなく、都合が悪いことも率直に伝えてくれる相手にしましょう。自身と違った境遇・価値観を持つ方であればあるほど、視野が広がります。


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