本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
自己中心性バイアスとは
自己中心性バイアスとは、自分自身を中心に物事を考える傾向、認知バイアスです。自分目線の感情・信念を過大評価して、他人の視点や経験を理解する際にそれらを過小評価することがあります。
つまり「自分目線でばかり物事を考えてしまう」という傾向ですね。状況によっては、価値観の押し付けに発展することがあるかもしれません。
- 自分の気持ちが、他人に伝わっていると思い込む
- 自分がもらって嬉しいものを、他人も同様に嬉しいと思い込む
- 自分と同じ悩みや挫折経験を、他人も同様に経験したことがあると思い込む
- ビジネスやゲームなどで、自身が見えている状況が他人にも見えていると思い込む
このように、自分がよくわかっていることや感じていることを過大評価して、他人も同様にわかっている感じていると思い込むのが、自己中心性バイアスです。
補足:認知バイアスとは
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって、誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

自己中心性バイアスとは:
自己中心性バイアスの起源
自己中心性バイアスは、発達心理学と社会心理学の両面から研究されてきました。それぞれの視点から、その起源を見ていきます。
発達心理学における自己中心性バイアスの起源
発達心理学における自己中心性バイアスの起源は、スイスの発達心理学者ジャン・ピアジェの研究にあります。
「幼児は他者の視点を想像する力が未熟で、自分の見方を基準に世界を理解しやすい」とされました。「三山課題」などの研究を通じて、自己中心的な認知は発達段階で自然に生じる特性と考えられています。
補足:三山課題とは
三山課題は、発達心理学者ジャン・ピアジェが考案した実験で、子どもの自己中心性を調べるために用いられました。(Piaget, J., & Inhelder, B. 1956)
山の模型を前に座った子どもに、別の位置から見た景色を選ばせることで、他者の視点を想像できるかを確認します。幼児は自分から見える景色を選びやすく、他者視点の理解が難しいことが示されました。
この結果から、自己中心的な認知は発達段階で自然に生じる特性と考えられています。
社会心理学における自己中心性バイアスの起源
社会心理学では、大人でも判断や記憶の際に自分の知識や感情を基準にしてしまう傾向が確認されました。
この認知の偏りにより、他者の理解度や自分の影響力を過大評価しやすくなります。こうした現象が整理され、自己中心性バイアスとして研究が進められてきました。
身近に起こる自己中心性バイアスの具体例
自己中心性バイアスは、特別な場面だけでなく、日常生活や仕事、教育の現場など身近なシーンで起こります。自分では気づきにくいため、具体例を知ることが理解への近道です。
ここでは代表的な場面を分けて見ていきます。
- 日常生活での自己中心性バイアス
- ビジネスでの自己中心性バイアス
- 教育・子育てでの自己中心性バイアス
身近に起こる自己中心性バイアス#1
日常生活での自己中心性バイアス
自己中心性バイアスは、日常生活の中で無意識に起こりやすい認知の偏りです。人は物事を判断する際、自分の考えや感情、置かれている状況を基準にしやすく、他人も同じように感じていると思い込みがちになります。
とくに身近な人間関係では、相手の立場を深く考えずに解釈してしまい、誤解やすれ違いを生む原因になりやすい点が特徴です。
- 自分は分かっている話だから、相手も理解しているはずだと思い込む
- 既読がつかないのは、相手が自分を避けているからだと判断する
- 自分が不機嫌だと、周囲も同じ気分だと感じてしまう
- 説明不足でも「言わなくても察してくれる」と考えてしまう
身近に起こる自己中心性バイアス#2
ビジネスでの自己中心性バイアス
ビジネスの場面でも、自己中心性バイアスは意思決定や評価に影響を与えます。仕事では自分の経験や知識を基準に判断する機会が多く、相手も同じ前提で理解していると考えてしまいがちです。
その結果、説明不足や認識のズレが生じ、業務の停滞や人間関係の摩擦につながることがあります。とくに忙しい状況ほど、自分視点に偏りやすい点が特徴です。
- 自分は理解している業務内容だから、説明は不要だと判断する
- 会議で自分の意見が正しい前提で話を進めてしまう
- 成果は自分の努力、失敗は外部要因だと捉えやすい
- 相手の反応を深く確認せず、伝わっていると思い込む
身近に起こる自己中心性バイアス#3
教育・子育てでの自己中心性バイアス
教育や子育ての場面では、大人と子どもの認知や理解度の差から、自己中心性バイアスが生じやすくなります。
大人は「自分には当たり前に分かること」を基準に考えてしまい、子どもも同じように理解できていると無意識に期待しがちです。結果、説明不足や一方的な指導になり、子どもが戸惑いや不安を感じる原因になることがあります。
- 一度教えた内容だから、子どもは覚えているはずだと考える
- 子どもができない理由を理解不足ではなく怠慢と捉える
- 自分の価値観や経験を基準に進路や行動を決めてしまう
- 子どもの視点や感じ方を十分に確認しないまま指導する
認知機能(MBTI)でみる自己中心性バイアスの影響度
認知機能ベースで見ると、Fi(内向的感情)が主機能として判断基準に置かれるタイプは、自己中心性バイアスに最もかかりやすい傾向にあります。
自己中心性バイアスの中核にあるのは、自分の内的基準を起点に世界を理解してしまうことです。そのため、Fi主機能が判断を主導する場合、このバイアスが構造的に発生しやすくなります。
Fi(内向的感情):自己基準の固定
- 判断基準が「自分はどう感じるか」「自分にとってどうか」に置かれる
- 他者の状況よりも、自分の納得感や価値判断を優先しやすい
- 自分の視点が基準点となり、他者視点への切り替えが遅れやすい
- INFP(仲介者)
内的価値観を強く基準にするため、自分の感じ方を前提に他者を理解しやすい - ISFP(冒険家)
自分の感覚や好悪を起点に判断し、他者の背景事情を後回しにしやすい
※あくまで判断プロセスの傾向差です。
内面モデルによる補正(Ni的補強)
また、Ni(内向的直観)が関与する場合、自己中心性バイアスが内的モデルによって補強されることがあります。
Ni(内向的直観):視点の内閉化
- 判断基準が「自分の中で整合した世界観」に置かれる
- 他者の行動や意図を、自分の内的モデルで説明しやすい
- 実際の他者視点との差分を検証せずに理解した気になりやすい
特に、Fi主機能タイプが状況理解や動機推測を求められる場面では、自己基準(Fi)+内面モデル(Ni)が同時に働き、自己中心性バイアスが強化されやすくなります。
自己中心性バイアスの影響を受けにくいMBTIタイプ
逆に、自己中心性バイアスにかかりにくいのは、判断基準がFe(外向的感情)やTi(内向的思考)に固定されているタイプです。
- Fe(外向的感情):他者の感情や反応を基準に調整する
- Ti(内向的思考):自他の前提や立場を論理的に切り分ける
これらが主機能となっている場合、「自分はどう感じたか」と「相手はどういう立場か」を分離して捉えやすく、自己中心的な解釈に陥りにくい傾向があります。
- ENFJ(主人公)※Fe主機能
相手の感情や立場を基準に判断し、自分視点を相対化しやすい - ESFJ(領事)※Fe主機能
場の反応や他者の受け取り方を重視し、自己基準を押し出しにくい - INTP(論理学者)※Ti主機能
自他の前提差を意識的に切り分け、主観の一般化を行いにくい - ISTP(巨匠)※Ti主機能
状況を客観構造として捉え、自分の感じ方を判断に混ぜにくい
誤解しやすい点なので補足すると、自己中心性バイアスは「わがままだから起きる」のではありません。視点の初期位置が自分側に固定されたまま判断が進む構造によって発生します。
また、Fe/Tiタイプでも、他者視点の確認を省略すると自己中心性バイアスは起きます。判断基準が何であれ、「自分視点を基準点にしたまま処理した瞬間」に、このバイアスは発生します。
自己中心性バイアスに陥りやすい人度チェック
自己中心性バイアスは、自分ではなかなか気づきにくい心理のクセです。日常や仕事での考え方や行動を振り返ることで、傾向を把握することができます。
まずは簡単なチェックを通して、自分がどの程度このバイアスに陥りやすいか確認してみましょう。
次の質問に 「はい=1点」「いいえ=0点」 で答えてください。
- 自分が分かっていることは、相手も理解していると思うことが多い
- 説明が足りなかったかもしれないと後から気づくことがある
- 相手の反応が薄いと「興味がない」と判断しがち
- 自分の意見は客観的で正しいと思うことが多い
- 忙しいと、相手の立場を考える余裕がなくなる
- 「言わなくても察してほしい」と感じることがある
- 自分の気分が、周囲の雰囲気にも影響していると感じやすい
- 相手の理解度を確認せず話を進めてしまうことがある
- 他人も自分と同じ価値観を持っていると思いがち
- 自分の行動は、周囲に強く印象づけられていると感じることがある
- 0~3点|問題なし
他者の視点を意識できており、自己中心性バイアスの影響は比較的少ない状態です - 4~6点|注意
状況によって自己視点に偏りやすい傾向があります。確認や言い換えを意識すると改善しやすくなります - 7点以上|要注意
自己中心性バイアスに陥りやすい状態です。誤解やすれ違いを防ぐため、意識的に他者の立場を考える工夫が必要です
認知バイアスを緩和するポイント
認知バイアスの原因は「経験や直感からくる思い込み」にあるので、対処すれば、一定は軽減できます。※人間である以上、全てを防ぐのは不可能です。
- 認知バイアスへの理解を深める
- 認知バイアス診断で思考の癖を知る
- 批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスを緩和するポイント①
認知バイアスへの理解を深める
まず、認知バイアスの存在を知らなければ、防ぎようがありません。あなたが人間である限り『なにかしらのバイアスが少なからず働いている』という認識を持つところから始めましょう。
例えば、データ分析からアクションを検討する場合においては、下記のポイントを意識して、合理的に読み解く必要があるので、注意をしたいところです。
- 確証バイアス
自身の仮説を支持する都合良い情報ばかり集めていないか - 生存バイアス
サンプリング対象に失敗事例は含まれているか - サンプリングバイアス
サンプル対象が特定の属性に偏っていないか - 錯誤相関
データ同士の相関性から間違えた因果関係を見出していないか
ちなみに「自分は大丈夫」「今回のケースは大丈夫」と思うのであれば、それもバイアスです。(楽観バイアスや正常性バイアスなど)。
認知バイアスを緩和するポイント②
認知バイアス診断で思考の癖を知る
次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。簡易的なものであれば、無料アプリの「ミイダス」で診断可能です。
▼ミイダスで診断してみよう

ミイダスはもともと、転職市場価値を診断できるアプリですが、「バイアス診断ゲーム」をはじめとした心理学系の診断がいくつかあります。数分の診断で結果がわかるので、興味があれば試してみてください。
認知バイアスを緩和するポイント③
批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスに陥るのを防ぐために「なにごとも疑ってかかる」「自分と異なる意見を取り入れる」ことが重要です。 例えば以下のようにですね。
- 何が事実で、何が解釈か
- 別の観点から考えると、解釈は変わるか
- どのような反対意見があるか
このように、さまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくはなります。いわゆるクリティカルシンキング(批判的思考)ですね。
第三者の意見を取り入れるのもおすすめです。利害関係がなく、都合が悪いことも率直に伝えてくれる相手にしましょう。自身と違った境遇・価値観を持つ方であればあるほど、視野が広がります。
