スキーマ理論(Schema Theory)とは|記憶と知識の枠組みをわかりやすく解説

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編集 セオリーズ編集部

本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。

スキーマ理論とは

スキーマ(Schema)とは、過去の経験や知識から作られる「頭の中のテンプレート」のようなものです。人は新しい情報に触れたとき、そのテンプレートに当てはめながら、物事を理解したり記憶したりしています。

たとえば、「レストラン」と聞くと、席に案内される、メニューを見る、注文する、食事をする、会計する、といった流れを自然に思い浮かべる人も多いでしょう。こうした経験にもとづく知識の枠組みが、スキーマの一例です。

スキーマの概念はジャン・ピアジェ(Jean Piaget)の発達理論にも登場しますが、記憶研究ではフレデリック・バートレット(Frederic Bartlett)の研究が古典として知られています。

スキーマの3つのポイント
  • 過去の経験から形成される知識の枠組み・ひな型
  • 新しい情報の理解を助けるが、スキーマに合わない情報は歪曲・省略される場合がある
  • 記憶の「再構成」に関わり、記憶の歪みや誤情報効果の背景の一部になることもある

スキーマのメカニズム

スキーマは情報処理の各段階で機能します。

バートレットの「幽霊の戦争」実験(1932年)では、英国人被験者に民話を繰り返し想起させたところ、文化的スキーマに合わない部分が省略・歪曲されやすいことが示されました。(出典:Bartlett, F. C. (1932)

この結果は、記憶が「録画」でなく「再話」であることを示した古典的研究として参照されてきました。

スキーマが働く3つのしくみ
  • 情報の整理
    新しい情報を既存の枠組みで整理する
  • 理解の促進
    不足した情報を推測して意味を補う
  • 記憶の再構成
    思い出すときに記憶が変わることがある

メカニズム#1
同化(Assimilation)と調節(Accommodation)

ピアジェの発達理論では、新しい情報を既存のスキーマに当てはめることを同化(Assimilation)、既存のスキーマを修正・拡張することを調節(Accommodation)と呼びます。

スキーマに合う情報は同化によって素早く処理されます。合わない情報に出会ったときには調節が起きてスキーマが更新されることがあると説明されます。

たとえば、犬を「ワンワン」と覚えた子どもが、猫も「ワンワン」と呼ぶのは同化です。その後、犬と猫は違う動物だと学ぶと、スキーマが修正されて調節が起こります。

メカニズム#2
スキーマによる理解の促進

「レストランに入った」という文を読むだけで、多くの人はメニューを見る・注文する・食事する・会計するという一連の流れ(スクリプト)を自動的に補完します。

スキーマは明示されていない情報を補う「推論」を可能にすることで理解を助けます。

メカニズム#3
スキーマによる記憶の歪み

スキーマは理解を助ける反面、スキーマに合わない情報を「歪曲」したり「省略」したりして記憶を変形させることもあります。

「スキーマ一致情報」は思い出しやすいが、記憶の再構成時に細部が改変されることがあるのです。

スキーマの具体例

スキーマは、人の印象形成や文章理解、記憶の再構成など、日常のさまざまな場面で働いています。ここでは代表的な具体例を見ていきましょう。

<身近なスキーマの例>

  • レストランのスキーマ
    注文、食事、会計の流れを予測する
  • 職業のスキーマ
    職業名から役割や特徴を思い浮かべる
  • 文章理解のスキーマ
    テーマから意味を補って読む
スキーマの具体例
  • 初対面の人の「典型像」
    職業や属性から人物像を補う
  • 外国語の文章理解
    背景知識で不足情報を補う
  • 事件目撃証言の歪み
    質問表現が記憶報告に影響する

具体例#1
初対面の人の「典型像」

「医師」と聞いた瞬間に、白衣・聴診器・真面目そうな雰囲気といったイメージが浮かぶのはスキーマの働きです。

職業スキーマが自動的に活性化され、明示されていない特徴まで補完されるため、実際の人物と異なる印象を持つこともあります。

ただし、職業や属性から相手を決めつけると、ステレオタイプや偏見につながることもあります。

具体例#2
外国語の文章理解

単語が少しわからなくても文章全体のテーマを理解できるのは、背景知識スキーマが不足した情報を補ってくれるからです。「スポーツの試合結果の文章」とわかれば、スポーツスキーマが推測を助けます。

逆に馴染みのないテーマはスキーマがないため、内容の理解が難しくなります。

具体例#3
事件目撃証言の歪み

交通事故の映像を見た参加者に、「車が激突したとき」「車が接触したとき」のように異なる表現で速度を質問すると、速度の推定値が変わることが報告されています。(出典:Loftus, E. F., & Palmer, J. C. (1974)

これはスキーマ理論そのものを検証した実験ではありませんが、質問文や事後情報によって出来事の解釈や記憶報告が影響を受ける例として、記憶の再構成を考えるうえでよく参照されます。

スキーマ理論と関連する概念

スキーマは、記憶の再構成や誤った記憶、文章理解などにも関わります。関連する心理学用語をあわせて見ていきましょう。

関連する心理学用語
  • 虚偽記憶(False Memory):
    記憶の再構成が誤った記憶を生む現象で、スキーマとも関連する
  • 誤情報効果:
    事後情報が記憶報告や記憶内容に影響する現象。スキーマがその解釈に関わる場合がある
  • 記憶の再構成:
    記憶がスキーマに基づいて能動的に再構成されるという考え方
  • 処理水準理論:
    意味的・精緻な処理が記憶を助けるという点で、スキーマによる理解と関連づけて考えられることがある

スキーマ理論を活かす方法

スキーマは、学習や文章理解だけでなく、偏見に気づく手がかりにもなります。ここでは実生活で活かしやすいポイントを見ていきましょう。

学習・教育・偏見への対処
  • 既有スキーマと結びつけて学習する:
    新しい概念を学ぶとき、すでに知っている知識と関連づけることで記憶に残りやすくなる。「これは〇〇と似ている」という比喩や例え話は理解を助ける方法として役立つ。
  • 自分のスキーマを意識的に見直す:
    偏見(バイアス)の一部には、スキーマが特定のカテゴリに関する固定観念として働くことが関わる。「自分のスキーマが不正確かもしれない」と自覚することで偏見を修正するきっかけになる。
  • 説明や文書には背景文脈を提供する:
    読者のスキーマを事前に活性化することで理解を助けることができる。文書の冒頭でテーマと文脈を明確にすると、読者は適切なスキーマを呼び起こして内容を処理しやすくなる。

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