サテライトオフィス型障害者雇用とは?導入前に見るべき点

サテライトオフィス型障害者雇用は、本社や通常拠点とは別の場所を就業場所にし、障害のある方を自社の社員として雇用する方法です。

導入前に見るべき点は、拠点の設備や採用人数だけではありません。仕事内容、指揮命令、勤怠、評価、合理的配慮、情報管理を、雇用主である企業が説明できるかが重要です。

この記事では、企業の人事担当者・現場責任者向けに、サテライトオフィス型障害者雇用の仕組み、向いている場面、支援会社を比較するときの確認項目を整理します。

最初に見ること
  • サテライトオフィス型障害者雇用は本社外の拠点を使う雇用方法
  • 導入が向いている場面
  • 導入前に確認する論点
目次
編集 セオリーズ編集部

本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。

サテライトオフィス型障害者雇用は本社外の拠点を使う雇用方法

サテライトオフィス型障害者雇用とは、配属先のオフィス以外の拠点で働く形を、障害者雇用に取り入れる方法です。

厚生労働省のマニュアルでは、サテライトオフィスは配属先以外の勤務場所で、通信環境や業務環境が整ったオフィススペースと説明されています。在宅勤務と同じく、オフィス以外で働くテレワークの一形態です。

形態 主な特徴 企業側の確認点
自社サテライト 自社が小規模拠点を用意して運用する 管理者配置、通信環境、業務量、初期費用
共同利用型 支援会社や地域拠点を複数企業で利用する 契約範囲、支援者の役割、自社の指揮命令
在宅併用型 自宅勤務と拠点勤務を組み合わせる 勤怠管理、孤立防止、緊急時対応
地方採用型 本社から離れた地域で採用・勤務する 訪問頻度、地域支援機関、評価方法

サテライトオフィスを使うこと自体が目的ではありません。通常拠点では採用や定着が難しい場合に、業務と支援体制を再設計する選択肢として考えます。

出典: 厚生労働省「障害者のサテライトオフィス雇用推進マニュアル」(2026年5月確認)

導入が向いている場面

サテライトオフィス型が向くのは、通常拠点への出社だけでは採用・定着が難しい一方で、業務を遠隔でも管理できる場面です。

向いている場面#1
本社通勤が難しい人材を採用したい

都市部の本社には通いにくくても、地域の拠点であれば安定して勤務できる候補者がいます。

地方採用や通勤負担の軽減を狙う場合は、サテライト拠点が採用可能性を広げる選択肢になります。

向いている場面#2
在宅勤務だけでは環境が整いにくい

自宅の通信環境、作業スペース、生活との切り分けに課題がある場合、通える拠点があると勤務リズムを作りやすくなります。

厚生労働省のマニュアルでも、サテライトオフィス勤務は在宅勤務の利便性を持ちつつ、懸念点を補える方法として整理されています。

向いている場面#3
複数名をチームで雇用したい

同じ拠点で複数名が働くと、朝礼、相談、作業確認、体調確認をまとめて運用しやすくなります。

在宅勤務では孤立しやすい場合でも、拠点勤務なら同僚や支援者との接点を作りやすくなります。

向いている場面#4
遠隔化しやすい仕事がある

データ入力、書類電子化、リスト整備、社内資料作成、問い合わせ一次整理などは、作業範囲と品質基準を決めれば遠隔拠点でも任せやすい業務です。

反対に、毎日仕事を探す状態になるなら導入は早すぎます。採用人数より先に、継続して発生する業務を確認してください。

導入前に確認する論点

導入前の確認は、費用や拠点の見た目よりも、雇用管理を続けられるかに置きます。次の項目を先に埋めると、支援会社や拠点を比較しやすくなります。

確認項目 見るべき点 未整理だと起きること
仕事内容 毎週発生する作業量、手順、品質基準 採用後に仕事探しが始まる
指揮命令 誰が業務指示し、誰が質問を受けるか 支援者任せになり、責任が曖昧になる
勤怠管理 始業・終業、休憩、体調不良時の連絡方法 欠勤や離席の判断が揺れる
評価 成果物、作業量、報連相、改善行動の評価軸 本社勤務者との評価差が説明しにくい
設備・安全 通信、端末、避難経路、体調急変時対応 事故や不調時の初動が遅れる
情報管理 端末持ち出し、画面管理、紙資料、権限設定 個人情報や社内情報の扱いが不安定になる
相談体制 人事、現場、支援機関、産業保健の連絡範囲 困りごとが拠点内で止まる
キャリア 研修、業務拡張、昇給、異動希望の扱い 隔離された雇用になりやすい

テレワークの運用では、就業場所、業務連絡、労働時間、人事評価、費用負担、服務規律、情報セキュリティ、労働災害、緊急時対応などを整理しましょう。

サテライトオフィス型でも同じです。拠点の契約条件だけでなく、企業内の勤務ルールと評価ルールを文書化します。

注意点はいわゆる障害者雇用ビジネスとの線引き

支援会社が施設、設備、業務、採用支援をまとめて提供する形は、厚生労働省資料で「いわゆる障害者雇用ビジネス」として実態把握の対象になっています。

令和7年11月末時点で、把握できた就業場所は223カ所、そのうちサテライトオフィスは58カ所とされています。数値は届出制度に基づく全数ではなく、労働局等が把握できた範囲の積み上げです。

注意点#1
雇用率目的だけで人数を置かない

法定雇用率の達成は企業の義務ですが、人数を置くだけでは職場定着につながりません。

勤務実態、労働時間、業務内容、指示系統、評価、合理的配慮を説明できる状態にしてから導入を判断します。

注意点#2
支援会社の役割を雇用管理と混ぜない

支援会社は拠点運営、採用支援、日々の相談、定着支援を担う場合があります。ただし、雇用主としての業務指示や評価まで丸ごと代替する存在ではありません。

契約前に、支援会社が行うこと、自社が担うこと、本人に説明することを分けましょう。

注意点#3
合理的配慮の検討を記録に残す

雇用分野では、障害者差別の禁止と合理的配慮の提供が事業主の義務とされています。

サテライトオフィス勤務でも、勤務時間、休憩、作業環境、通院、コミュニケーション方法を本人と話し合い、過重な負担との関係を含めて記録します。

出典:厚生労働省公式(いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について / 雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮)(2026年5月確認)

企業側の導入手順

サテライトオフィス型を検討するときは、拠点探しから始めず、業務設計から順番に進めます。採用人数の目標だけを先に置くと、運用が後追いになります。

手順 企業が行うこと 残す資料
1. 目的を決める 雇用率、職域開発、地方採用、定着支援の優先順位を整理する 導入目的メモ
2. 業務を切り出す 本社・各部署から遠隔化しやすい仕事を集める 業務一覧、作業量、繁忙期
3. 管理者を決める 業務責任者、人事窓口、拠点側の連絡先を分ける 役割分担表、連絡フロー
4. 拠点を比較する 通勤性、設備、セキュリティ、支援機関連携を確認する 拠点比較表、見学記録
5. 勤務ルールを作る 勤怠、休憩、端末利用、緊急時対応を決める 勤務規程、業務マニュアル
6. 採用・定着を運用する 求人、見学、面接、定期面談、業務量調整を続ける 求人票、面談記録、改善履歴

厚生労働省の障害者テレワーク雇用の相談窓口では、受け入れ前、採用、定着支援の各フェーズで、業務構築や勤怠・業務進捗の管理を相談できると案内されています。

社内だけで判断しにくい場合は、支援会社の提案を受ける前に公的相談先で論点を整理すると、契約内容を見極めやすくなります。

具体例3つ

具体例#1
本社の事務補助を地方拠点で担う

人事部が紙書類の電子化、データ入力、社内アンケート集計を切り出し、地方のサテライトオフィスで複数名が担当する例です。

この場合は、作業手順書、エラー時の確認先、納期、品質基準を先に作ります。業務責任者は本社に置き、朝礼や日報で進捗を確認してください。

具体例#2
在宅勤務が合わない人に通える拠点を用意する

自宅では生活音や通信環境の問題があり集中しにくいものの、通勤しやすい小規模拠点なら勤務しやすい候補者を採用する例です。

この場合は、通勤経路、作業席、休憩場所、体調不良時の連絡先を確認してください。在宅勤務の代替ではなく、安定して働くための勤務場所として設計します。

具体例#3
支援会社の拠点を使う前に責任範囲を分ける

支援会社が拠点、採用支援、現場支援をまとめて提案する例です。導入しやすい一方で、雇用管理の境界が曖昧になることがあります。

契約前に、日々の指示、勤怠承認、評価、合理的配慮の判断を誰が担うかを確認してください。支援会社の支援範囲と、自社の雇用主責任を分けておきます。

支援会社を比較するポイント

支援会社を比較するときは、費用や採用人数だけで判断しないことが重要です。自社が担う部分と、外部支援で補う部分を分けて確認してください。

比較軸 確認質問 判断の目安
業務の実態 提供される仕事は自社の業務とどうつながるか 成果物や社内利用まで説明できる
指揮命令 誰が日々の指示、質問対応、優先順位変更を行うか 自社側の業務責任者が明確である
勤怠・評価 勤怠承認、目標設定、評価面談は誰が担うか 本社勤務者と説明できる評価軸がある
支援範囲 支援員は何を支援し、何をしないか 生活相談、業務支援、雇用判断の線引きがある
情報管理 端末、ネットワーク、紙資料、個人情報をどう扱うか 社内規程と拠点運用が矛盾しない
契約終了時 拠点変更や支援会社変更時に雇用をどう継続するか 本人の雇用継続を前提にした移行案がある

契約前には、拠点見学だけでなく、日報、面談記録、評価シート、緊急時対応表のひな形も確認してください。施設の見た目より、運用資料の具体性を見ましょう。

相談先を使い分ける

サテライトオフィス型は、支援会社だけで完結させず、公的支援や地域の支援機関も組み合わせて検討しましょう。

相談先 相談しやすい内容 企業側で用意するもの
ハローワーク 求人、雇用率、採用相談、支援制度 求人条件、仕事内容、採用予定地域
地域障害者職業センター 職場適応、ジョブコーチ、雇用管理の助言 職務内容、困りごと、職場環境
障害者就業・生活支援センター 地域での定着支援、生活面を含む連携 勤務場所、面談頻度、共有範囲
障害者テレワーク雇用相談窓口 業務構築、採用、勤怠・業務進捗、定着支援 テレワーク化したい業務、社内体制
民間支援サービス 拠点提供、採用支援、運用支援、研修 契約範囲、費用、指揮命令の分担

どこに相談するか迷う場合は、求人、職務設計、職場適応、生活面、テレワーク運用のどれが主な課題かで分けると判断しやすくなります。

サテライトオフィス型だけで検討を閉じず、支援サービス全体、農園型、ジョブコーチ、ハローワーク活用も合わせて確認すると、導入目的に合う方法を選びやすくなります。

よくある質問

FAQ#1
サテライトオフィス型なら雇用率対策としてすぐ使えますか?

人数だけを増やす方法として考えるのは危険です。雇用契約、労働時間、業務内容、勤怠管理、評価、相談体制を整えたうえで、自社の障害者雇用として運用できるかを確認してください。

FAQ#2
支援会社に管理を任せれば企業側の負担は減りますか?

一部の運用負担は軽くなる場合がありますが、雇用主としての業務指示、評価、労務管理、合理的配慮の検討は企業側に残ります。契約前に、支援会社が行うことと自社が担うことを分けましょう。

FAQ#3
在宅勤務とサテライトオフィス勤務はどちらがよいですか?

一律には決められません。在宅勤務は通勤負担を下げやすい一方、孤立や環境整備が課題になることがあります。サテライトオフィス勤務は通える拠点が必要ですが、相談やチーム運用を作りやすい場合があります。

まとめ

サテライトオフィス型障害者雇用は、本社外の拠点を使って採用・定着の選択肢を広げる方法です。

導入前には、仕事内容、指揮命令、勤怠、評価、合理的配慮、情報管理、キャリア形成を確認してください。支援会社の提案だけで決めず、自社が雇用主として責任を持てる形に整えることが重要です。

通常拠点、在宅勤務、農園型、公的支援と比較し、障害のある方が能力を発揮できる仕事と運用を先に作ることが、安定した定着支援につながります。

参考にした公的情報


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