障害者雇用で注意できないと感じるときは、注意を避けるのではなく、業務上の事実、期待する行動、必要な配慮を分けて伝えます。
本人を責める言い方は避けます。一方で、遅刻、報告漏れ、作業ミス、職場ルール違反などの事実は、記録と面談で確認します。
- 事実
いつ、どこで、何が起き、業務にどんな影響が出たか。 - 期待行動
次回から、どの場面で何を変えてほしいか。 - 配慮
指示方法、相談先、勤務時間、作業手順など、会社が調整できること。 - 記録
面談内容、本人の説明、会社側の対応、次回確認日。
出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」および「合理的配慮指針」(2026年5月確認)。
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
注意できない状態が起きる理由
注意できない状態は、配慮不足を恐れる気持ちと、職場ルールを伝える責任が混ざることで起きます。
ここでは、人事と現場責任者が詰まりやすい理由を4つに分けます。
理由#1
配慮と放置の線引きが曖昧になる
「障害特性かもしれない」と考え、遅刻や報告漏れをそのままにすると、本人も改善点をつかめません。
配慮は、職場ルールをなくすことではありません。守る行動と、実行しやすくする調整を分けます。
理由#2
伝える人と記録する人が決まっていない
直属上司、人事、同僚が別々に伝えると、本人は何を優先すべきか判断しにくくなります。
担当者、同席者、記録の保管先を決めておくと、注意の内容が人によってぶれにくくなります。
理由#3
注意と懲戒を同じものとして扱っている
日常的なフィードバックまで懲戒のように扱うと、現場は伝えることを避けがちです。
最初に必要なのは、事実確認、本人の事情確認、改善策の合意です。労務判断は別の手続きとして整理します。
理由#4
周囲へ共有する範囲が決まっていない
本人の同意なく、診断名や医療情報を広げる必要はありません。
一方で、依頼方法、質問先、急な変更時の連絡先など、チーム運営に必要な行動ルールは共有できます。
本人を責めない伝え方
本人を責めない伝え方では、評価語を使わず、観察できる事実と次回行動を短く伝えます。
以下の順番で面談を組み立てると、注意が感情的な叱責になりにくくなります。
伝え方#1
評価語を事実に直す
「だらしない」「やる気がない」ではなく、日時、頻度、行動、業務影響に置き換えます。
たとえば「今週2回、始業前連絡がなく、朝の作業分担を当日に変更した」と書く形です。
伝え方#2
業務影響を短く伝える
注意の理由は、感情ではなく業務上の必要性として説明します。
「周囲が困った」よりも、「出荷確認が30分遅れた」のように影響を具体化します。
伝え方#3
本人側の支障を聞く
本人には、「なぜできないのですか」ではなく、どの場面で止まったかを確認します。
指示が口頭だけで残らなかったのか、相談先が分かりにくかったのか、作業量が多すぎたのかを聞きます。
伝え方#4
次回行動と配慮を絞る
改善点を多く並べると、本人も現場も運用しにくくなります。
最初は「締切に間に合わない時点でチャットする」など、次回確認できる行動へ絞ります。
伝え方#5
確認日を決めて終える
注意した直後だけで終えると、改善状況が曖昧になります。
1週間後や2週間後に、改善した点、まだ難しい点、追加で必要な配慮を同じ記録に追記します。
出典:厚生労働省「合理的配慮指針」。採用後の合理的配慮は、職場で支障となっている事情の確認と本人との話し合いを前提に検討されます。
注意と合理的配慮の線引き
合理的配慮は、職務を続けるうえで支障となる事情を調整する考え方です。
一方で、すべての希望をそのまま受け入れることや、業務上必要な行動を確認しないこととは異なります。
線引き#1
ルールは残し、手段を調整する
報告、相談、締切、連絡先など、職場で必要なルールは明確にします。
調整するのは、電話をチャットに変える、手順を文面に残す、確認者を固定する、といった実行手段です。
線引き#2
実施が難しい希望には代替案を出す
本人の希望をそのまま実施できない場合は、理由を説明し、別の方法を検討します。
たとえば「毎日担当業務を外す」は難しくても、「繁忙日の一部だけ補助を付ける」なら試せる場合があります。
線引き#3
相談情報は共有範囲を絞る
合理的配慮の相談内容には、体調や通院などの個人情報が含まれることがあります。
現場へ共有する情報は、業務に必要な配慮、連絡方法、作業手順、相談先に絞ります。
線引き#4
労務判断は規程と記録で別管理する
懲戒、配置転換、契約終了などの判断は、日常的な注意とは分けて扱います。
就業規則、本人への説明、配慮の実施状況、改善期間、個別事情を整理し、必要に応じて専門家へ確認します。
出典:厚生労働省「合理的配慮指針」および「労働契約の終了に関するルール」(2026年5月確認)。
記録に残す項目
記録は、本人を追い詰めるためではなく、会社と本人が同じ内容を見返すために残します。
| 項目 | 残す内容 |
|---|---|
| 面談日時・参加者 | 本人、上司、人事、同席者、記録担当者。 |
| 確認した事実 | 日時、行動、頻度、業務への影響。 |
| 本人の説明 | 困っていた場面、指示の受け取り方、相談しづらさ。 |
| 会社側の説明 | 職場で必要な行動、守るべきルール、業務上の理由。 |
| 合意した対応 | 本人が行うこと、会社が配慮すること、周囲へ共有する範囲。 |
| 次回確認 | 確認日、判断基準、再面談の担当者。 |
障害名や診断内容は、記録に必要以上に書かないようにします。
共有する場合も、本人の同意と業務上の必要性を確認し、目的と共有先を限定します。
注意するときの言い換え例
注意の言い方は、人格評価から行動の確認へ置き換えると伝わりやすくなります。
| 避けたい言い方 | 置き換え例 |
|---|---|
| また同じことをしていますよね | 今週は確認欄の未記入が2件ありました。終了前に3項目だけ一緒に確認しましょう。 |
| 周りに迷惑をかけています | 朝の連絡がないと作業分担を組み替える必要があります。始業前にチャットで連絡しましょう。 |
| もっと普通に対応してください | 来客時は担当者名を確認し、内線をつなぐところまでお願いします。迷った場合は受付メモを使いましょう。 |
| 配慮しているのだから頑張ってください | 今の配慮で進めにくい点を確認します。続ける配慮と変える配慮を分けて見直しましょう。 |
最後は「反省してください」で終えず、次の行動、会社側の支援、確認日まで決めます。
場面別の具体例
注意の場面では、同じ「困った行動」でも、原因と必要な配慮が異なります。
ここでは、企業側が記録しやすい3つの例で整理します。
具体例#1
遅刻や欠勤連絡が安定しない
「最近休みが多い」ではなく、始業前連絡がない欠勤回数と、当日の業務変更を伝えます。
記録には、連絡先を一本化する、始業15分前までに連絡する、難しい場合の代替連絡を残します。
具体例#2
作業ミスが続いて納期に影響している
「何度言えば分かるのですか」ではなく、ミスの件数、工程、再確認にかかった時間を共有します。
対応として、チェック項目を3つに絞る、最初の1週間だけ終了前に上司が確認する方法があります。
具体例#3
周囲への言い方が強く、職場で摩擦が出ている
対人面の注意は、人格評価になりやすいため、発言内容と場面を事実として確認します。
異論はメモに書いて最後に話す、進行役が発言順を示すなど、会議運営のルールへ置き換えます。
社内だけで難しいときの相談先
注意と配慮の調整が社内だけで進まない場合は、外部支援を早めに使います。
本人が利用している支援機関がある場合は、本人の同意を得たうえで連携を検討します。
- ハローワーク
職域開拓、雇用管理、職場環境整備、定着支援の相談先になります。 - 地域障害者職業センター
職場適応やジョブコーチ支援に関する相談先になります。 - ジョブコーチ
職場に出向き、本人と職場双方に支援する制度です。 - 社労士・弁護士
懲戒、配置転換、契約終了などの労務判断が関わる場合に確認します。
出典:ハローワークインターネットサービス事業主向け障害者雇用ページ、および厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」(2026年5月確認)。
よくある質問
障害者雇用で注意するときに、企業側からよく出る疑問を整理します。
FAQ#1
障害者雇用で注意すると差別になりますか?
業務上必要な行動や職場ルールを、事実に基づいて伝えること自体が直ちに差別になるわけではありません。
ただし、障害特性や人格を責める、配慮を検討しない、相談したことを理由に不利益に扱う対応は避けます。
FAQ#2
注意した内容は本人に共有した方がよいですか?
共有した方がよいです。会社だけで記録を持つと、本人が何を変えればよいか分かりにくくなります。
面談後に、確認した事実、次回行動、会社側の配慮、確認日を短くまとめます。
FAQ#3
何度伝えても改善しない場合はどうしますか?
まず、伝え方、業務手順、配慮、評価基準が明確だったかを見直します。
改善行動と確認日を記録しても変わらない場合は、配置変更、業務内容の見直し、外部支援を検討します。
関連する記事
注意の伝え方だけで解決しにくい場合は、面談、勤怠、支援機関連携の記事も合わせて確認してください。
まとめ
障害者雇用で注意できない悩みは、「注意するか、配慮するか」の二択で考えるほど深くなります。
必要なのは、事実、期待行動、合理的配慮を分けて、本人と話し合うことです。
社内だけで難しい場合は、ハローワーク、地域障害者職業センター、ジョブコーチなどの外部支援も使い、本人にも現場にも負担が偏らない体制を整えましょう。
