本記事は、セオリーズ株式会社の編集部が、心理学・認知科学・行動科学に関する文献や公開情報を確認したうえで作成しています。内容は一般的な知識提供を目的としており、医学的診断・治療を代替するものではありません。
インタリービングとは
インタリービング(Interleaving)とは、複数の異なる題材・問題タイプ・スキルを交互に混ぜながら学習する方法のことであり、「交互学習」「混合学習」とも呼ばれる。
ロバート・ビョークらの研究によって学習科学で注目され、「望ましい困難(desirable difficulties)」の代表例とされる。同じ内容をブロック単位で学習する場合と比べ、条件が合えば長期的な理解・応用力の向上が期待される。
一言でいえば、「解き方そのもの」だけでなく「どの解き方を使うかを選ぶ力」を鍛える練習法といえる。無関係な内容を何でも混ぜればよいわけではなく、似た問題や概念を見分ける必要がある場面で特に使いやすい手法である。
- 練習中の成績や手応えは一時的に下がることがあるが、条件が合えば後日のテスト・応用場面での長期的な成績向上につながる
- 「今どの方法・概念を使えばいいか」を判断する力(弁別能力)が鍛えられる
- 特に数学のように「似た問題タイプを見分けて解法を選ぶ必要がある領域」で研究例が多く、スポーツや語学にも関連研究がある
インタリービングのメカニズム
インタリービングが有効な理由として代表的に挙げられるのが、問題同士を見比べて違いを見分ける弁別・対比の働きである。問題を見るたびに「どの解法・概念に当てはまるか」を判断する必要があり、この分類過程が理解を深めると考えられている。
学習内容を切り替えることで前の内容を一度「忘れかけた状態」で再検索することになり、検索や再構成が促されるという説明もある。ブロック学習ではすぐ前に同じ種類の問題を解いているため、こうしたプロセスが起きにくいとされる。
インタリービングと似た概念との違い
インタリービングと対比されるのが「ブロック学習(blocked practice)」——同じ種類の問題・内容をまとめて練習する方法である。
ブロック学習は練習中の感触が良く、習得が速く感じられやすい一方で、テスト・実用場面での成績はインタリービングに劣ることがあるとされる。
また「分散学習」と混同されることがあるが、分散学習は「いつ学習するか(時間的間隔)」に着目するのに対し、インタリービングは「何を混ぜて学習するか(内容の順序・組み合わせ)」に着目する点で異なる。
- インタリービング:
異なる種類の問題・内容を交互に混ぜて練習。「何を混ぜるか」に着目。 - ブロック学習:
同じ種類の問題・内容をまとめて練習。短期的な習得感が高いが長期保持に弱い。 - 分散学習:
学習と学習の間に時間的間隔を置く。「いつ学習するか」に着目。インタリービングと組み合わせ可能。
インタリービングの具体例
ここでは、インタリービングが実際にどのように現れるかを具体的な場面で説明する。
具体例#1
数学の混合問題演習
「今日は因数分解の問題だけ」と同じタイプを続けて解くより、「因数分解・二次方程式・グラフの問題を混ぜて解く」方が、後日のテスト成績が高くなる傾向が研究で示されている。
ブロック練習中は「前と同じ種類だ」と気づけるが、混合問題では毎回「どの解法か」を考えなければならない。この判断の繰り返しが実力を高めると考えられる。
学習者の感覚としては、「まとめて練習していると解けたつもりになりやすいが、混合問題では解法選択そのものの練習になる」と説明できる。
具体例#2
スポーツの混合ドリル
バスケットボールの練習で、フリースロー・レイアップ・3ポイントシュートを交互に練習する方法は、同じ種類を連続して打ち続けるよりも試合での応用力を高めやすいと考えられている。
試合では連続で同じシュートを打つ場面は少なく、「次は何を打つか判断する」という実際の状況に近い練習形式となるためである。
同じシュートだけを続ける練習に加えて、複数のシュートを混ぜると、試合に近い判断練習になりやすい。
具体例#3
語学学習での文法項目の交互練習
英語学習で「現在完了の例文ばかり10問」より「現在完了・過去形・現在進行形が混在する10問」を解く方が、どの文法を使うべきかを判断する練習になり、使い分けの理解を助ける可能性があるとされる。
各文法項目がいつ使われるかを「毎回判断する」プロセスが、実用的な能力につながりやすい。
現在完了だけを練習していると、過去形など似た表現との使い分けで迷う学習者もいる。
関連する概念
- 分散学習
インタリービングと組み合わせることで学習効果が相乗しやすい。「間隔を置いて、内容を混ぜる」ことは、長期保持をねらううえで有力な組み合わせの一つとされる。 - テスト効果
インタリービングでは各問題で「解法を選ぶ」過程が生じるため、検索練習に近い働きが加わる場合がある。 - 転移
インタリービングによって培われた「種類の判断力」は、新しい問題への転移を促進すると考えられる。
インタリービングを活用する方法
- 最初に各トピックの基礎をブロック学習で習得してから、習得後にインタリービング形式に切り替える。基礎も理解していない段階でのインタリービングは、負荷が高くなり混乱しやすい
- 問題集の同じ章の問題だけを解くのではなく、複数の章・単元から問題を混ぜたセットを自作する習慣をつける
- 「練習中の感触が悪い(解けない・時間がかかる)」ことを過度に気にしない。ただし、短期パフォーマンスが下がること自体が長期的な向上を保証するわけではないため、解説やフィードバックと組み合わせて理解を確認する
