障害者雇用の採用計画は、人数目標、職務、採用期限、受け入れ体制、定着支援を一つにまとめる実行計画です。
不足人数を埋めるだけでなく、どの部署で、どの仕事を、どの支援体制で任せるかまで決めます。
この記事では、企業の人事・現場責任者向けに、目標人数の出し方、職域設計、スケジュール、支援機関連携を整理します。
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
障害者雇用の採用計画とは
障害者雇用の採用計画とは、法定雇用率への対応と、採用後の定着を同時に進めるための社内計画です。
採用数だけを決めても、仕事内容や支援担当が未整理なら、入社後に現場が迷いやすくなります。
| 計画項目 | 決める内容 | 実務での使い方 |
|---|---|---|
| 人数目標 | 必要雇用数、不足人数、採用期限 | 採用優先度と年度内の工程を決める |
| 職域設計 | 任せる業務、作業量、必要スキル | 求人票と配属後の業務をつなげる |
| 採用チャネル | ハローワーク、人材紹介、支援機関 | 職務内容に合う募集経路を選ぶ |
| 受け入れ体制 | 教育担当、相談窓口、共有範囲 | 現場任せを避け、役割を明確にする |
| 定着支援 | 面談日、業務量、配慮の見直し | 採用後のずれを早めに修正する |
- 雇用率だけでなく、職務と受け入れ体制を同じ表で管理する
- 求人公開前に、配属候補部署と教育担当を決める
- 入社後の初回面談と見直し日を採用計画に入れる
出典:厚生労働省「事業主の方へ」/厚生労働省「障害者雇用対策」(2026年5月28日確認)
目標人数の決め方
目標人数は、不足人数、退職見込み、法定雇用率の変更時期を分けて決めます。
2026年5月時点の民間企業の法定雇用率は2.5%です。2026年7月1日以降は2.7%に上がり、対象企業の目安は37.5人以上になります。
| 確認する数値 | 見方 | 計画への反映 |
|---|---|---|
| 常用雇用労働者数 | 制度上の算定人数で見る | 対象企業かどうかを確認する |
| 現在の雇用数 | 雇用率算定の対象者を確認する | 不足人数を試算する |
| 2026年7月以降の基準 | 2.7%と37.5人以上で見る | 翌年度の不足見込みを入れる |
| 退職・異動の見込み | 年度内の変動を月別に見る | 採用時期に余裕を持たせる |
人数設計#1
不足人数を制度上の人数で見る
最初に、常用雇用労働者数と障害のある労働者のカウントを確認します。
通常の社員数だけで判断せず、短時間労働者や重度判定の扱いなど、制度上の数え方に沿って見ます。
人数設計#2
退職や労働時間変更を織り込む
採用計画は、6月1日時点だけを見ると遅れやすくなります。
退職、休職、労働時間変更、部署異動の見込みを月別に置くと、採用時期を前倒ししやすくなります。
人数設計#3
採用期限を入社後の安定時期から逆算する
人数目標は「何人採るか」だけで終えないことが大切です。
求人公開、選考、入社準備、初回面談、業務量の見直しまでを月単位で逆算します。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」/厚生労働省「事業主の方へ」(2026年5月28日確認)
採用計画が崩れやすい原因
採用計画が崩れる原因は、応募者不足だけではありません。
企業側の計画が人数目標に偏り、職務や受け入れ体制の確認が後回しになることがあります。
崩れる原因#1
人数だけを先に決めている
不足人数を埋めることだけを目標にすると、求人票の仕事内容が曖昧になります。
採用後に業務を探す流れになり、本人にも現場にも負担が出ます。
崩れる原因#2
現場の受け入れ余力を見ていない
複数名を同じ部署へ集中させると、教育担当や直属上司の負担が偏ります。
採用人数を増やす場合は、支援担当、面談頻度、相談窓口も同じペースで増やせるかを見ます。
崩れる原因#3
採用チャネルを先に決めている
ハローワーク、人材紹介、支援機関にはそれぞれ役割があります。
先に決めるのは、任せる業務と受け入れ体制です。そのうえで、募集経路と相談先を組み合わせます。
採用計画の作り方
採用計画は、制度対応、人員計画、職域設計、受け入れ準備の順で作ります。
求人票を急ぐ前に、採用後の仕事と支援体制を決めることがポイントです。
作り方#1
対象人数と期限を確認する
常用雇用労働者数、現在の雇用数、法定雇用率、6月1日時点の報告要否を確認します。
不足人数がある場合も、すぐ求人を出すのではなく、採用期限を月単位で置きます。
作り方#2
部署ごとに職域候補を出す
各部署から、毎日発生する作業、週単位の作業、繁忙期に増える作業を出します。
単発作業だけでは、安定した勤務時間を組みにくくなります。継続する業務量があるかを確認します。
作り方#3
採用枠ごとに支援体制を決める
採用予定人数を置くときは、同じ数だけ受け入れ体制も確認します。
教育担当、直属上司、人事窓口、配慮相談の記録方法を採用枠ごとに決めます。
作り方#4
募集方法と選考項目を決める
職務内容が固まったら、求人票と選考項目を作ります。
仕事内容、勤務条件、教育体制、相談先、配慮相談の方法を求人票に入れます。
作り方#5
入社後の見直し指標を置く
採用計画は、内定で終わりではありません。
初日、1週間後、1か月後、3か月後など、業務量と配慮を確認する日を先に決めます。
職域設計と求人化の進め方
職域設計では、部署の作業を求人票に書ける粒度まで分解します。
「できそうな仕事」ではなく、頻度、量、確認者、評価基準を明確にすることが重要です。
| 整理する項目 | 確認する内容 | 求人化での使い方 |
|---|---|---|
| 作業名 | データ入力、書類整理、発送、点検など | 仕事内容欄へ反映する |
| 発生頻度 | 毎日、週次、月次、繁忙期のみ | 勤務時間と業務量を決める |
| 必要スキル | PC操作、電話対応、移動、対人接点 | 選考項目を作る |
| 確認者 | 直属上司、先輩社員、ダブルチェック担当 | 教育体制を明確にする |
| 調整できる方法 | 手順書、静かな席、作業順、勤務時間 | 合理的配慮の相談材料にする |
求人化#1
作業単位で分解する
「事務補助」のような広い表現だけでは、応募者も現場も仕事を想像しにくくなります。
データ入力、郵送準備、備品管理、書類PDF化など、作業名と量に分けて整理します。
求人化#2
職務要件と配慮を分ける
配慮を行うことと、職務要件をなくすことは同じではありません。
必要な成果、安全条件、報告方法を明確にしたうえで、実施方法を調整します。
求人化#3
求人票に相談できる内容を書く
求人票には、仕事内容だけでなく、教育担当、相談先、配慮相談の進め方も入れます。
応募前に確認できる情報が増えると、選考中のすり合わせがしやすくなります。
出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」/厚生労働省「合理的配慮指針」(2026年5月28日確認)
採用スケジュールの作り方
採用スケジュールは、求人公開日ではなく、入社後に業務が安定する時期から逆算します。
準備期間が短い場合も、職務内容と受け入れ体制は省略しないようにします。
| 時期 | 主な作業 | 完了の目安 |
|---|---|---|
| 採用6か月前 | 人数試算、部署選定、支援機関への相談 | 目標人数と候補部署が決まっている |
| 採用4か月前 | 業務棚卸し、職域候補、教育担当の確認 | 求人票に書ける仕事内容がある |
| 採用3か月前 | 求人票作成、選考項目、配慮相談の整理 | 募集開始できる状態になっている |
| 採用1か月前 | 内定後面談、初日準備、共有範囲の確認 | 本人と現場の認識がそろっている |
| 入社後3か月 | 業務量、配慮、支援体制の見直し | 継続する業務と調整点が決まっている |
- 求人票はあるが、配属後の仕事量が決まっていない
- 教育担当が決まらないまま面接が始まっている
- 入社後の初回面談日が計画表に入っていない
合理的配慮と選考の線引き
採用計画では、雇用率対応、採用選考、合理的配慮の検討を分けて扱います。
制度対応を急ぐ場面でも、障害種別だけで採否や配属を決めないようにします。
線引き#1
障害種別で採用枠を固定しない
「この障害種別ならこの仕事」と一律に決める進め方は避けます。
確認すべきなのは、職務に必要な条件と、能力を発揮するために必要な調整です。
線引き#2
職務要件は選考前に明文化する
採用基準が曖昧なまま面接すると、評価の理由を説明しにくくなります。
作業内容、成果物、勤務条件、報告方法、職場で調整できる範囲を先に整理します。
線引き#3
配慮は対話と記録で進める
合理的配慮は、本人との話し合いを踏まえて検討します。
採用計画の段階では、配慮内容を固定しすぎず、相談窓口と見直し日を決めておきます。
出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」/厚生労働省「合理的配慮指針」(2026年5月28日確認)
支援機関と社内体制の組み合わせ
採用計画は、人事だけで作るより、現場責任者、労務、支援機関を組み合わせた方が安定します。
外部支援は丸投げ先ではなく、社内体制を整えるための相談先として使います。
| 相談先 | 活用する場面 | 社内で準備すること |
|---|---|---|
| ハローワーク | 求人相談、雇用管理、職場環境整備 | 仕事内容、勤務条件、採用時期 |
| 地域障害者職業センター | 雇用管理の相談、職場適応支援 | 課題、支援対象、連携窓口 |
| ジョブコーチ | 職場適応に課題がある場合 | 支援目標、上司の役割、見直し日 |
| 社内担当者 | 制度確認、配慮記録、現場調整 | 情報共有範囲、相談窓口、面談記録 |
ハローワークでは、障害者雇用に関する職域開拓、雇用管理、職場環境整備などの相談を受け付けています。
ジョブコーチ支援は、職場での支援を通じて、事業所側の支援体制を整えることも目的に含みます。
出典:ハローワークインターネットサービス「障害者雇用に関する事業主向け案内」/JEED「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」/JEED「地域障害者職業センター」(2026年5月28日確認)
具体例で見る採用計画
採用計画は、企業規模や現場の準備状況で優先順位が変わります。
ここでは、起きやすい3つの場面で計画の組み立て方を整理します。
具体例#1
40人前後の企業が初めて計画する
40人前後の企業では、2026年7月以降の対象範囲を見据えて、まず1人の受け入れを現実的に設計します。
定型業務があり、教育担当を置きやすい部署から始めると、職務と支援体制をつなげやすくなります。
具体例#2
100人超の企業が複数名を計画する
100人を超える企業では、採用人数だけでなく、部署ごとの受け入れ余力を見ます。
求人、選考、入社、面談を月別にずらすと、教育担当の負担を分散しやすくなります。
具体例#3
現場から職務候補が出てこない
現場が「任せる仕事がない」と感じる場合、業務が属人化していることがあります。
部署に採用人数を求める前に、毎日発生する作業、確認者が必要な作業、繁忙期に増える作業を洗い出します。
よくある質問
FAQ#1
障害者雇用の採用計画は何か月前に作るべきですか?
可能であれば、採用予定の6か月前から作ると余裕を持ちやすくなります。
期限が短い場合も、求人票を急ぐ前に、仕事内容、教育担当、相談先を先に決めることが重要です。
FAQ#2
採用目標人数は雇用率の不足分だけでよいですか?
不足分は出発点ですが、それだけでは不十分です。
退職や異動の見込み、2026年7月以降の法定雇用率、受け入れ部署の余力も見ます。
FAQ#3
採用計画に現場はどこまで関わるべきですか?
求人票を作る前から関わるのが現実的です。
仕事内容、作業量、指示方法、評価基準は、配属候補部門が確認しないと具体化しにくいためです。
まとめ
障害者雇用の採用計画は、人数目標だけでなく、職域設計、採用期限、受け入れ体制、定着支援までを一つにまとめることが重要です。
2026年7月以降は、民間企業の法定雇用率が2.7%となり、対象企業の目安も37.5人以上へ広がります。
まずは自社の人数を確認し、部署ごとの職務候補を出します。採用数と同じ重さで、入社後の面談と見直し日も計画に入れます。
