障害者雇用支援サービスは、採用人数だけを目的に選ぶのではなく、採用前・採用時・入社後のどの工程を補うかで選ぶことが大切です。
ハローワークや地域障害者職業センターなどの公的機関と、民間の人材紹介・コンサルでは、得意な支援範囲や社内に残せる成果物が異なります。
この記事では、企業の人事担当者・現場責任者向けに、主な支援機関・民間サービスの役割と、採用前から定着までの使い分けを整理します。
- 支援サービスの種類
公的機関と民間サービスの役割を分けて見る - 採用前の使い方
求人票・職務設計・選考条件を整える - 入社後の使い方
ジョブコーチや地域支援機関で定着を支える - 選定前の比較軸
支援範囲・成果物・費用・社内移管を確認する
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
障害者雇用支援サービスとは
障害者雇用支援サービスとは、企業が障害者雇用を進める際の採用、職務設計、合理的配慮の整理、職場定着などを支援する、公的機関・民間サービスの総称です。
「どこが一番よいか」ではなく、「いま困っている工程に合っているか」で選びます。求人を出したい段階と、採用後の職場適応を整えたい段階では、相談すべき先が変わります。
| 課題 | 主な相談先 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 初めて求人を出す | ハローワーク(事業主向け) | 求人申込み、職域開拓、雇用管理の相談を始めたい |
| 職務や配慮を整理する | 地域障害者職業センター(JEED) | 雇用管理、職場適応、ジョブコーチ支援など専門的な相談をしたい |
| 地域で採用・定着を支える | 障害者就業・生活支援センター | 就業面と生活面を含め、本人・企業・関係機関で連携したい |
| 入社後の職場適応を支える | ジョブコーチ(職場適応援助者)支援 | 作業指導、相談方法、職場側の関わり方を調整したい |
| 候補者母集団を広げる | 民間人材紹介・障害者雇用エージェント | 募集チャネルを増やし、候補者紹介を受けたい |
| 制度設計をまとめて見直す | 障害者雇用コンサル | 採用計画、社内体制、管理職研修まで設計したい |
公的機関は、雇用管理や合理的配慮の検討など、制度に直結する相談に強く、原則として費用負担なく利用できます。一方、民間サービスは契約内容により、候補者紹介、コンサル、業務設計、研修まで支援範囲が広がります。
そのため、最初に「相談の入口として使うのか」「候補者紹介を受けたいのか」「社内体制や定着支援まで伴走してほしいのか」を分けて考えることが大切です。
出典:ハローワークインターネットサービス「事業主の方へ(障害者雇用)」/高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「地域障害者職業センター」
採用前は求人・職務・選考の支援を使う
採用前の支援は、候補者数を増やすことだけが目的ではありません。求人票・職務・選考条件を、応募者と現場の双方が判断できる粒度に整えることが重要です。
ハローワークは、障害者雇用に関する企業向け相談や求人申込みに利用できます。求人者マイページから、求人申込み、求人内容の変更、選考結果入力までオンラインで行えます。
また、地域障害者職業センターでは、事業主向けに雇用管理の相談・援助や、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援も行っています。職務の切り出しや配慮の整理に迷う場合は、早めに相談しておくと採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。
採用前に相談する際は、次のように「仕事内容・求人票・選考」の3つに分けて準備します。
| 採用前に整理する項目 | 支援機関へ相談する内容 | 社内で用意する資料 |
|---|---|---|
| 仕事内容 | 職務の切り出し、作業手順、必要スキルの助言 | 業務一覧、繁忙期、作業環境メモ |
| 求人票 | 仕事内容の書き方、勤務条件、相談可能な配慮の表現 | 求人条件、給与、勤務時間、選考フロー |
| 選考 | 面接で確認する範囲、職場見学・実習の使い方 | 質問項目、評価基準、見学ルート |
候補者の母集団を広げたい場合は、民間人材紹介や障害者雇用エージェントも選択肢になります。ただし、紹介を受けただけでは、指導担当、配慮の試行、評価基準などの職場側の準備は埋まりません。
そのため、候補者紹介と並行して、職場設計は社内または公的機関の助言を受けながら進めることが大切です。
出典:ハローワークインターネットサービス「事業主の方へ(障害者雇用)」/JEED「地域障害者職業センター」
入社後は定着・職場適応の支援を使う
採用後の支援は、業務を続けられるか、相談しやすいか、現場が関わり方を理解できているかを継続的に整えるために使います。
中心になるのは、職場適応援助者(ジョブコーチ)と地域の支援機関です。作業手順、相談方法、現場側の関わり方に不安がある場合は、早めに外部支援を検討します。
職場適応援助者(ジョブコーチ)は、障害のある方が職場に適応できるよう、本人だけでなく事業主・職場の従業員にも支援を行う制度です。JEEDの「配置型ジョブコーチ」、社会福祉法人等の「訪問型ジョブコーチ」、雇用事業主の「企業在籍型ジョブコーチ」の3類型があります。
障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)は、就業面と生活面を一体的に支援する地域機関です。本人への支援に加え、企業からの雇用管理や職場定着の相談にも対応しています。
入社後の課題は、次のように使う支援と社内で決めることを分けると整理しやすくなります。
| 入社後の課題 | 使う支援 | 社内で決めること |
|---|---|---|
| 作業手順が定着しない | ジョブコーチ、地域障害者職業センター | 手順書、確認者、指導方法 |
| 相談が遅れやすい | 障害者就業・生活支援センター、支援機関 | 面談頻度、相談窓口、共有範囲 |
| 現場の関わり方が揺れる | ジョブコーチ、研修・コンサル | 指示方法、評価基準、フィードバック手順 |
定着支援は外部支援者に任せきりにせず、日々の業務指示と評価は企業側が担います。支援者は本人・現場・人事の間で調整を助ける役割で、企業側の役割を肩代わりするものではありません。
出典:JEED「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」/厚生労働省「障害者雇用・就労支援施策」
公的支援と民間サービスの使い分け方
公的支援と民間サービスは、どちらか一方を選ぶものではありません。相談の入口、候補者接点、職場適応、制度設計のどこを補うかで役割を分けて組み合わせます。
公的支援は制度や地域連携に基づく相談に向き、民間サービスは契約内容に応じて、候補者紹介、研修、運用改善、資料作成などを依頼しやすい点が違いです。
| 使い分ける場面 | 公的支援が向くこと | 民間サービスが向くこと |
|---|---|---|
| 初回相談 | 障害者雇用の進め方、求人票、職務選定の相談 | 採用計画や研修の設計、社内説明資料の作成 |
| 候補者接点 | ハローワーク求人、地域の支援機関との連携 | 人材紹介、求人媒体、スカウト、候補者説明 |
| 入社後支援 | ジョブコーチ、職場適応、地域の定着相談 | 定着面談の支援、管理職研修、運用改善の伴走 |
| 社内制度 | 制度情報、助成金、関係機関の案内 | 評価制度、面談様式、教育資料、KPI設計の支援 |
たとえば、求人票はハローワークで整え、候補者の母数は人材紹介で広げ、入社後の職場適応はジョブコーチや地域の支援機関と連携する、という分担が考えられます。
複数の支援者が関わる場合は、企業側の窓口を一本化します。人事・現場責任者・支援機関・民間サービスの間で、本人同意の範囲、共有する情報、面談頻度、緊急時の連絡先を先に決めておくと、入社後の運用が止まりにくくなります。
選定前に確認する7つの比較軸
支援サービスを比較するときは、サービス名やブランドよりも、支援範囲と社内に残る成果物を確認します。同じ「障害者雇用支援」でも、採用支援・定着支援・研修・業務設計では、企業側に残るものが違います。
特に、対象工程、成果物、本人同意と情報共有、社内移管、契約・費用は、契約前に確認しておきたい項目です。次の7つの軸で比較すると、採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。
| 比較軸 | 確認する質問 | 見落とすと起きること |
|---|---|---|
| 対象工程 | 採用前、選考、入社後のどこまで支援するか | 採用だけ進み、受け入れ準備が残る |
| 成果物 | 求人票、職務設計、面談記録、研修資料など何が残るか | 相談で終わり、社内運用に落ちない |
| 現場関与 | 人事だけでなく配属先責任者も参加する設計か | 入社後に現場の理解が追いつかない |
| 本人同意と情報共有 | 配慮事項や支援機関連携をどの範囲で共有するか | 本人同意のない情報共有や、現場への伝達不足が起きる |
| 連携範囲 | 本人同意を前提に、支援機関や主治医意見などをどう扱うか | 情報共有の範囲が曖昧になる |
| 社内移管 | 支援終了後に社内で運用を続ける資料や手順が残るか | 支援者が離れると面談や配慮見直しが止まる |
| 契約・費用 | 費用、契約期間、紹介料、追加支援の条件は明確か | 採用後支援が別契約だと後から分かる |
合理的配慮に関わる内容は、サービス提供者の提案だけで決めず、本人との話し合いと職務上の必要性を踏まえて整理します。支援サービスの提案は、障害者への差別禁止と合理的配慮の提供義務を前提に扱うことが大切です。
出典:厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」
支援サービス選びでよくある4つの失敗
同じ支援サービスでも、契約の仕方や社内の準備によって結果は大きく変わります。よくある失敗は、サービスそのものよりも、「何を任せるか」「社内で何を決めるか」が曖昧なまま進むことです。
ここでは、起きやすい4つの失敗パターンを、起きる場面と防ぎ方の順で整理します。
- 採用だけを外部に任せて職場設計が残る
求人や紹介だけ進み、受け入れ準備が不足する - 公的機関と民間サービスの役割を混同する
相談先の役割が曖昧で、費用や支援範囲がずれる - 支援機関に共有する情報が不足している
社内状況が伝わらず、具体的な助言につながらない - 定着支援を採用後に初めて考える
入社後の面談や相談ルートが決まっておらず、場当たり対応になる
失敗#1
採用だけを外部に任せて職場設計が残る
人材紹介や求人支援で候補者と出会えても、仕事内容・指導担当・配慮事項・評価基準が決まっていないと、入社直後から現場が迷う状態になります。
採用前の段階で、求人票に書いた業務と実務の差、指導担当の配置、配慮の試行案、3か月目までの面談頻度までを社内で確定させておきます。職務設計は外部に丸投げせず、業務一覧と作業環境の情報を持ち寄って公的機関・コンサルと一緒に進めます。
失敗#2
公的機関と民間サービスの役割を混同する
公的機関は、求人、職業リハビリテーション、地域連携、職場適応など制度に基づく相談に向いています。民間サービスは契約内容により、紹介・コンサル・業務受託・研修と支援範囲が異なります。
「どちらかに寄せて全部任せる」と、費用や情報共有の線引きが曖昧になります。最初に「制度・公的相談は公的機関、社内運用設計は民間サービス」と役割を分けてから契約を組みます。
失敗#3
支援機関に共有する情報が不足している
相談時に「障害者雇用を始めたい」とだけ伝えても、抽象的な助言で終わってしまいます。支援者は社内の業務や体制を見ていないため、こちらから情報を渡さないと、具体的な提案が出てきません。
事前に、任せたい業務、勤務条件、職場環境(音・移動・電話・来客)、既存社員の体制、本人と共有してよい範囲を整理し、初回相談の場に持参します。
失敗#4
定着支援を採用後に初めて考える
入社後の面談頻度・相談担当・支援機関との連絡方法を採用前に決めていないと、トラブルが起きてから場当たり的な対応になりがちです。
採用前の段階で、入社後1か月・3か月・6か月の面談予定、社内相談窓口、外部支援機関との連絡ルートをセットで設計します。ジョブコーチ支援や障害者就業・生活支援センターとの連携は、入社前から相談を始められます。
使い分けの具体例3つ
支援サービスの組み合わせ方は、企業の状況によって変わります。ここでは、障害者雇用で起こりやすい3つの場面ごとに、どの支援をどう使い分けるかを整理します。
自社が「採用前で止まっているのか」「受け入れ前で迷っているのか」「入社後の定着でつまずいているのか」を見ながら、近いケースを確認してみてください。
- 初めて障害者雇用を始める企業
求人票や職務設計から整えたいときの組み合わせ - 候補者はいるが配属先が不安な企業
受け入れ方法や指導体制を整えたいときの組み合わせ - 入社後に勤怠や作業の波が出ている企業
面談、支援機関連携、定着支援を見直したいときの組み合わせ
例#1
初めて障害者雇用を始める企業
採用したい意向はあるが、任せる仕事や求人票の書き方が決まっていない段階の企業のケースです。
まずは、ハローワーク(事業主向け窓口)で求人相談を行い、職務内容や求人条件を整理します。あわせて、職務設計や雇用管理の専門助言が必要な場合は、地域障害者職業センター(JEED)にも並行して相談します。
さらに、社内ルール・管理職向け説明資料の整備は、必要に応じて民間コンサルや研修事業者を組み合わせましょう。
例#2
候補者はいるが配属先が不安な企業
就労移行支援事業所や支援機関から候補者の紹介・相談があり、現場が受け入れ方法を迷っている企業のケースです。
まずは、本人の同意を前提に、紹介元の支援機関と仕事内容、通勤、勤務時間、指示方法、相談先を事前に確認します。
そのうえで、入社後の不安が大きい場合は、ジョブコーチ支援の申請を検討します。職場適応援助者(ジョブコーチ)の支援は、地域障害者職業センターまたは社会福祉法人等の訪問型機関を通じて利用できます。
例#3
入社後に勤怠や作業の波が出ている企業
採用はできたものの、欠勤連絡、作業ミス、相談の遅れが続き、現場だけでは対応しきれない企業のケースです。
まずは、面談記録を整理し、本人と支援機関に共有してよい範囲を本人へ確認します。そのうえで、ジョブコーチや障害者就業・生活支援センターなど、定着支援に強い相談先へつなぎます。
さらに、社内の指示方法や評価基準そのものが原因と疑われる場合は、面談記録と現場の事実をもとに、配慮の見直しと評価基準の言語化を並行して進めます。
支援サービスに相談する前の準備
支援サービスに相談する前に、社内で最低限の情報を整理します。採用人数や雇用形態だけでなく、任せたい業務、配属先、職場環境、入社後に不安な点まで共有できると、支援者からの助言も具体的になります。
最初から完璧に決める必要はありません。分かっていること、未定のこと、相談したいことを分けて持参すると、求人・職務設計・定着支援のどこから着手すべきか整理しやすくなります。
- 採用条件
採用予定人数、勤務時間、雇用形態、想定する給与条件 - 任せたい業務
切り出せている業務、まだ切り出せていない業務、繁忙期の有無 - 受け入れ体制
配属予定部署、指導担当、相談担当、面談頻度の希望 - 職場環境
音、移動、電話、来客、休憩場所、在宅勤務の可否 - 採用後の不安
過去に起きた困りごと、現場が不安に感じている点 - 情報共有の範囲
支援機関と共有してよい情報、本人同意を取る必要がある情報
これは、本人の障害特性を一方的に聞き出すための準備ではありません。業務上の支障と調整方法を確認するための情報整理として社内で共有しておくと、聞きすぎや共有しすぎを防ぎやすくなります。
関連記事
障害者雇用支援サービスを選ぶときは、ハローワーク、エージェント、人材紹介、コンサルの役割を分けて理解しておくと、依頼範囲を整理しやすくなります。
この記事では支援サービス全体の使い分けを解説したため、個別サービスの特徴や活用方法を詳しく確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
障害者雇用支援サービスでよくある質問
- 障害者雇用支援サービスはまずどこに相談すればよいですか?
-
初めて求人を出す段階ならハローワーク、職務設計や職場適応の専門相談なら地域障害者職業センター、就業面と生活面を含めた支援なら障害者就業・生活支援センターが候補になります。
- 障害者雇用支援サービスは無料で使えますか?
-
ハローワークや地域障害者職業センターなどの公的機関への相談は、原則として費用負担なく利用できます。
一方、民間の人材紹介、研修、コンサルは契約内容により費用が発生します。
- 民間サービスを使えば採用から定着まで任せられますか?
-
契約範囲によって異なります。候補者紹介だけのサービスもあれば、研修や定着面談の支援まで含むサービスもあります。
日々の業務指示や評価は、企業側が責任を持って運用する領域です。
- 公的支援と民間サービスは併用できますか?
-
併用できます。ただし、本人同意、共有する情報の範囲、企業側の窓口を整理してから進めます。
複数の支援者が関わる場合は、誰が何を担当するかを文書化しておくと安心です。
- 支援サービスへ相談する前に何を準備すべきですか?
-
採用予定人数、雇用形態、任せたい業務、配属予定部署、指導担当、職場環境、採用後の不安を整理します。
本人に関する情報を共有する場合は、本人同意の範囲も確認しておきましょう。
まとめ
障害者雇用支援サービスは、採用、職務設計、選考、受け入れ、定着支援のどの工程を補うかで選びます。「総合的にどこが良いか」ではなく、「自社のどの工程に手薄さがあるか」を起点に考えることが大切です。
採用前はハローワークや民間人材紹介、職務設計や職場適応は地域障害者職業センター(JEED)、入社後の定着はジョブコーチや障害者就業・生活支援センターなど、目的別に組み合わせると役割が重なりにくくなります。
- 採用前
求人票、職務内容、選考条件を応募者が判断できる粒度に整える - 受け入れ時
指導担当、相談先、配慮事項、面談頻度を社内で決める - 入社後
ジョブコーチや支援機関と連携し、職場適応と定着を支える - サービス選定時
支援範囲、成果物、本人同意、社内移管、費用条件を確認する
外部支援を使うほど、社内の役割分担も明確にしておく必要があります。任せる範囲、企業が決める範囲、本人と話し合う範囲を分け、採用後まで続く運用に落とし込みましょう。
参考にした公的情報:ハローワークインターネットサービス「事業主の方へ(障害者雇用)」/JEED「地域障害者職業センター」「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」/厚生労働省「障害者雇用・就労支援施策」「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」
