障害者雇用で採用できないときは、応募者の少なさだけでなく、求人票、面接、職域設計、受け入れ体制のどこで詰まっているかを分けて見直します。
最初に増やすべきなのは、募集チャネルではなく判断材料です。任せる仕事、応募条件、選考で見る項目、配慮できる範囲を同じ表に並べ、矛盾をなくします。
この記事では、企業の人事担当者・現場責任者向けに、障害者雇用で採用できない原因と、求人・面接・職域の見直し方を整理します。
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
採用できない原因はどこで起きているか
採用できない状態は、応募不足、選考停滞、内定辞退、現場不安に分けて考えます。状態ごとに見直す場所が違うためです。
| 採用できない状態 | 見直す場所 | 確認すること |
|---|---|---|
| 応募が少ない | 求人票、勤務条件、職務内容 | 仕事内容や配慮事項が具体的に伝わっているか |
| 書類で見送りが多い | 応募条件、必須条件 | 教育で補える条件まで足切りにしていないか |
| 面接で決めきれない | 質問項目、評価基準、記録 | 職務に必要な適性・能力で判断できているか |
| 内定辞退が多い | 説明内容、労働条件、入社後支援 | 求人票と面接説明にずれがないか |
| 現場が不安で進まない | 職域、教育、相談窓口 | 誰が何を支援するか決まっているか |
厚生労働省は、公正な採用選考では応募者に広く門戸を開き、本人の適性・能力に基づく採用基準にすることを基本としています。
つまり、採用できない理由を障害名や印象に置くのではなく、予定職務、応募条件、選考方法、配慮検討の設計に戻して確認することが重要です。
出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」「公正な採用選考チェックポイント」(2026年5月確認)
障害者雇用で採用できない主な原因
採用できない原因は、候補者のスキル不足だけではありません。企業側の募集設計が曖昧だと、応募者にも現場にも判断材料が足りなくなります。
原因#1
仕事内容が広すぎる
「事務全般」「軽作業」「庶務補助」だけでは、応募者が自分に合う仕事か判断しにくくなります。面接側も、何ができれば採用水準なのかを説明できません。
データ入力、郵便物仕分け、PDF化、備品確認、検品、清掃、在庫確認など、実際の作業に分けると、応募条件と配慮事項を具体化できます。
原因#2
応募条件が高すぎる
PCスキル、電話対応、対人調整、フルタイム勤務、通勤、マルチタスクなどをすべて必須にすると、対象者が狭くなります。
職務に欠かせない条件、入社後に教えられる条件、会社側で調整できる条件を分けると、不要な足切りを減らせます。
原因#3
配慮事項の書き方が曖昧
「配慮します」「相談可」だけでは、応募者はどこまで相談してよいか判断できません。一方で、配慮事項を細かく書きすぎると、対象者を狭めることがあります。
求人票では、相談できる項目の例を示しつつ、個別に話し合う余地を残します。通院、指示方法、休憩、座席、面接方法、支援機関連携などに分けます。
原因#4
面接評価が職務と結びついていない
「明るさ」「前向きさ」「職場になじめそうか」だけで判断すると、面接官ごとに評価が変わります。応募者も、何を評価されたのか分かりにくくなります。
職務理解、作業経験、報告相談、勤務条件、配慮確認など、予定職務に関係する項目に絞って質問を作ります。
原因#5
現場の不安が解消されていない
人事が採用したいと思っても、現場が「教える時間がない」「配慮の範囲が分からない」と感じると採用判断が止まります。
採用前に、教育担当、相談先、初月の業務量、困ったときの連絡経路を決めておくと、現場の不安を小さくできます。
出典: ハローワークインターネットサービス「求人申込み手続きの流れ」、JEED「雇用支援・相談窓口」(2026年5月確認)
求人票の見直し方
求人票は、応募者を集める広告であると同時に、採用後の労働条件の前提です。実際の仕事を誤解なく伝えているかを確認します。
求人票#1
仕事の内容を作業単位にする
職種名だけでなく、作業名、頻度、使用ツール、成果物、確認者を記載します。応募者が入社後の働き方を想像できる粒度にします。
事務補助なら「請求書のPDF化」「専用システムへの入力」「郵便物の仕分け」「備品数の確認」のように分けます。
求人票#2
必須条件と歓迎条件を分ける
採用できない求人では、必須条件が多くなりがちです。入社後に教えられることまで必須にしていないかを見直します。
| 区分 | 求人票での扱い | 見直し例 |
|---|---|---|
| 必須条件 | 職務遂行に欠かせない条件 | 指定ソフトへの入力、報告、所定時間の作業 |
| 教育可能条件 | 入社後に教える条件 | 社内システム、商品知識、手順書の読み方 |
| 歓迎条件 | あれば評価する条件 | 類似業務経験、資格、業界知識 |
| 調整可能条件 | 相談して決める条件 | 勤務時間、休憩、指示方法、座席 |
求人票#3
労働条件を後から変えない
ハローワークは、求人票に記載された労働条件が採用後の労働条件になることを前提に、分かりやすく誤解のない内容を求めています。
面接で職種、賃金、就業時間、休日、就業場所を変えると、辞退やトラブルにつながります。条件が違う場合は求人を分けます。
求人票#4
配慮事項は例示と相談範囲で書く
「合理的配慮あり」だけでは、応募者に伝わりにくくなります。相談しやすい項目を例示し、実施内容は職務や本人の状況に応じて話し合うと示します。
記載例としては、「面接方法、勤務時間、休憩、指示方法、通院、支援機関との連携は個別に相談できます」のように項目を分けます。
出典: ハローワークインターネットサービス「求人申込み、採用・選考に当たっての留意事項」(2026年5月確認)
面接・選考の見直し方
求人票を見直しても採用できない場合は、面接で何を確認し、どう判断しているかを点検します。障害者雇用でも、公正採用選考の基本は変わりません。
選考#1
評価項目を職務に結びつける
評価項目は、予定職務に必要な行動へ置き換えます。「協調性」ではなく「決められた報告タイミングで相談できる」のように定義します。
面接官が複数いる場合は、誰がどの項目を確認するかを事前に決めます。判断理由を同じ様式で記録すると、見送り理由も振り返りやすくなります。
選考#2
聞いてよいことと避けることを分ける
厚生労働省は、本人の適性・能力に関係のない事項を応募書類や面接で把握することは、就職差別につながるおそれがあると示しています。
家族、生活環境、思想信条などではなく、予定業務で支障が出やすい場面、必要な調整、出勤条件、作業指示の受け方などに絞ります。
選考#3
配慮確認を不利な評価に直結させない
雇用分野では、募集・採用の段階でも障害者差別が禁止され、合理的配慮の提供が関係します。配慮希望があることだけで見送り理由にしない運用が必要です。
合理的配慮は、本人からの申出を受け、支障となっている事情を確認し、話し合って措置内容を検討します。
希望どおりの配慮が難しい場合も、職務上の制約、過重な負担、代替案を確認します。実施できない理由と、別に取れる方法を記録します。
選考#4
書類だけで判断しすぎない
書類では、作業の正確性、報告相談、職場での支援の受け方が見えにくい場合があります。必要に応じて、職場見学や短時間の作業確認を組み合わせます。
ただし、選考方法は応募者ごとに場当たり的に変えません。評価項目、時間、確認する作業、配慮内容を事前に決め、同じ職務基準で見ます。
出典: 厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」(2026年5月確認)
職域と受け入れ体制の見直し方
応募があっても採用に至らない場合、職域が狭すぎるか、受け入れ体制が未整理のことがあります。任せる仕事と支援方法をセットで設計します。
職域#1
既存職種に当てはめすぎない
既存の正社員職種や一般求人にそのまま当てはめると、電話、外出、長時間勤務、複数業務の同時対応などが高い壁になることがあります。
作業を分解し、担当できる部分を束ねて一つの職務にします。既存社員の負担が減る作業や、滞留しやすい定型作業から探します。
職域#2
初月の業務量を小さく始める
採用時点で完成形の働き方を求めると、候補者も現場も不安が大きくなります。初月は作業範囲、報告方法、確認者を絞ります。
たとえば、最初は入力とPDF化だけにし、慣れてから郵便物仕分けや社内連絡を加える方法があります。
職域#3
相談窓口を先に決める
採用後に困ったときの相談先が決まっていないと、現場責任者だけに負担が集中します。本人、人事、現場、支援機関の連絡経路を先に決めます。
相談窓口は、本人の同意を前提に共有範囲を決めます。障害名を広く共有せず、仕事上必要な配慮、連絡方法、緊急時の対応に絞ります。
職域#4
支援機関を採用前から使う
ハローワークでは、職域開拓、雇用管理、職場環境整備などについて事業主からの相談を受けています。
JEEDの地域障害者職業センターでも、事業主への雇用管理の相談・援助を扱っています。求人票を出す前の相談先として使えます。
出典: ハローワークインターネットサービス 事業主向け障害者雇用ページ、JEED「地域障害者職業センター」(2026年5月確認)
注意点と法的な線引き
採用できないときほど、焦って条件を変えたり、面接で広く聞きすぎたりしやすくなります。採用数を増やす前に、選考の線引きを確認します。
注意点#1
障害種別で一律に判断しない
「この障害種別は難しい」と一律に扱うと、職務に必要な適性・能力で見る原則から外れます。判断は、予定職務と個別の働き方に基づいて行います。
確認するのは、障害名そのものではなく、担当業務で支障が出やすい場面、必要な調整、会社が実施できる範囲です。
注意点#2
採用基準を途中で変えない
求人票では経験不問と書き、面接で経験必須として扱うと、応募者の期待を裏切ります。条件変更が必要な場合は、求人票と面接説明をそろえます。
不採用理由も、年齢、家族状況などではなく、職務要件や採用基準との関係で記録します。
注意点#3
過重な負担を理由にする前に代替案を検討する
合理的配慮では、事業活動への影響、実現困難度、費用・負担、企業規模、公的支援の有無などを踏まえて検討します。
希望する配慮を実施できない場合も、本人と話し合い、別の方法で支障を減らせないか確認します。判断の過程を残すことも重要です。
出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」(2026年5月確認)
具体例: 採用できない状況の見直し方
採用できない状況は、求人、面接、現場準備のどこで止まっているかを分けると改善策を選びやすくなります。以下では3つの場面で整理します。
具体例#1
事務補助の応募が集まらない
求人票に「事務全般」「電話対応あり」「PC基本操作」とだけ書いていると、具体的な仕事量や配慮の余地が伝わりません。
見直す場合は、電話対応を必須から外せるか、データ入力やPDF化などの作業を分けられるかを確認します。勤務時間、休憩、指示方法、通院相談の範囲も書きます。
求人票では、「毎日行う作業」「週数回の作業」「慣れてから任せる作業」に分けると、応募者が判断しやすくなります。
具体例#2
面接で見送りが続く
面接後に「不安がある」「現場に合わなそう」とだけ記録している場合、採用基準が曖昧です。何が不安なのかを職務要件に戻して確認します。
たとえば、報告相談が不安なら、困った場面をどう共有するかを質問します。作業速度が不安なら、短い実技や職場見学で確認します。
配慮希望が出た場合は、希望の有無ではなく、職務上の支障、調整案、代替案を分けて記録します。
具体例#3
現場が受け入れを決めきれない
現場が採用に慎重な場合、仕事の教え方や相談先が未整理のことがあります。「採用してから考える」ではなく、初月の運用を先に決めます。
最初の担当作業、教育担当、確認タイミング、困ったときの連絡先、支援機関との連携方法を1枚にまとめます。
社内だけで判断しにくい場合は、ハローワークや地域障害者職業センターに相談し、職域や雇用管理の見直しに使います。
支援機関に相談するタイミング
採用できない状態が続くときは、求人公開後ではなく、求人票を作る前に相談する方が見直しやすくなります。職務や条件が固まりすぎる前に相談できるからです。
| 相談先 | 相談しやすい内容 | 使うタイミング |
|---|---|---|
| ハローワーク | 求人票、職域開拓、雇用管理、職場環境整備 | 求人票作成前、応募が少ないとき |
| 地域障害者職業センター | 雇用管理の相談、支援計画、ジョブコーチ支援 | 現場の不安が強いとき |
| 支援機関 | 本人との情報共有、定着支援、相談窓口づくり | 面接前後、入社前、入社直後 |
支援機関を使う目的は、採用判断を外部に任せることではありません。企業が職務、配慮、支援体制を整理し、採用後に働き続けられる条件を整えることです。
出典: ハローワークインターネットサービス 事業主向け障害者雇用ページ、JEED「雇用支援・相談窓口」(2026年5月確認)
よくある質問
採用できない原因を切り分けるときは、求人、面接、職域、配慮検討を同時に確認します。よくある質問に絞って整理します。
FAQ#1
障害者雇用で応募がない場合、最初に何を見直すべきですか?
最初に見るのは、求人票の仕事内容と応募条件です。職種名だけでなく、作業内容、頻度、勤務条件、相談できる配慮事項を具体化します。
そのうえで、必須条件が多すぎないか、教育で補える条件を足切りにしていないかを確認します。
FAQ#2
配慮が必要な応募者を採用すると現場負担が増えませんか?
現場負担をゼロにすることはできませんが、負担を見える化して分散することはできます。初月の業務量、教育担当、相談窓口、支援機関連携を先に決めます。
配慮内容は本人と話し合い、職務上必要な範囲に絞って検討します。希望どおりが難しい場合も、代替案を確認します。
FAQ#3
採用基準に達しない場合、不採用にしてもよいですか?
予定職務に必要な適性・能力に基づき、合理的配慮を検討しても職務遂行が難しい場合は、採用基準との関係で判断します。
ただし、障害種別や配慮希望の有無だけで一律に判断しないことが重要です。確認した事実、検討した配慮、代替案、判断理由を記録します。
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まとめ
障害者雇用で採用できないときは、応募者側の問題として片づけず、求人票、面接、職域、受け入れ体制を分けて確認します。
応募が少ないなら求人票、面接で見送りが続くなら評価基準、現場が迷うなら職務設計と相談窓口を見直します。
採用数を増やす前に、仕事内容、採用基準、配慮の相談範囲をそろえることが重要です。必要に応じて、ハローワークや地域障害者職業センターにも相談しましょう。
