障害者採用の面接で聞いてはいけないことと適切な質問例

障害者採用の面接で聞いてはいけないのは、職務遂行に必要な適性・能力、勤務条件、合理的配慮の検討と関係しない質問です

面接官がまず行うべきことは、聞きたいことを増やすことではありません。職務要件、評価基準、確認してよい配慮事項、記録に残す情報を面接前にそろえることです。

この記事では、企業の人事担当者・現場責任者向けに、障害者採用で避けたい質問、適切な聞き換え例、面接票と社内共有の整え方を整理します。

この記事でわかること
  • 面接で聞いてはいけない質問の具体例
  • 家族・病歴・思想信条を聞くと問題になる理由
  • NG質問を職務に関係する質問へ言い換える方法
  • 面接票と評価表に残してよい情報の範囲
  • 合理的配慮を確認するときに聞きすぎないコツ
目次
編集 セオリーズ編集部

本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。

面接で聞いてよい範囲を先に決める

障害者雇用 面接で聞いてよいこと・避けたいこと

障害者採用の面接では、障害名や私生活を詳しく聞くのではなく、今回任せる職務を進められるか、どの条件を整えると働きやすいかを確認してください。

厚生労働省は、公正な採用選考では応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力に基づく基準で採用選考を行うことを示しています。

確認する目的聞いてよい範囲避ける範囲
職務遂行経験、スキル、作業手順、報告方法障害名だけで向き不向きを決める
勤務条件勤務時間、休憩、出社日数、通勤上の調整病歴や生活歴を広く聞く
合理的配慮業務上の支障、希望する調整、実施可能性、代替案診断名や等級だけで評価する
社内共有本人同意、共有範囲、相談窓口、記録方法家族や支援者へ本人同意なく確認する

採用面接で必要なのは、「知っておくと安心な情報」ではなく、「職務と選考に必要な情報」です。この線引きが曖昧だと、善意の雑談でも不適切な質問になりやすくなります。

面接前に、聞く目的、記録に残す情報、社内で共有する範囲を決めておくと、面接官ごとの質問のばらつきも防ぎやすくなります。

出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本

障害者採用の面接で聞いてはいけないこと

聞いてはいけないことは、障害に関する質問だけではありません。本人の適性・能力に関係しない事項や、本来自由であるべき事項を把握する質問は避けます。

面接で避けたい質問の主な範囲
  • 本籍・出生地・家族構成・住宅状況など本人に責任のない事項
  • 宗教・思想・支持政党など本来自由であるべき事項
  • 職務と関係しない病歴・治療歴・服薬内容の確認
  • 障害名や手帳の等級だけで合否を判断する質問

NG#1
本籍・出生地・家族・住宅状況

本籍、出生地、家族構成、家族の職業、住宅状況、生活環境などは、本人の職務遂行能力と関係しません。採用後の定着を心配して聞いたつもりでも、本人に責任のない事項を把握する質問になりやすいため注意が必要です

たとえば「ご家族はサポートしてくれますか」と聞くのではなく、勤務中の相談先や会社として必要な連絡方法を確認してください。確認したい目的を、家庭状況ではなく職務上の連絡体制に置き換えましょう。

NG#2
宗教・思想・支持政党・購読紙

宗教、思想、人生観、支持政党、購読新聞、愛読書、尊敬する人物などは、本来自由であるべき事項にあたります。応募者の人柄を知りたい場面でも、価値観そのものを評価対象にする質問は避けましょう

評価したい内容が協調性や仕事への向き合い方であれば、過去の業務経験、報告の仕方、チームで仕事を進めた経験に変換します。職務行動に結びつく質問へ置き換えることが重要です。

NG#3
合理的な必要性がない健康診断・病歴確認

病名、発症時期、服薬内容、治療歴を広く聞くと、職務と関係しない医療情報まで集めることになります。採用選考時の健康診断も、合理的・客観的な必要性がない場合は就職差別につながるおそれがあります

確認すべきなのは、病歴そのものではなく、勤務時間、休憩、作業環境、緊急時対応など、職務運用に必要な範囲です。「治療内容」ではなく「勤務上、事前に相談したい調整はありますか」と聞き換えます。

NG#4
障害名だけで合否へ結びつける質問

「その障害だと難しいですよね」といった聞き方は、本人の経験、能力、職場側の調整可能性を見ない質問です。障害名や手帳の等級だけで、合否や配属の可否を判断しないようにします

面接では、担当予定業務を具体的に説明し、支障が出そうな作業条件と必要な配慮を確認してください。障害名を起点にするのではなく、職務内容と本人の経験・希望する調整を照らして確認しましょう。

出典:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項

避けたい質問を職務に関係する質問へ言い換える

障害者雇用 避けたい面接質問と言い換え例

NG質問を減らすには、「その情報を何のために使うのか」を面接票に書きます。説明できない質問は外し、職務や合理的配慮の確認に言い換えます

避けたい質問問題になりやすい点聞き換え例
どのような障害ですか診断名の把握が目的化しやすい今回の仕事内容で、支障が出そうな作業や必要な配慮はありますか
病歴を詳しく教えてください職務と関係しない医療情報へ広がる勤務時間や業務量で、事前に調整したいことはありますか
家族は支援してくれますか家族状況の把握につながる勤務中の連絡方法や相談窓口で希望する形はありますか
通院日はいつですか必要性なく私生活へ踏み込む場合がある選考日程や勤務条件で調整が必要な曜日・時間帯はありますか
手帳の等級を教えてください等級だけで能力や配慮を判断しやすい採用手続きで必要な書類は、選考とは分けて案内します
前職は体調が理由で辞めたのですか退職事情や病歴の深掘りになりやすいこれまで働きやすかった業務指示や環境はありますか
結婚や家族の予定はありますか適性・能力と関係しない情報の把握になる求人票の勤務条件で、確認しておきたい点はありますか

聞き換え後の質問でも、回答をどこまで記録するかを決めます。記録するのは、職務遂行、勤務条件、配慮、社内共有に必要な範囲です。

厚生労働省の公正採用選考Q&Aでは、話の流れで尋ねた事項にも就職差別につながるおそれがある項目が含まれる場合があると案内されています。

出典:厚生労働省「よくある質問

合理的配慮は聞いてよいが聞き方を絞る

障害のある応募者に配慮事項を確認すること自体は、避けるべきことではありません。問題は、職務や選考に必要な範囲を超えて聞きすぎることです

合理的配慮指針では、募集・採用時に支障となっている事情と希望する措置について、障害のある方から申出を受け、事業主が話し合う流れが示されています。

確認場面確認してよいこと避ける広げ方
面接案内面接時間、休憩、筆談、オンライン面接、同席希望障害の詳細や病歴を事前に求める
選考方法試験時間、資料形式、説明方法、回答方法の調整障害種別だけで一律に扱う
仕事内容作業手順、確認方法、報告方法、苦手な環境できない前提で質問する
勤務条件勤務時間、休憩、通勤、出社頻度の相談通院理由や生活状況を細かく聞く
入社後共有相談窓口、支援機関同席、共有範囲、本人同意本人同意なしに支援者へ連絡する

希望された配慮をそのまま実施できない場合でも、直ちに不採用理由へ結びつけるのは避けます。過重な負担、代替案、実施時期を本人と話し合います。

応募者が希望する措置を具体的に言いにくい場合は、企業側から実施可能な選択肢を示して話し合います。面接方法、休憩、指示の文書化、支援機関同席などが検討対象です。

出典:厚生労働省「合理的配慮指針

面接票と評価表を分ける

NG質問を防ぐには、面接官の注意だけに頼らない設計が必要です。質問票、評価表、配慮記録、社内共有メモを分けると、集める情報を整理しやすくなります。

面接で使う記録の分け方
  • 質問票
    職務要件に沿って面接で確認する項目を整理する
  • 評価表
    採否判断に使う経験・スキル・職務理解を記録する
  • 配慮記録
    入社後の受け入れ準備に必要な配慮事項を残す
  • 社内共有メモ
    共有先・共有内容・本人同意の有無を管理する

設計#1
質問票は職務要件から作る

質問票には、任せる業務、必要なスキル、勤務条件、指示方法、配慮事項だけを入れます。職務と関係しない家族状況、生活歴、病歴などは、質問票の段階で外しておきます

たとえば「電話対応が必須か」「チャットで代替できるか」「定型作業が中心か」を先に決めると、面接で確認する内容が具体的になります。

質問票に各質問の目的を添えておくと、面接官が雑談の流れで不要な情報を聞きすぎるリスクを減らせます。

設計#2
評価表は採否判断に使う情報だけにする

評価表には、経験、スキル、職務理解、勤務条件との一致、配慮を踏まえた実施可能性を記録します。評価項目は、求人票に書いた仕事内容や採用基準と対応させます

診断名、家族状況、生活歴、支援者の有無など、採否に不要な情報を評価欄へ残さない運用にします。

評価表に残す情報を絞ることで、応募者を本人の適性・能力に基づいて比較しやすくなります。

設計#3
配慮記録は入社後準備へつなげる

配慮に関する記録は、採否判断のためだけではなく、入社後の受け入れ準備に使いましょう。面接で確認した内容を、職場で再現できる形に整理することが重要です

共有する内容は、指示方法、休憩、作業環境、相談先、緊急時対応など、職場で必要な範囲に限定します。

診断名の詳細ではなく、実際の業務で必要になる対応を記録すると、本人が入社後に同じ説明を繰り返す負担も減らしやすくなります。

設計#4
面接官全員で聞かない事項を確認する

厚生労働省は、面接における質問事項をあらかじめ決め、職務遂行に必要な適性・能力を評価するために必要な事項にするよう示しています。

複数の面接担当者がいる場合は、面接前に質問票、聞き換え例、応募者から私生活情報が出た場合の戻し方をそろえます

「聞いてはいけないこと」を共有するだけでなく、聞きたくなったときにどの質問へ置き換えるかまで決めておくと、面接官ごとのばらつきを防ぎやすくなります。

出典:厚生労働省「採用選考の具体的な方法

面接場面別の聞き換え具体例

ここでは、企業の障害者採用で起きやすい4つの場面に分け、避けたい聞き方と確認すべき内容を整理します。

場面別に確認したい聞き換えの視点
  • 事務職では、障害名ではなく作業手順や確認方法を聞く
  • 店舗・倉庫職では、体調全般ではなく作業条件を具体化する
  • 連絡方法は、性格ではなく実際の業務連絡に沿って確認する
  • 支援機関の同席時は、本人の意思確認と共有範囲を明確にする

例#1
事務職でミスが心配な場合

避けたい聞き方は、「障害の影響でミスが増えませんか」と先に決めつける質問です。診断名や障害特性だけで、正確性や注意力を判断する印象につながります

適切なのは、入力、照合、納期、報告方法などの業務内容を説明し、確認方法を聞くことです。

質問例:
「この業務では請求書の照合と入力があります。正確に進めるために使いやすい確認方法はありますか?」

この聞き方であれば、障害名ではなく、実際の業務で必要な手順や配慮を確認できます。

例#2
店舗・倉庫職で体力面を確認したい場合

避けたい聞き方は、「体力的に大丈夫ですか」と広く聞き、健康状態全体を答えさせることです。応募者は否定しにくく、回答しても職務との関係が曖昧になりやすいです

適切なのは、立ち仕事、移動距離、重量物、休憩場所などを具体的に説明し、調整が必要な作業条件があるかを確認することです。

聞き換え例:
「1回20分ほど立って行う作業があります。姿勢や休憩の取り方で事前に相談したい点はありますか?」

このように、体力全般ではなく、作業条件に沿って確認することで、必要な配慮や配置調整を検討しやすくなります。

例#3
コミュニケーション方法を確認したい場合

避けたい聞き方は、「周囲とうまくやれますか」と広く聞き、性格評価へ寄せることです。協調性を確認したい場合でも、抽象的な聞き方では面接官の印象評価になりやすくなります。

適切なのは、口頭説明、チャット、定例会議、レビュー依頼など、実際の連絡方法を示したうえで確認することです。

質問例:
「作業依頼はチャットと週1回の定例で行います。内容を確認しやすい連絡方法はありますか?」

この聞き方であれば、性格ではなく業務上の連絡方法に絞って確認でき、入社後の指示方法や相談体制にもつなげやすくなります。

例#4
支援機関の同席を希望された場合

避けたい進め方は、支援者だけに説明を求め、応募者本人の意思確認を省くことです。支援機関の同席は、本人の代わりにすべてを説明してもらう場ではありません

適切なのは、同席者の役割、本人が答える範囲、補足してよい情報、面接後の共有範囲を本人同意のもとで確認することです。

確認例:
「基本的な質問はご本人に伺い、必要に応じて支援機関の方に補足いただく形でよろしいですか?」

この場合も、支援機関と連携する際は、質問の中心を応募者本人に置き、共有する情報の範囲を事前にそろえましょう。

面接前チェックリスト

面接前に次の項目を確認すると、聞きすぎと確認漏れを同時に減らせます。質問内容だけでなく、評価表や配慮記録の扱い方までそろえておきましょう。

面接前に確認したい項目
  • 求人票の仕事内容と面接質問が対応している
  • 職務要件、必須条件、調整できる条件を分けている
  • 面接官全員が同じ質問票と評価表を使う
  • 本人に責任のない事項、本来自由であるべき事項を質問票から外している
  • 合理的配慮の申出先を面接案内で伝えている
  • 配慮事項を採否判断と入社後準備で分けて記録する
  • 本人同意なしに支援機関や家族へ連絡しない
  • 希望された配慮を実施できない場合の代替案を検討する

チェックリストは面接官を制限するためではなく、応募者を職務に関係のない情報で評価しないために使いましょう。面接前に確認しておくことで、質問のばらつきや記録の残し方のズレを防ぎやすくなります。

面接で聞いてはいけないことを整理したら、確認してよい質問例、採用基準、求人票の書き方もあわせて確認しておくと安心です。質問・評価・求人内容をそろえることで、選考全体の一貫性を高めやすくなります。

障害者採用の面接で聞いてはいけないことに関するFAQ

障害者手帳の有無は面接で聞いてよいですか?

採否判断のために等級や内容を深掘りする聞き方は避けます。選考では、職務遂行上の支障、必要な配慮、勤務条件との関係を中心に確認してください。雇用率算定など手続き上必要な確認は、採用手続きや本人同意の流れと分けて案内しましょう。

通院頻度は面接で聞いてよいですか?

通院理由や病歴を詳しく聞くのではなく、勤務時間、休憩、休暇取得で調整が必要かを確認してください。業務上必要な範囲に限定し、応募者が話したくない医療情報や私生活情報へ広げないようにします。

応募者から家族や病歴の話が出たらどうしますか?

話を遮る必要はありませんが、面接官から深掘りしません。会話は、勤務条件、業務上の支障、必要な配慮へ戻します。記録には職務に関係する配慮や勤務条件だけを残し、採否に不要な情報は評価材料にしないようにします。

合理的配慮をすべて実施できない場合は不採用にできますか?

配慮希望があることだけで判断せず、職務上の支障、実施可能性、過重な負担、代替案を個別に確認してください。実施できない措置がある場合は、理由を整理し、別の調整で対応できないかを本人と話し合います。

障害者採用の面接で聞いてはいけない質問例は何ですか?

本籍、家族構成、思想信条、病歴、生活歴など、職務遂行に必要な適性・能力と関係しない質問は避けます。障害名や手帳の等級だけで判断せず、担当業務、勤務条件、必要な配慮に関係する範囲へ聞き換えましょう。

まとめ:聞いてはいけない質問は職務に関係する聞き方へ置き換える

障害者採用の面接では、本人の適性・能力と関係しない情報を聞かないことが重要です。

面接で確認したい線引き
  • 本籍・家族・思想信条など、職務と関係しない事項は聞かない
  • 病歴や診断名ではなく、業務上の支障と必要な配慮を確認する
  • 障害名や手帳の等級だけで、合否や配属を判断しない
  • 聞いた情報は、採否判断と入社後準備で分けて記録する
  • 面接票と評価表を分け、不要な情報を評価欄に残さない

質問票や聞き換え例を事前にそろえ、面接官ごとの質問のばらつきを防ぎましょう。

参考にした公的情報:厚生労働省公式(公正な採用選考の基本 / 採用選考時に配慮すべき事項 / 採用選考の具体的な方法 / よくある質問 / 雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮 / 合理的配慮指針


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