障害者雇用率が未達成の場合は、最初に不足人数、納付金の対象有無、行政指導のリスク、採用・定着計画を分けて確認します。
未達成だけで直ちに企業名が公表されるわけではありません。ただし、常用労働者100人超の事業主では、不足人数に応じて障害者雇用納付金の確認が必要になります。
この記事では、企業の人事・現場責任者向けに、未達成時に何が起きるのか、先に確認すべき数字、採用計画と定着支援の進め方を整理します。
- 不足人数
法定雇用障害者数に対して、何人分不足しているかを確認する - 納付金の対象有無
常用労働者100人超の事業主は、納付金制度の確認が必要になる - 行政対応の見通し
雇入れ計画作成命令や企業名公表までの流れを把握する - 改善に向けた実務対応
採用計画、業務切り出し、受け入れ体制、定着支援を見直す
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
未達成時に起きること
障害者雇用率の未達成は、「人数が足りない」という一点だけで処理しない方が安全です。
雇用状況報告、納付金、ハローワークからの指導、採用計画、合理的配慮の整備がつながっているためです。
| 確認項目 | 主な内容 | 社内で行う対応 |
|---|---|---|
| 雇用状況報告 | 対象事業主は毎年6月1日現在の雇用状況を報告する | 常用労働者数、短時間労働者、障害のある労働者のカウントを確認する |
| 不足人数 | 法定雇用障害者数に対して何人分不足しているかを見る | 月別の不足見込みと採用可能な職務を並べる |
| 納付金 | 常用労働者100人超で未達成の場合、納付金制度の確認が必要になる | 対象有無を確認し、詳細は納付金記事で整理する |
| 行政指導 | 実雇用率が低い場合、雇入れ計画作成命令などの対象になり得る | ハローワーク相談、採用計画、定着施策の進捗を記録する |
| 企業名公表 | 改善が見られない場合に公表される可能性がある | 人数合わせではなく、改善過程と実施状況を残す |
- 法定雇用率で不足人数を試算する
- 100人超かどうかを確認し、納付金の対象有無を見る
- 不足人数を採用可能な職務へ置き換える
- 採用後の定着支援と面談予定を同じ計画に入れる
出典:JEED「事業主の方へ」/厚生労働省「雇用率達成指導の流れ」/JEED「障害者雇用納付金制度の概要」
企業名公表までの流れ
企業名公表は、未達成が判明した瞬間に自動で行われるものではありません。
厚生労働省の資料では、雇用状況報告を起点に、雇入れ計画作成命令、適正実施勧告、特別指導、企業名公表という流れが示されています。
| 段階 | 概要 | 企業側の見方 |
|---|---|---|
| 雇用状況報告 | 毎年6月1日の雇用状況を報告する | 報告前に算定根拠を整える |
| 雇入れ計画 作成命令 | 実雇用率が低い事業主に計画作成を求める | 採用予定、職務内容、定着支援を計画に落とし込む |
| 適正実施勧告 | 計画の実施状況が悪い場合に勧告される | 採用活動だけでなく進捗記録を残す |
| 特別指導 | 改善が特に遅れている企業に、企業名公表を視野に入れて指導する | 経営層、人事、現場で優先度を上げる |
| 企業名公表 | 改善が見られない場合に公表される可能性がある | 信用リスクとして扱い、放置しない |
厚生労働省は、雇入れ計画の適正実施勧告を行っても雇用状況に改善が見られない場合、障害者雇用促進法第47条に基づき企業名を公表できると説明しています。
そのため、未達成時の重要点は「不足しているか」だけではなく、「改善に向けて何を実施し、どこまで進んでいるか」です。
出典:厚生労働省「雇用率達成指導の流れ」/厚生労働省「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について」
納付金だけで対応を終わらせない
障害者雇用率が未達成の場合、常用労働者100人超の事業主では、障害者雇用納付金制度の確認が必要になります。
ただし、納付金は雇用義務を免除するものではありません。納付金の対象になるかを確認したうえで、不足人数をどの職務で補うのか、採用後に定着できる体制をどう整えるのかまで見直すことが重要です。
- 不足人数
何人分不足しているかを月別に確認する - 採用計画
不足人数を採用可能な職務へ置き換える - 職場準備
業務切り出し、配属先、相談体制を整える - 定着支援
入社後の面談予定と支援機関連携を決める
納付金は、障害者雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整する制度です。詳しい対象企業、金額、申告方法を確認したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
出典:JEED「障害者雇用納付金制度の概要」/JEED「事業主の方へ」
2026年7月以降は不足人数を再試算する
2026年6月までは、民間企業の法定雇用率は2.5%です。2026年7月1日以降は2.7%へ引き上げられ、対象企業の目安も40.0人以上から37.5人以上へ広がります。
未達成対策では、現行基準での不足人数だけでなく、7月以降の基準で不足人数がどう変わるかを確認しておくことが大切です。
| 時期 | 民間企業の 法定雇用率 | 対象企業の目安 | 未達成対策で見ること |
|---|---|---|---|
| 2026年6月まで | 2.5% | 40.0人以上 | 現行基準で不足人数を確認する |
| 2026年7月1日以降 | 2.7% | 37.5人以上 | 7月以降の不足人数と対象範囲を再確認する |
同じ従業員数でも、7月以降は必要人数や不足人数が変わる場合があります。現在の基準では達成している企業でも、2.7%で再試算し、採用計画や業務切り出しの着手時期を前倒しできるか確認しましょう。
2026年7月以降の変更点や、対象企業の人数基準を詳しく確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(2026年6月9日確認)
未達成が分かったときの対応手順
未達成が分かったら、採用活動だけを急ぐのではなく、算定、職務、配属、定着支援を同時に整理します。
順番を決めると、人事だけで抱え込まず、現場責任者や支援機関と役割を分けやすくなります。
- 算定対象を確認する
- 不足人数を月別に見る
- 採用する職務を先に決める
- 採用チャネルを組み合わせる
- 定着支援まで計画に入れる
手順#1
算定対象を確認する
まず、常用労働者数、短時間労働者、障害のある労働者のカウントを確認します。雇用率の計算は、単純な社員数ではなく、制度上の算定ルールに沿って行います。
人事台帳、雇用契約書、所定労働時間、障害者手帳や本人同意に基づく確認記録を整理し、算定根拠を残しておきます。報告後に確認が必要になった場合でも、数字の根拠を説明できる状態にしておくことが大切です。
手順#2
不足人数を月別に見る
不足人数は、6月1日時点だけでなく、採用、退職、休職、労働時間変更の見込みにも左右されます。そのため、現在の不足人数だけでなく、数か月先まで月別に見通しておきます。
月別に不足見込みを置くと、採用だけで埋めるのか、配置転換や職務再設計も必要かを判断しやすくなります。納付金の有無だけでなく、いつまでにどの職務で受け入れるかまで並べて管理しましょう。
手順#3
採用する職務を先に決める
採用人数だけを目標にすると、入社後のミスマッチが起きやすくなります。求人化の前に、担当業務、必要なスキル、勤務時間、配慮できる範囲、相談先、評価基準を整理します。
たとえば、定型作業、確認作業、資料整理、データ入力、軽作業、清掃、事務補助など、現場から切り出せる業務を集めます。
そのうえで、誰が教えるのか、どこまでを初期業務にするのか、困ったときの相談先を決めておくと、採用後の定着につながりやすくなります。
手順#4
採用チャネルを組み合わせる
ハローワーク、障害者向け人材紹介、就労移行支援、障害者就業・生活支援センターなど、使えるチャネルは複数あります。職務内容と採用時期に合わせて、相談先と募集方法を組み合わせます。
求人票の作成や制度確認はハローワーク、候補者紹介は人材紹介、職場定着や生活面の相談は支援機関というように、目的ごとに役割を分けると進めやすくなります。自社だけで抱え込まず、外部の支援も早めに使いましょう。
手順#5
定着支援まで計画に入れる
雇用率を達成しても、短期間で離職が続くと同じ問題が繰り返されます。採用時点から、配属前説明、初期面談、業務調整、相談窓口、見直し日を同じ管理表に入れておきます。
入社後1か月、3か月、6か月などの節目で、業務量、指示方法、勤務時間、配慮事項を見直すと、問題を早めに把握しやすくなります。未達成の解消は、採用人数だけでなく、働き続けられる状態を整えることまで含めて考えましょう。
障害者雇用の進め方や採用計画の作り方を詳しく確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
未達成時に避けたい対応
未達成時ほど、短期的な人数合わせに寄りやすくなります。対応を急ぐ場合でも、採用後の職務と支援が追いつかない進め方は避けます。
| 避けたい対応 | なぜ問題になりやすいか | 置き換える対応 |
|---|---|---|
| 人数だけを目標にする | 職務が曖昧なまま採用が進む | 業務量、指示方法、評価基準を先に決める |
| 現場説明を後回しにする | 受け入れ不安や役割不明が残る | 配属前に共有範囲、相談先、フォロー担当を決める |
| 納付金を払えば終わりと考える | 雇用義務と改善に向けた対応は残る | 不足人月の管理と採用・定着改善を同時に進める |
| 障害種別で一律判断する | 職務要件と個別事情を分けられない | 業務遂行に必要な条件と合理的配慮を対話で確認する |
雇用分野では、障害者差別は禁止され、合理的配慮の提供は義務とされています。
未達成対策でも、募集、採用、配置、評価の各場面で、職務要件と個別事情を分けて扱うことが重要です。短期的な人数合わせではなく、職務に合う採用と受け入れ体制の整備を同時に進めましょう。
未達成対策では、人数を満たすだけでなく、任せる仕事と合理的配慮の範囲を整理することが大切です。具体的な進め方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
出典:JEED「事業主の方へ」/厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」
企業規模別に見る未達成時の対応例
未達成時の対応は、企業規模、不足人数、採用可能な職務によって変わります。
ここでは、納付金の対象有無や2026年7月以降の対象拡大も踏まえながら、企業で起きやすい3つの場面を整理します。
- 80人規模で雇用義務がある
納付金の対象外となる場合でも、雇用義務や障害者雇用状況報告への対応は必要 - 250人規模で1人分不足している
納付金の確認だけで終わらせず、採用する職務や受け入れ体制まで具体化する - 2026年7月以降に対象範囲へ入る
対象入り前から人数表、担当者、相談ルート、外部支援機関への相談先を整える
具体例#1
80人規模で雇用義務がある
80人規模の企業は、現行基準でも雇用義務の対象になります。100人以下では納付金制度の対象外となる場面がありますが、雇用義務や障害者雇用状況報告への対応が不要になるわけではありません。
まずは常用労働者数と不足人数を確認し、採用する1人の有無だけで判断しないことが大切です。週所定労働時間、担当業務、教育担当、面談頻度、相談先までセットで決めると受け入れ後の混乱を防ぎやすくなります。
具体例#2
250人規模で1人分不足している
250人規模で未達成の場合は、納付金の見込みと採用計画を同時に確認します。ただし、納付金の試算だけで終わらせず、不足している1人分をどの職務で受け入れるのかまで具体化することが重要です。
現場から定型業務、繁忙期の補助、チェック作業などを集め、業務量と必要な支援を確認してから求人化します。配属先、教育担当、相談窓口を先に決めておくと、採用後のミスマッチを減らしやすくなります。
具体例#3
2026年7月以降に対象範囲へ入る
2026年7月以降は、民間企業の対象企業の目安が37.5人以上へ広がります。これまで対象外だった企業でも、従業員数や短時間労働者の状況によっては対象に入る可能性があります。
小規模な職場では、1人の受け入れが現場運用に大きく影響します。対象範囲に入りそうな場合は、人数表の確認だけでなく、担当者、業務説明、相談ルート、外部支援機関への相談先を先に作っておくことが大切です。
採用計画と定着計画を分けて作る
未達成を解消するには、不足人数を埋める採用計画だけでなく、入社後に働き続けられる定着計画も分けて作ることが大切です。
採用計画は「どの職務で、いつ、何人採るか」を決めるものです。定着計画は「入社後に、誰が、どの頻度で、何を確認するか」を決めるものです。
- 不足人数と達成までの目安時期
- 採用する職務、配属先、教育担当
- 求人票に書く仕事内容、勤務時間、配慮相談の範囲
- 選考で確認する職務遂行上の条件
- 入社後1か月、3か月、6か月の面談予定
- 現場責任者、人事、支援機関の役割分担
行政対応のためだけに計画を作ると、現場で使われない文書になりやすくなります。
毎月見直せる粒度まで落とし込み、採用数と定着状況を同時に追います。未達成を繰り返さないためにも、採用後の面談や業務調整まで計画に含めておきましょう。
障害者雇用率が未達成の場合でよくある質問
- 障害者雇用率が未達成だと、すぐ企業名が公表されますか?
-
未達成だけで直ちに企業名が公表されるとは限りません。
雇入れ計画作成命令や適正実施勧告などを経ても改善が見られない場合に、公表される可能性があります。
- 障害者雇用率が未達成の場合、まず何を確認すべきですか?
-
まず、不足人数、常用労働者数、短時間労働者のカウント、納付金制度の対象有無を確認します。
そのうえで、採用可能な職務や定着支援の体制を整理します。
- 100人以下の企業なら未達成でも対応しなくてよいですか?
-
100人以下の企業でも、対応が不要になるわけではありません。
納付金制度の対象外となる場合はありますが、法定雇用率上の雇用義務や障害者雇用状況報告の対象範囲は別に確認する必要があります。
- 納付金を払えば雇用義務への対応は終わりますか?
-
納付金を支払っても、雇用義務への対応が終わるわけではありません。
納付金は未達成時に確認する制度の一つであり、雇用義務を免除するものではないため、採用計画や職場定着の見直しも必要です。
- 2026年7月以降は未達成リスクが高まりますか?
-
企業によっては高まる可能性があります。
2026年7月以降は民間企業の法定雇用率が2.7%になり、対象企業の目安も37.5人以上へ広がるため、再試算が必要です。
まとめ:未達成時は不足人数と改善計画を分けて確認する
障害者雇用率が未達成の場合は、不足人数だけを見るのではなく、納付金の対象有無、行政指導のリスク、採用計画、定着支援を分けて確認することが大切です。
未達成だけで直ちに企業名が公表されるとは限りませんが、改善に向けた取り組みが進まない場合は、雇入れ計画作成命令や勧告、特別指導の対象になる可能性があります。
納付金の確認だけで対応を終わらせず、どの職務で受け入れるのか、入社後に誰がどの頻度で支援するのかまで計画に入れておきましょう。
- 法定雇用障害者数に対して何人分不足しているか
- 常用労働者100人超で納付金制度の確認が必要か
- 不足人数をどの職務で受け入れるか
- 配属先、教育担当、相談窓口、面談予定を決めているか
- 2026年7月以降の2.7%基準で再試算しているか
まずは自社の不足人数と対象範囲を確認し、採用計画と定着計画を同時に見直すところから始めましょう。
