「ADHDは就職できない?」「向いている仕事がわからない…」と悩みますよね。ADHDがあると、その傾向や度合いによって、就職で不利になることがあります。
例えば、『不注意型』の傾向が強ければ、仕事のミスや納期遅れが目立ち、『多動-衝動型』の傾向が強ければ、人間関係のトラブルがあったり、注意力の分散から、うまくパフォーマンスを出せないこともあります。
この記事では、ADHDの方が就職しにくいと言われる理由や対処法、向いている仕事と向いていない仕事について詳しく解説していきます。
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
ADHDがある方の就職は難しい?
障害者雇用促進法の2018年の改正で、ADHDの方も障害者雇用率の算定基準に加わったので、長期的には改善する見通しではあるものの、目に見えない障害であるADHDの方の就職は、まだ簡単ではありません。
ADHDがある方の就職状況①
ADHDを含む精神障害者の就職率は43.8%
厚生労働省の統計情報によると、発達障害を含む精神障害者の“申込後の就職率は43.8%”と、まだ就職は難しいという状況にあります。
下記グラフは、2011年から2022年までの精神障害者(発達障害含む)の「求人申込数」と「就職件数」及びこれらをもとに算出した「申込後の就職率」の推移です。

※厚生労働省のデータをもとに作成
このように、障害者雇用促進の流れを受けて、申込件数と就職件数は増えていますが、申込後の就職率は43.8%と高くはありません。(申し込んだうち56.2%は就職していない、ということです。)
ADHDのある方の就職状況②
ADHDがある方の就職者数は増えている
2018年に障害者雇用促進法改正で、民間企業が「精神障害者保健福祉手帳」の所有者の雇用を進めているので、ADHDの方の就職者数は伸び続けています。

※厚生労働省 令和4年障害者雇用状況の集計結果より編集部作成
※雇用義務のある民間企業(43.5人以上規模)における雇用人数
上記グラフのように、厚生労働省が公開している最新情報(2022年時点)を見ると、2018年の障害者雇用法改正以降、急激に増加していることがわかります。
障害者雇用促進法の改正に伴う変更点
①精神障害者が「障害者雇用義務」の対象に加わる
②精神障害者の短時間勤務(週20~30時間)の雇用率算定方法が「0.5→1.0」に変更
③民間企業の法定雇用率が「2.0%→2.2%」に変更(2026年以降7月以降は2.7に引き上げ予定)
上記の変更(特に①②)に伴い、民間企業が精神障害者を雇用するメリットが増えたので、2018年を基点として障害者雇用がグッと加速する結果となりました。
※なお一般的に「精神障害者」とは、精神障害者保健福祉手帳を所有する方を指すので、発達障害の方も含まれています。
ADHDのある方の就職状況③
他の精神障害と比べて定着しやすいので有利
ちなみに発達障害のある方は、他の障害をお持ちの方(身体や精神、知的など)と比べて、長期定着しやすい傾向にあります。実際に、1年後定着率“71.5%”と一番高いデータが発表されています。

同じ「精神障害者保険福祉手帳」を所有する精神障害者が“49.3%”であることを踏まえると大きく開いており、長期定着しやすい分、就職活動では有利になります。
企業側は、長期就業しやすい方を採用したがるので、就労が安定しない気分障害(例:うつ病、躁うつ)と比較すると、採用されやすいです。
特に、ADHDの方は、良い職場に出会えれば高いパフォーマンスを出せる傾向にあるので「採用して良かった」という企業も多いです。
発達障害のある方の就職状況④
法定雇用率は段階的に引き上げられる
法定雇用率とは、企業の従業員数に応じて、一定割合以上の障害者雇用を義務付けた制度のことです。基準を満たさない場合、納付金(罰則)が発生します。(厚生労働省)
2026年4月現在、法定雇用率は2.5%なので、従業員40人に対して1人以上の障害者雇用が必要です。今後も段階的に引き上げが予定されています。
- 1988年4月:1.6%
- 1998年7月:1.8%
- 2013年4月:2.0%
- 2018年4月:2.2%
- 2021年3月:2.3%
- 2024年4月:2.5%
- 2026年7月:2.7%(予定)
ADHDがある方の就職が難しい理由
ここではADHDのある方の就職が難しいと言われる理由について解説していきます。
- 採用実績のある企業がまだ少ない
- 目に見えない障害なので配慮が難しい
- 人間関係の摩擦から採用を避けられやすい
ADHDがある方の就職実情①
採用実績のある企業がまだ少ない
もともと障害者雇用は、障害者雇用促進法によって、一定規模の会社では、一定人数の障害者を雇用することが義務付けられているからですが、ADHDが対象に入ったのは2018年からなので、多くの会社に採用実績がなく、踏み切れていない状況にあります。
実際、管理職のほとんどが、ADHDの「配慮ノウハウや管理経験」を持っていないので、採用する候補者を選べる人気企業ほど、避けてしまう傾向があります。
ADHDがある方の就職実情②
目に見えない障害なので配慮が難しい
障害者雇用としての歴史が短いこともありますが、障害が目に見えないので、配慮をすることが難しいというのも背景にあります。
配慮の多くは人間関係やコミュニケーション、あるいは仕事の進め方といった定常的に配慮するべきものであることが多く、本人ですら全て言語化できていないケースもあるので、管理職側の負担は小さくありません。
ADHDがある方の就職実情③
人間関係の摩擦から採用を避けられやすい
また、「多動-衝動性」の傾向が強い場合だと、周囲の人間と摩擦を起こすことがあるので「もう採用したくない」と言われてしまうことも少なくありません。
仕事はどうしてもチームで働く機会が多くはなりますし、他の障害を持っている方(例えば不安障害の方)も同じ空間にいるので、人間関係で問題を起こしやすい場合だと、避けられてしまうことがあります。
ADHDの就職準備|配慮と仕事の向き不向き
ここでは、ADHDの障害特性を踏まえて、職場に求める配慮や適職を検討するにあたって、一般的な傾向をお伝えしていきます。
ADHDを含む発達障害では、他の精神疾患の傾向を併せ持っていることが多く、人によって異なる部分が多いので、あくまで参考程度にとどめてください。
①ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特徴
ADHDとは、注意欠如や多動性といった行動特性がある障害です。一般の方からは「落ち着きがない」「感情的で子供っぽい」と言われることが多いのではないでしょうか。
ここ数年でよく名前を聞くようになりましたが、職場・上司側がADHDの特徴を理解して適切な距離を保てば、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
特徴は「不注意」「多動-衝動性」の2つです。
- 不注意
例:集中力がなく、気が散りやすい
例:細部への注意が抜けやすい、整理・段取りが苦手、忘れ物・紛失が多い - 多動-衝動性
例:感情コントロールしづらく落ち着きがない、順番待ちが苦手
例:衝動性が強く言い方がきつくなる、割り込む等が起きやすい
このように、集中力が持続しない“不注意”と、感情のブレーキが効かず落ち着きがない“多動-衝動性”の特徴を持つのがADHDです。
②ADHDが仕事で直面する困難の例
飽きっぽくて続かないことから、“無責任と思われてしまう”場合もあれば、感情のブレーキが効きにくいので、“些細な不満からトラブルに発展する”場合もあります。
- 不注意
→小さなミスが多くなる
→タスク漏れが多くなる
→仕事を完遂できない、納期を守れない - 多動-衝動性
→冷静さを失い衝動的な決断をする
→感情を押さえられず強い口調になることがある
→衝動的発言から人間関係で衝突を起こしやすい
このように、ADHDの方は、“不注意”が強い方だと「最後までやり遂げることができない」ことが多く、“多動-衝動性”が強い方だと「人間関係で衝突を起こす」ことが多くなります。
③ADHDが職場に求めたい合理的配慮
「不注意」は、注意が散ってしまう要因を減らせば軽減されます。一方で「多動-衝動性」は相手がいることでトラブルに発展するので「理解してもらい、一定の距離を保ってもらうこと」が重要です。
- 不注意
→仕事に集中できる環境を整える
例1. 机についたて設置して視線を遮る
例2. 耳栓やヘッドホンで外部音を遮断する
→ミスが起きにくい設計(チェックリスト、テンプレなど)
追加で別担当によるダブルチェックを徹底する - 多動-衝動性
→動いてよい時間を設ける等
例1.短い休憩を設ける
例2.立ち歩きOKの運用
→会議はアジェンダを事前共有
発言をルール化し挙手制や順番制にする
→注意やフィードバックは1対1で具体的に伝える
上記はあくまで一例ですが、ADHDとして自覚している特性を認識した上で、ストレスなく働くために必要な“合理的配慮”の内容を整理することが重要です。
④ADHDが向いていない仕事
ADHDの方は、下記の特徴を持つ仕事は向いていません。障害特性との相性が悪いので、強いストレスを感じることになります。
- マルチタスクな仕事
- ミスが許されない仕事
- 単純作業を繰り返す仕事
- チームプレイが求められる仕事
- 短期間で成果を確認できない仕事
そのため、以下の仕事は避けてください。
- バックオフィス系全般(経理、事務など)
締切・正確性・同時処理が重なると負荷になりやすい - 飲食、接客業、工場作業
臨機応変な対応やスピード対応で注意が散りやすい - コールセンター、オペレーター
臨機応変な対応やクレーム対応などマルチタスクになりやすい - 管理職、マネージャー
突発的な対応・調整・判断が連続し切替負荷が高い - 医師、看護師、弁護士等
高い正確性と緊急判断でミスの影響が大きい
上記の仕事を割けたうえで、自分が興味を持てて続けられそうな仕事を試してみてください。興味は人それぞれです。模索してみるようにしましょう。
⑤ADHDが向いている仕事
それぞれの興味やスキルに大きく依存しますが、一般的には変化と創造性が求められ、短期間で結果が出る仕事が向いているとされています。
- 変化がある
- 自分の興味や創造性を追求できる
- やった施策の効果が短期間で実感できる
例えば、以下のような仕事です。
- 営業職/コンサルティング
単一商品の販売ではなく、クライアントの課題をヒアリングして柔軟に提案するコンサルティング色の強い営業職のほうが強みを発揮できます。R&D等の研究職に従事する方も多いですね。
ただ、資料作成・期限管理・調整が多いと不注意面が負担になるケースもあります。 - WEB系全般(企画、広告マーケ、クリエイティブ、デザイン等)
施策効果がすぐに確認できないSEOよりは、短期間でPDCAを回すことができるWEB広告やSNS、Youtubeなどの方が工程分割や中間指標を設定すると続けやすいですね。
また、一定のスキルがあれば、なにかしらの事業主(経営者やブロガー等)として活躍することも期待できます(実際、多いですよね)。
ADHDが就職活動を行うときのポイント
就職活動を行う場合は、下記のポイントを押さえて進めることをおすすめします。それぞれ順番に解説していきます。
就職活動を行うときのポイント①
ADHDの障害特性と必要な配慮を理解する
まずは、自身のADHD特性と、職場環境に必要な配慮を理解して整理しておきましょう。
ADHDと一口にいっても「不注意型」「多動-衝動型」「混合型」など、特性のあり方は人それぞれなので「自分が何を苦手としているのか」は前もって整理しておく必要があります。
それこそ、手帳を取得必要がないくらい軽度であれば「民間企業の一般枠」で就労することもできます。
反対に、困難が大きく配慮が必要なら「障害者雇用枠」を狙うなり、就労移行支援や就労継続支援といった「福祉的就労」から段階的に慣れるなり、といった選択肢があります。
就職活動を行うときのポイント②
とにかく向いていない仕事を避ける
自身のADHD特性と必要な配慮を理解したならば、向いていないであろう仕事は避けて、できるだけストレスがかからない仕事を探しましょう。
もちろん、興味がある“やりたい仕事”を選ぶのも悪いことではありませんが、ADHDを持っている方は「苦手なこと、ストレスを回避すること」のほうが遥かに重要です。
仮に憧れの職業だとしても苦手な仕事をしてしまうと、最初は楽しく感じるかもしれませんが、3ヶ月もすれば高揚感は薄れ、できないことばかりの現実に苦痛を感じるようになります。
就職活動を行うときのポイント③
無理はせずに段階的に慣らしていく
仕事を探すときは、無理のない就労形態からはじめるようにしてください。他の精神疾患と併発している場合や、長期間のブランクがある場合は「週あたりの勤務時間をどれくらいにするか」から医師と相談しましょう。
もし、民間企業への就職が不安な場合は、福祉的就労(就労継続支援B型A型や就労移行支援)で、障害や体調にあわせて自分のペースで、必要なスキルを習得することが可能です。

民間企業での就職に少しでも不安がある場合は、無理をせず、段階を踏んで慣れていくことをおすすめします。(例えばSTEP3.就労移行支援の利用から始める、など)
どれにすべきか悩んだら、就労移行支援の大手であるウェルビーやココルポートに相談してみてください。資料請求すると翌日には電話が来るので、気軽に話を聞けます。
就職活動を行うときのポイント④
就職活動は一人でせず、支援機関を活用する
ADHD(特に多動-衝動型)の方は、ついその場の感情で思い切った行動をしてしまうこともあるので、客観的な立場からアドバイスをくれて、障害者雇用全般に詳しい「支援機関」の力を借りることをおすすめします。
例えば、下記のような機関です。
どうしようか悩んだら発達障害者支援センターに相談してみてください。地域ごとのセンターの電話番号が記載しているので、すぐにつながります。
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