「ASDは就職できない?」「向いている仕事がわからない…」と悩みますよね。ASDの方は曖昧なコミュニケーションが不得意なことから、面接でも不利になりがちです。
この記事では、ASDの特性やデータから「本当に就職できないのか。どれくらい就職が難しいのか」や「向いている仕事、就職活動のポイント」について網羅的に解説していきます。
本記事は、有料職業紹介事業許可(13-ユ-317587)を取得しているセオリーズ株式会社の編集部が、各社の公式情報・求人情報・公的資料等を確認したうえで作成しています。
ASDがある方の就職は難しい
2018年の障害者雇用促進法の改正を機に、長期的には改善する見通しではあるものの、目に見えない障害である“ASD”の就職は依然、難しさを抱えています。
ASDをはじめとした発達障害がある方の就職難易度を取り巻くテーマとして順番に解説していきますね。ぜひ参考にしてください。
ASDがある方の就職実情①
症状の目に見えないASDは採用しづらい
障害者雇用促進法の改正(2018年)で、障害者雇用義務の対象に「精神障害者保険福祉手帳」の所有者も含まれるようになったので就職しやすくなりましたが、まだまだ難しいというのが現状です。
なぜならASDを含む発達障害は、身体障害と違って症状が目に見えないので、配慮がしにくく、企業側も慎重になるからです。
理由1.管理職がノウハウを持っていない
実際、現場管理職のほとんどが、ASD向けの「配慮ノウハウや管理経験」を持っていないので、人気企業ほど、身体障害者が採用されやすい傾向にあります。
理由2.コミュニケーションがうまく取れない
特に、アスペルガー症候群の傾向が強いと、採用面接の場で、うまくコミュニケーションが取れずに見送られてしまうケースが多いです。
一人でうまくいかない場合は、就労支援センターのスタッフに同行してもらい、フォローしてもらうようにした良いが良いかもしれません。
ASDがある方の就職実情②
精神障害者(ASD含む)の雇用が増加傾向
2018年に障害者雇用促進法が改正されて以降、民間企業が「精神障害者保健福祉手帳」の所有者の雇用を進めているので、民間企業で働く精神障害者(ASD含む)の人数は伸び続けています。
<雇用される精神障害者(ASD含む)の推移>

※厚生労働省 令和4年障害者雇用状況の集計結果より編集部作成
※雇用義務のある民間企業(43.5人以上規模)における雇用人数
上記グラフのように、厚生労働省が公開している最新情報(2022年時点)を見ると、2018年の障害者雇用法改正以降、急激に増加していることがわかります。
補足|障害者雇用促進法の改正に伴う変更点
①精神障害者が「障害者雇用義務」の対象に加わる
②精神障害者の短時間勤務(週20~30時間)の雇用率算定方法が「0.5→1.0」に変更
③民間企業の法定雇用率が「2.0%→2.2%」に変更
※なお上記の「精神障害者」とは、精神障害者保健福祉手帳を所有する方を指すので、発達障害の方も含まれます。
上記の変更(特に①②)に伴い、民間企業が精神障害者(ADHD含む)を雇用するメリットが増えたので、2018年を基点として障害者雇用がグッと加速する結果となりました。
実際にグラフを見ても、2017年前後までは年間+8,000人程度の増加だったのが、2018年以降は年間+1万人ペースで増えています。
(ちなみに、2017年から2018年で+1.7万人と爆増していますが、これは「②短時間勤務の精神障害者の雇用率算定倍率が0.5→1.0に増えた」ことで見せかけの数字が大きくなっているだけです。)
ASDがある方の就職実情③
法定雇用率は段階的に引き上げられる
法定雇用率とは、企業の従業員数に応じて、一定割合以上の障害者雇用を義務付けた制度のことです。基準を満たさない場合、納付金(罰則)が発生します。(厚生労働省)
2026年4月現在、法定雇用率は2.5%なので、従業員40人に対して1人以上の障害者雇用が必要です。今後も段階的に引き上げが予定されています。
- 1988年4月:1.6%
- 1998年7月:1.8%
- 2013年4月:2.0%
- 2018年4月:2.2%
- 2021年3月:2.3%
- 2024年4月:2.5%
- 2026年7月:2.7%(予定)
ASDがある方の就職実情④
ASDは特性上、長期定着しやすい(その分有利)
発達障害者は、他の障害者(身体や精神、知的などの障害)と比べて、長期定着しやすい傾向にあります。実際に、1年後定着率“71.5%”と一番高いデータが発表されています。

同じ「精神障害者保険福祉手帳」を所有する精神障害者が“49.3%”であることを踏まえると大きく開いており、長期定着しやすい分、就職活動では有利になります。
精神障害(特に気分障害)よりは有利になりやすい
企業側は「長期就業してくれる方を採用したい」と考えているので、就労が安定しない精神障害者(特に、うつ病等の気分障害)よりは、発達障害者のほうが採用で有利になりやすいです。
実際、ASDの方はテキスト上の論理的な会話を得意としており、ルールやルーティーンを守れる方が多いので、職場に馴染めさえすれば長続きしやすいとされています。
実際、ASDの方は、配慮や管理が行き届いた環境で適材適所な仕事にさえ出会えれば、十分活躍の見込みがありますね。
ASDがある方の就職実情:
ここまでのまとめ
障害者雇用促進法の改正以降、障害者雇用は促進されつつありますが、それでもまだ「ASDの方の就職は難しい」という状況であることには変わりません。
なによりASDの場合は、目に見えない症状であることから職場の配慮も十分ではないことが多く、就職できても短期離職につながるケースが珍しくないのです。経歴次第では転職活動が難航しやすいので、複数の転職エージェントに登録して求人紹介を受けることをおすすめします。
就職活動は一人で進めず、専門家と相談しながら進めてください。理由は、障害と仕事(環境や業務内容)の“相性”を慎重に見極める必要があるからです。客観的な立場で意見をくれるパートナーの存在は、心強い味方になります。
ここからはASDの特徴から業務上の困難、仕事の向き不向きまでを、網羅的に解説していきます。
ASDの就職準備|配慮と仕事の向き不向き
ここでは、ASDの障害特性を踏まえて、職場に求める配慮や適職を検討するにあたって、一般的な傾向をお伝えしていきます。
本記事で解説するのはあくまで“傾向”です。ASDを含む発達障害では、ADHDや精神疾患の傾向を併せ持っているなど、人によって異なる部分が多いので、大枠だけ参考にしてください。
①ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴
ASDとは、コミュニケーション面で難を持つ障害です。一般の方からは「空気を読むことができない」「常識が通じない」と言われることが多いのではないでしょうか。
その病像は『スペクトラム(一定の幅)』と名称に付く通り、種類や重症度の点で非常に多彩です。
もともとは「自閉症」「アスペルガー症候群」と呼ばれていた2つの障害でしたが、2013年に名称が統合されました。これまで何度も名前が変わるほど、正確な判断が難しいとされている障害です。
人によりますが、下記で紹介する特徴のいずれか(あるいは複数)を持つ場合が多いです。
- コミュニケーションが苦手
例:曖昧な表現を理解できない、相手の意図の推測が苦手
例:空気が読めない、意図を察することができない - 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
例:何かを決めたら切り替えに時間がかかることがある
例:予定変更や例外対応が負担になりやすく、手順やルールのズレが気になりやすい - 一部の感覚が過敏または鈍麻
例:光(視覚)を強く感じやすい
例:温度(触覚)を強く感じやすい
このように、ASDの方は、曖昧さを汲んで理解することができなかったり(空気が読めない)、さらに“何か”に強いこだわりを持っていたりすることが特徴です。
そのため、職務においても数々の課題に直面することでしょう。いくつかその例をあげていきます。
②ASDが仕事で直面する困難の例
- コミュニケーションが苦手
→上司の曖昧な指示を理解できない
→白黒はっきりしないとストレスになる - 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
→予定にまったく融通がきかない
→ふと気になったことが頭から離れず、注意の切り替えが難しい - 一部の感覚が過敏
→部屋の明るさやブラインドにストレス(視覚)
→冷暖房の温度管理に強いストレス(触覚)
このように、業務指示の理解を難しく感じる方や、曖昧なコミュニケーションや予定変更に強いストレスを感じる方が多いです。
そのため、必要な配慮として「①明瞭なコミュニケーション」であったり「②当人が持つこだわりに合わせること」が職場に求められます。(人によって異なるので個別相談は必須です。)
③ASDが職場に求めたい合理的配慮
基本的にASDの方の多くは、上司や同僚の曖昧なコミュニケーションにストレスを感じることが多いので、明瞭に言語化してもらう配慮が必要です。
- コミュニケーションが苦手
→明瞭なコミュニケーション
・指示は明瞭に言語化(文章で伝える)
・曖昧な表現はせずに、はっきりと伝える
例1. あれ、これ、といった指示代名詞は使わない
例2. 納期は1分1秒単位で伝え、幅を持たせない - 特定の事柄や行動に強いこだわりを持つ
→当人が持つこだわりに合わせること
・一度決めたことを変えず、計画通りに進行させる
・複数のことを同時に頼まない(シングルタスク中心) - 一部の感覚が過敏
→当人の過敏な感覚に配慮する
・席配置の調整(窓際を避ける)/ブラインド角度の調整(視覚)
・耳栓やイヤホンの使用(聴覚)
・冷暖房の温度を一定値に変更(触覚)
上記はあくまで一例ですが、ASDとして自覚している特性を認識した上で、ストレスなく働くために必要な“合理的配慮”の内容を整理することが重要です。
④ASDが向いていない仕事
ASDの方は、下記の特徴を持つ仕事は向いていません。障害特性との相性が悪いので、強いストレスを感じることになります。
- マルチタスクな仕事
- 顧客コミュニケーションがある仕事
- 変化が激しく柔軟な対応が必要な仕事
- ルールやノウハウが体系化されていない仕事
そのため、以下の仕事は避けてください。
- 営業職、コンサルタント
対人折衝・提案・変更対応が多く、負担になりやすい傾向 - コールセンター・オペレーター
臨機応変な対応やクレーム対応などマルチタスクになりやすい - 採用人事、秘書
社内外の調整・例外対応など、優先順位の頻繁な入れ替えが起こりやすい - 管理職、マネージャー
対人調整や臨機応変な対応が増え、切替負荷が上がりやすい
上記の仕事を避ければ、興味を持ったものに対して異常なほどの集中力を発揮する(過集中)場合があるので、求人を見ながら合う合わないを模索してみてください。
⑤ASDが向いている仕事
おおむね以下の特徴のある仕事が向いている傾向にあります。
- 一人でコツコツとできる仕事
- ルールやマニュアルが明瞭な職種
- デスクワーク(視覚情報が重要なので)
そのため、以下の仕事が向いている傾向にあります。
- ライター
とくに手順が明確な編集・校正・構成作成・マニュアル/技術文書など - エンジニア、プログラマー
とくに要件が明確なテスト(QA)/静的解析/保守運用の定型作業/データ処理/社内ツールなど - 経理、財務、法務、労務
とくにルールや期限が決まっておりチェックリスト運用・データ入力が多い業務 - デザイナー、設計
とくに設計やCAD、UIのルールベース設計など
ただ、得意不得意は人それぞれなので、全員に該当するわけではありません。自分ができること、興味があることに向き合うのが重要なので、あくまで参考程度にしてください。
ASDが就職活動を行うときのポイント
就職活動を行う場合は、下記のポイントを押さえて進めることをおすすめします。それぞれ順番に解説していきます。
就職活動を行うときのポイント①
ASDの障害特性と必要な配慮を理解する
まずは、自身のASD特性と、職場環境に必要な配慮を理解して整理しておきましょう。
ASDと一口にいっても、特性のあり方は人それぞれなので「自分が何を苦手としているのか」は前もって整理しておく必要があります。
それこそ、手帳を取得必要がないくらい軽度であれば「民間企業の一般枠」で就労することもできます。
反対に、困難が大きく配慮が必要なら「障害者雇用枠」を狙うなり、就労移行支援や就労継続支援といった「福祉的就労」から段階的に慣れるなり、といった選択肢があります。
就職活動を行うときのポイント②
とにかく向いていない仕事を避ける
自身のASD特性と必要な配慮を理解したならば、向いていないであろう仕事は避けて、できるだけストレスがかからない仕事を探しましょう。
もちろん、興味がある“やりたい仕事”を選ぶのも悪いことではありませんが、ASDを持っている方は「苦手なこと、ストレスを回避すること」のほうが遥かに重要です。
仮に憧れの職業だとしても苦手な仕事をしてしまうと、最初は楽しく感じるかもしれませんが、3ヶ月もすれば高揚感は薄れ、できないことばかりの現実に苦痛を感じるようになります。
就職活動を行うときのポイント③
無理はせずに段階的に慣らしていく
仕事を探すときは、無理のない就労形態からはじめるようにしてください。他の精神疾患と併発している場合や、長期間のブランクがある場合は「週あたりの勤務時間をどれくらいにするか」から医師と相談しましょう。
もし、民間企業への就職が不安な場合は、福祉的就労(就労継続支援B型A型や就労移行支援)で、障害や体調にあわせて自分のペースで、必要なスキルを習得することが可能です。

民間企業での就職に少しでも不安がある場合は、無理をせず、段階を踏んで慣れていくことをおすすめします。(例えばSTEP3.就労移行支援の利用から始める、など)
どれにすべきか悩んだら、就労移行支援の大手であるウェルビーやココルポートに相談してみてください。資料請求すると翌日には電話が来るので、気軽に話を聞けます。
就職活動を行うときのポイント④
就職活動は一人でせず、支援機関を活用する
障害のある方の就職活動は一般的に難航しやすいので、客観的な立場からアドバイスをくれて、障害者雇用全般に詳しい「支援機関」の力を借りることをおすすめします。
例えば、下記のような機関です。
どうしようか悩んだら発達障害者支援センターに相談してみてください。地域ごとのセンターの電話番号が記載しているので、すぐにつながります。
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まずは大手3社に登録し、比較しながら進めるのが基本です。
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