特例子会社は、配慮が行き届いた環境で働ける一方で「給料がとにかく低いので生活できないかも?」と不安になるのも自然です。
結論として、最低賃金は超えるので生活ができないことはありませんが、障害年金なしの一人暮らしで、さらに時短勤務まですると相当厳しくなります。
本記事では「特例子会社の収入実態」から「給料が低い理由」そして「解決策」までを網羅的にご紹介していきます。
生活できないことはないが…
特例子会社は給料がとにかく低いですが、生活できないことはありません。なぜなら、厚生労働省が定めている最低賃金は超える給料がもらえるからです。
いくつか口コミをみてみましょう。
生活はできます。ただ、“生活ができるか否か”に焦点が当てられてしまうくらいには、ギリギリ(少なくとも余裕はない)ことがわかります。
特例子会社の給料は“最低賃金”クラス
特例子会社はとにかく給料が低い、と言われる実情を“数字”で見てみましょう。
- 約8割が年収250万円に届かない
- 平均年収は150~200万円ほど
ほとんどの企業では、時給換算すると最低賃金クラス(時給1,000円前後)に設定されており、最低限の給料しかもらえません。
特例子会社の給与実情①
約8割が年収250万円に届かない
実際に年収分布を見てみても、特例子会社で働く約8割の方が年収250万円以下。これは月給換算すると月給20万円(手取り16万円)ほどになります。

出典:野村総合研究所(2018年12月)より作成
さらに、上記グラフから「年収200万円あれば上位50%に入る」ということもわかります。平均年収のデータは公開されていませんが、おそらく150~200万円ほどとなるでしょう。
特例子会社の給与実情②
平均年収は150~200万円ほど
特例子会社の平均年収は150~200万円程度になるので、日本の平均年収が443万円(国税庁令和3年)であることを踏まえると、半分以下。厳しい現状です。

特に、精神障害がある方の多くは時短勤務をしているので、さらに低くなってしまいます。障害年金なしでは余裕ある暮らしはできません。
特例子会社の給料が低い理由
特例子会社の給料が低い理由は、下記の通りです。
それぞれ順番に説明していきます。
特例子会社の給料が低い理由①
市場価値の低い仕事が多いため
特例子会社の給料が低い理由は、単純に市場価値が低い職種での募集が多いからです。
実際、特例子会社で募集している職種の集計データをみたところ、多い順で「事務補助(79.1%)」「清掃管理(50%)」「製造作業(23.5%)」と単純作業系が上位を占めています。

出典:野村総合研究所(2018年12月)
※複数回答を認めているので合計が100%を超える
このように、仕事そのものに求められる専門性が高くなく、多くの方が苦労せずにできてしまうので、高い給料を出す理由がないのです。
特例子会社の給料が低い理由②
事業として利益が出ていないため
給料が低い理由2つ目は、利益が出ていないためです。従業員の給料は、企業の営業行為から出た利益から分配されるので、利益が低いなら給料も低いのが当然です。

そして、特例子会社が運営している事業は、基本的に「事務補助」「清掃」「ライン作業」といった“単純作業”の受託業務なので、どうしても売上は低くなります。
利益の高いビジネスをしない理由
特例子会社は下記の理由から、利益が出やすいビジネスに挑戦しにくい背景があります。
- そもそも利益を主目的としていない
特例子会社は法定雇用率を満たさないことによる“罰金を防ぐこと”を目的として設立されている - 利益を出すには相応のハードルが必要
日本経済は発展、成熟しているので、単純作業で儲かる仕事はありません - 障害者に難しい仕事を任せるのは難しい
障害者はできないことが多いので、育成コストが高くなりやすい傾向にある
残念ながら、利益を目的とするなら、マジョリティの健常者を雇用してビジネスを始めた方が効率がずっと良い、というのが一般的な考えなのです。
特例子会社の給料が低い理由③
低い給料でも障害者が応募するため
特例子会社の給料が低い理由3つ目は、低い給料でもたくさん応募があるためです。他の特例子会社との競争が少ないので、給料を上げる理由がありません。
実際、民間企業の障害者雇用枠と比べて、特例子会社はそもそもの数が少なく(全国562社で、求人は50件程度)、人気なので求人倍率が高い傾向にあります。
雇用促進法の改正に伴って、ここ10年ほどで障害者雇用が大きく進みつつあるものの、まだまだ障害者の人数に対して、障害者の雇用枠は少ないのです。
補足|給料が高い仕事の特徴
反対に給料が高い会社や仕事は、下記のどれかの特徴を持っています。
- 利益が出ている
→給料として社員に還元できる - 市場価値が高い仕事
→給料を上げないと採用できない、転職される - 応募が足りていない
→給料を上げないと採用できない、転職される
どれも特例子会社の逆ですね。給料を上げるための方法は後述しますが、上記いずれかの要素を満たす“環境”を目指す以外にありません。
それでも特例子会社が人気な理由
生活が苦しいくらい給料が低い特例子会社ですが、それでも人気がある理由を解説していきます。企業で差はありますが概ね以下の通りです。順に見ていきましょう。
特例子会社が人気な理由①
障害への配慮や環境が整っていて安定して働ける
特例子会社で働く一番のメリットは、さまざまな障害に合わせた配慮や仕事内容の調整をしてもらえるので、安定して働きやすいことです。
- 勤務時間(時短やフレックス制)
- 仕事内容(難易度や業務量は各人ごとに調整)
- 相談体制(精神保健福祉士や支援スタッフ配置)
- バリアフリー対応(トイレ等)
- 外部支援機関との連携 等
また、個別に配慮内容を相談して無理なく業務を進められるようにしてもらえるので、精神や発達障害といった障害でも安心して就業できます。
いくつか口コミを見てみましょう。
今回私が勤務しているのは障害者雇用に特化した特例子会社なのですが、かなりゆっくり進めていただいているので、本当に助かっています。配慮やサポート体制も一般就労より理解がありそうです。
引用元:X(旧Twitter)
給与面で折り合いがつくなら、障害者雇用は強くお勧めします。業務量、相談体制の配慮が十分に行き届いてます。心の穏やかに働ける可能性が高いと思います。ただ、給与面ではいろいろ考えないといけないかもしれません。
出典:アンケート調査(集計期間:2024年7月~2026年4月)
このように、業務や配慮、サポート面に関するポジティブな口コミは多く見られました。特に、民間企業とは違い、特例子会社では従業員に合わせて仕事内容が決められるのがポイントです。
特例子会社が人気な理由②
周囲に障害者しかいないので居心地が良い
特例子会社は、周りにいるほとんどの従業員が障害者なので、多くの方にとって居心地が良いことがメリットです。
反対に、民間企業だと、周りには健常の社員がたくさんいるので、一人だけ残業せず帰ったり、特別扱いをしてもらったりすることに引け目を感じてしまうものです。
実際、人間は、自身と共通点のある相手に親近感を抱くので(心理学では「類似性の法則」と言います)、同じ境遇の障害者が集まっている職場の方が、良好な人間関係を作りやすいかもしれません。
特例子会社が人気な理由③
大企業傘下だと福利厚生が充実している
また、特例子会社の多くは、大企業傘下のグループ企業なので、福利厚生が充実していることもメリットです。(会社によりますが)
口コミ|福利厚生が充実している
特例子会社に正社員として転職しました。
土日休みで残業もなく、研修中ですが理不尽な指示やハラスメントもありません。有給もすでに使えており、働きやすい環境だと感じます。
本来は、こうした環境が一般企業でも当たり前になってほしいですね。
引用元:サイト内アンケート
障害者雇用枠での就職だと、その企業はあくまで健常の労働者がメインなので、企業や上司によって当たり外れがあります。
特例子会社と民間企業はどちらが良い?
結論として、居心地の良い環境で安定して働きたいなら特例子会社、障害が軽度で年収やスキルアップを諦めたくないなら民間企業がおすすめです。
- 特例子会社がおすすめな人
①体調や働きやすさを重視したい
②給料を上げるよりも長期就業したい
③他の障害者と助け合って働きたい - 民間企業がおすすめな人
①専門分野でスキルアップしたい
②たくさん働いて年収を上げていきたい
③より仕事熱心な人と働いて刺激を得たい
特例子会社と民間企業のどちらで働くかによって「職場の居心地や働きやすさ」「年収やスキルアップのしやすさ」が変わるので注意しましょう。
特に、3級だと障害年金をもらえないので、特例子会社だと給料が低くて生活が厳しくなるかもしれません。現在、一人暮らししている(できるくらいに軽い)なら特例子会社はおすすめしません。
障害者が給料・収入を増やす方法
もし、障害年金がもらえないくらいに障害が軽度なのであれば、より条件の良い企業への転職活動を進めたり、副業を始めたりするのも一つの手段です。
- 今の職場で昇給を狙う
- 転職する
- 副業する
- 起業する
期待値含めて整理すると、下記の通り。
| 方法一覧 | UP額 | 労力 | 即効性 | 確実性 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ①今の職場で昇給を狙う | ×ほぼ無理 | ◎現状維持 | ×数年 | △期待NG | |
| ②転職する | 特例子会社 | △期待薄い | △倍率高い | ◯数ヶ月 | ◎年収が上がる場合のみ転職すれば100% |
| 民間企業オープン就労 | ◯上がる | ◯職歴次第 | ◎数ヶ月 | ◎年収が上がる場合のみ転職すれば100% | |
| 民間企業クローズ就労 | ◎期待大 | ◯職歴次第 | ◎~3ヶ月 | ◎年収が上がる場合のみ転職すれば100% | |
| ③副業する | △内容次第 | △難しい | △難しい | △難しい | |
| ④起業する | ◎夢はある | ×大変 | ×数年 | ×ほぼ失敗 | |
上記のように、年収をあげるために一番手っ取り早いのは、民間企業に転職してしまうことです。大手企業なら年収400万円を狙えるケースもありますね。
ただ、配慮が得られず継続率は低い傾向にあるので、慎重に検討する必要があります。そもそも、新しい環境に行くことはリスクであることを忘れてはなりません。
今の環境で大きな不満がないなら、居続けるのもありだと思います。最低限のお金があれば、十分幸せにはなれるので。
障害者雇用におすすめの転職サイト
まずは大手3社に登録し、比較しながら進めるのが基本です。
障害のある方向け
おすすめの転職エージェント
LITALICO仕事ナビ 4.6 | 業界最大級の求人数・実績 全国の求人件数4,000件以上 首都圏なら個別転職サポート 無料登録して求人を見る |
かべなし求人ナビ 4.3 | 丁寧にサポートしてもらうなら 人材大手のSMS社が運営 就労移行支援をまとめて探せる 無料登録して求人を見る |
dodaチャレンジ 4.5 | より年収の高い職場を探すなら 障害者転職の支援実績No.1 大手が多く年収を上げやすい 無料登録して求人を見る |
注意!未経験からの副業はおすすめしない
特例子会社で働く方には副業をおすすめしません。理由は下記の通りです。
- ほぼ稼げないため
完全未経験から個人で収益を上げるのは本当に難しいです。現職で培った高いスキル(エンジニアやデザインなど)を活かせるならまだしも、それ以外はおすすめしません。 - 副業する余裕があるなら転職した方が良い
副業の余裕があるなら、本業の収益を上げた方が効率的です。副業で月5万円稼ぐより、年収で60万円上げる方がずっと簡単なので。
やるなら、宝くじと同じように夢を買う感覚で、趣味と割り切ってやってください。
「副業で○○円稼げた」系の情報商材に要注意
近年、SNSで見かける「副業で○○円稼げた」系のアカウントは、7割が詐欺で、3割が「過去の栄光」なので、間に受けないようにしてください。
当時、ライバルが少なくて運良く稼げた人が、稼げなくなったあとに「稼いだ方法を紹介します!」と、時代遅れのノウハウを情報商材として売りつけるケースはよくあります。騙されないようにしてください。
よくある質問と回答
Q. 特例子会社とは?
特例子会社とは「その子会社に雇用されている障害者を、親会社を含むグループ全体の実雇用率に算定できる子会社」のことです。以下の要件を満たす必要があります。
▼特例子会社の認定要件(一部抜粋)
①雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。
②雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること。
③障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること。(具体的には、障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置等)
そのため、特例子会社では、障害を持った方がたくさん集まり、配慮の行き届いた施設環境が用意されているので、障害を抱えながらも働きやすいことが特徴です。
- ほとんどの従業員が障害者
- 重度身体障害、知的及び精神障害者が30%以上
- 障害に配慮した設備や制度、指導員がいる
- 大都市に多く、地方には少ない傾向がある
- 大企業傘下なので、ハズレな職場が少ない
- 良い会社ほど空き枠がなく、募集が出ない
特例子会社はそもそも400社ほどしかないうえに、増員されることもないのでほとんど募集は出ません。倍率が高いので、狙うなら法定雇用率が引き上がったタイミングがおすすめです。
補足|法定雇用率とは
法定雇用率とは、企業の従業員数に応じて、一定割合以上の障害者雇用を義務付けた制度のことです。基準を満たさない場合、納付金(罰則)が発生します。(厚生労働省)
2026年4月現在、法定雇用率は2.5%なので、従業員40人に対して1人以上の障害者雇用が必要です。今後も段階的に引き上げが予定されています。
- 1988年4月:1.6%
- 1998年7月:1.8%
- 2013年4月:2.0%
- 2018年4月:2.2%
- 2021年3月:2.3%
- 2024年4月:2.5%
- 2026年7月:2.7%(予定)
Q. 特例子会社ってどれくらいあるの?
2023年末時点で598社あります。

Q. 特例子会社にはどのような障害者が多い?
2023年末時点で多い順に、知的障害(52%)、身体障害(29%)、精神障害(19%)となります。
合計46,848人で内訳は下記の通りです。
- 知的障害者:24,062人(51.4%)
- 身体障害者:12,134人(25.9%)
- 精神障害者:10,652人(22.7%)
Q. 特例子会社のメリットとデメリットは?
特例子会社は、配慮が行き届いた環境で安定して働きやすい“メリット”がある反面、給料が低くスキルが身につかないという“デメリット”があります。
- 配慮した環境が整っていて安定して働ける
- 周囲に障害者しかいないので居心地が良い
- 大企業傘下だと福利厚生が充実している
- とにかく給料が低い
- 単純作業が多く、専門スキルが身につかない
- 他の様々な障がい者に配慮をする必要がある
Q. 特例子会社と一般の障害者枠どっちがいい?
結論として「居心地の良い環境で安定して働きたい」なら“特例子会社”、「障害が軽度で年収やスキルアップを諦めたくない」なら“障害者雇用枠”がおすすめです。
- 特例子会社がおすすめな人
①体調や働きやすさを重視したい
②給料を上げるよりも長期就業したい
③他の障害者と助け合って働きたい - 一般の障害者枠がおすすめな人
①専門分野でスキルアップしたい
②たくさん働いて年収を上げていきたい
③より仕事熱心な人と働いて刺激を得たい
特例子会社と障害者雇用枠のどちらで働くかによって「職場の居心地や働きやすさ」「年収やスキルアップのしやすさ」が変わるので注意しましょう。
特に、3級だと障害年金をもらえないので、特例子会社だと給料が低くて生活が厳しくなるかもしれません。現在、一人暮らししている(できるくらいに軽い)なら特例子会社はおすすめしません。
Q. 特例子会社はなぜ給料が低いの?
特例子会社の給料が低い理由は、下記の通りです。
- 市場価値の低い仕事が多いため
誰でもできる単純作業ばかりなので給料はでません - 事業として利益が出ていないため
給料は利益から決まるので、利益が少ないと給料が出ません - 低い給料でも障害者が応募するため
特例子会社は人気なので給料を上げる理由がありません

